おっきりこみ

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上州郷土料理店のおっきりこみ

おっきりこみ(おっ切り込み)は、煮込み麺料理の一種で、群馬県埼玉県北部・秩父地方の郷土料理。お切り込み、煮ぼうとうとも表記される。農山漁村の郷土料理百選に選出されている[1]

概要

地域によって多少の差はあるが、麺は小麦粉で作った幅広のものを用い、生麺のまま野菜を中心とした具とともに煮込んだものである。つゆは味噌ベースのものと醤油ベースのものがあり、具には根菜類がよく使われる[2]

二毛作での小麦生産が盛んな地域では、うどんなどの粉食料理を常食する文化が根付いており、おっきりこみもそのひとつである。類似するものとしては、山梨県ほうとうなどが挙げられる[2]

山梨のほうとうとの違いは以下の3点が挙げられる[3]

生地に加える水が少ない
山梨のほうとうや普通のうどんに比べると、おっきりこみを打つときに加える水の量は2/3以下である。少ない水で練ることが良い味を生むコツとされるが、生地が堅くなるので強い力でゆっくりとこねる必要がある。
醤油味が普及している
味と材料の節を参照。醤油が発達する以前は味付けに(ひしお)の上澄みを用いていた。
麺の下ゆではしない
おっきりこみは粉の旨味を際立たせるため、ゆでずに直接煮込む。麺の形状が薄いのは火が通りやすくするため、幅が広いのはだしの旨味を吸いやすくするためである。
ただし、ほうとうにも下ゆでするという記述はない。

起源

手打ちの太麺と季節の野菜や里芋、大根などをたっぷりの汁で煮込んだ料理であるおっきりこみ(上州ほうとう)。うどんを「切っては入れ、切っては入れ」食す様子から、自然とこの呼び名がついたとされる。地域によっては、「煮ぼうと」や「煮ぼうとう」、「おきりこみ」とも呼ばれる。その由来には諸説あるが、中国から伝来し京都の宮中で食べられていた料理で、12世紀上野国新田荘を開発した新田義重が、宮中の食材を管理する大炊助として務めていた際に習い覚えて、本拠地の上州に戻ってからも好んで食べ、一族に伝えたともいわれ、また、昔、農家の主婦達が農作業で忙しい中、栄養バランスに優れ手早く大量に作れる料理として作り始めたのが発祥とも伝わる。今では一般家庭でも多く作られており、おふくろの味として愛されている。[3]

地域による違い

味と材料

北毛西毛では味噌を使ったつゆが多いが、東毛では醤油が多く、中毛ではどちらも用いられる。東毛は醤油生産が盛んで、おっきりこみを食べる機会が少なかったため、醤油が高価だった時代にも用いることができたという背景がある。古くは味噌が主流だったが、醤油が一般家庭に普及すると、次第に東毛から醤油ベースのものが伝播していった[2]

具に類を加えることがあるが、赤城山榛名山の山麓部ではサトイモが使われ、吾妻郡多野郡の山間部ではジャガイモがよく用いられる。しかし、サツマイモカボチャといった甘いものは一般的ではない[2]

中里村嬬恋村では、蕎麦粉で作った麺を使うこともあった。しかし、それ以外の点は小麦粉を用いたものと変わりはない[2]

呼び方

「おっきりこみ」、「おきりこみ」という呼び方は群馬県内で広く見られる。この名前は、こねた生地をへらの上から直接鍋の中へと「切り込む」調理法に由来する[3]。北毛では「ほうとう」、東毛では「にぼうと」とも呼ばれる。また、夕食用に作ったものの残りを翌朝に食べる場合、「おっきりこみの立てっ返し」という。立てっ返しとは風呂を沸かしなおすことを指し、再び温めることから付いた呼び名である[2]

うどんとの違い

うどんとの違いは、麺に塩を加えないこと、麺をつゆに入れる前にゆでないことが挙げられる。また、生麺のままゆでるため、打ち粉が溶け出してつゆにとろみが出る。かつては小麦粉の質にも差があり、おっきりこみにはふすまが含まれるものも使われていた。おっきりこみは日常的に食べられる家庭料理であり、一方のうどんは「ハレ」の食事だという区別があったためである[2]

脚注

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関連項目

外部リンク

  • 郷土料理百選 選定料理一覧、農村開発企画委員会。
  • 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 上州の食文化 おっきりこみと焼きまんじゅう、上州ふるさとの味おいしいレシピ 上州食文化アカデミー、群馬県。
  • 3.0 3.1 3.2 『男の食彩』(日本放送出版協会)1994年12月号 pp.70 - 73「うどんの歴史が見える 群馬のお切り込み」 テレビ放映は1995年1月21日
    下ゆでについては、「ほうとう」と明記はしていない