おこし

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おこし(粔籹)は、穀物を加工した、で固めた和菓子の一種である。干菓子の一種で、おこし米などともいう。

歴史

唐菓子の一種として平安時代に日本に伝わり、当時は貴族に愛好されていた。江戸時代初期の料理書『料理物語』には菓子の項に「おこし米」の名で製法が記されており、ここでは薏苡仁(よくいにん。ハトムギの胚乳。漢方薬の原料として用いられ、イボなどの皮膚病に効果があるとされる)とを用いたおこしが記されている。穀物と水飴などが調達できれば庶民でも製造できたため、江戸時代には駄菓子や間食として全国に広まった。

中国にも類似の菓子は現在の華南にも伝わっており、主に米で作ることから米通(ミートン、mǐtōng)と呼ばれるが、いったん餅にはせず、を用いることや、水飴の配合などに違いがある。また、杏仁糖(スライスしたアーモンドを糖蜜で固めた物)や南瓜子酥かぼちゃの種を糖蜜で固めた物)の様におこしに類似した製法の菓子も存在する。

コメ以外にも落花生胡麻大豆等の豆類、ハトムギ、ポン菓子、ポップコーン、各種ナッツ類を使う事もある。また、かりんとう生地やあられ生地を粒状に作り、おこし同様に水飴や糖蜜で固めた菓子も存在する(関連項目を参照)。

製法

粟おこしの場合

  1. など、主要原料とする穀物に水分を与えて蒸し、まずを作る。
  2. 薄くのばして、乾燥させ、状に粉砕する。
  3. この粒をと共に釜で炒って、中の水分の力で膨脹させる。
  4. 塩をもしくは重力法によって分離、回収する。
  5. あらかじめ加熱加工した落花生ゴマなどの副原料を加え、やはり熱した砂糖蜜や水飴と混ぜて絡める。
  6. 板状に伸ばして、少し冷えたところで切るか、型に入れて冷やし製品とする。
  7. まわりに、青海苔など他の副原料をまぶす場合もある。

種類

ファイル:三角おこし.jpg
「お火焚き饅頭」と「三角おこし」

雷おこしや岩おこしのようにきわめて硬いタイプからゆたかおこしのように落雁などに近い柔らかいタイプのものまで様々である。

また京都では三角形のおこしが一般的で11月にお火焚き饅頭と一緒に売られている。近年はゆず風味の味付けがなされていることが多い。

  • 東京都
  • 愛知県
    • ゆたかおこし - 豊橋市の名物。柔らかいおこして抹茶餡をサンドしたおこし。
  • 岐阜県
    • こくせん(穀煎、穀選) - 飛騨地方で作られているおこしの一種。米は用いられず、胡麻やピーナッツを用いる。製法はおこし同様だが、最後にきな粉をまぶすのが特徴。形も薄い板状にしてねじ曲げる形にする事が多い。
    • 笠松志古羅ん(しこらん) - 笠松町肉桂入りのおこし。一般的なおこしに比べて、飴の分量が多い。豊臣秀吉が賞味し、しころに似ている事とランの香りがするおこしという事からこのように命名したといわれる。代々伝承していた菓子店が閉店した事から一時途絶えたが、地元の菓子組合によって復活している。
  • 大阪府
  • 愛媛県
    • 米おこし
  • 福岡県
  • 長崎県
  • 熊本県
    • 薏苡仁糖(苡仁糖、よくいにん糖とも) - 熊本県八代市。江戸時代から製造されており、『料理物語』に出てくるおこし米に製法・原料が近似している。これは元熊本藩主で八代に隠棲した細川忠興(三斎)が考案したものとされる。しかし、必ずしも味の良いものではなく(薏苡仁自体に独特の臭いがある)、現在は作られていない。ただし、最近では八代市内の一部の和菓子店で復元が行われており、限定的であるが購入できる。

関連項目