Vine Linux

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Vine Linux(ヴァイン・リナックス)は、RPM系の日本国産GNU/Linuxディストリビューションである。以前はRed Hat Linuxの派生であったが、現在はProject Vineのメンバーを中心に独自に開発が進められている[1]。開発版の名称は VineSeed。各バージョンのコードネームはワインの名称から採られている[注釈 1]Linux Standard Baseには準拠していない[2]。Vine Linuxは主に日本でしか使われていないので、以下では日本での状況について記述する。

特徴

1990年代後半、海外製のLinuxディストリビューションがまだ日本語にまともに対応していなかった時代に登場したVine Linuxは、日本語をそのままで扱うことができるようになった日本語対応のLinuxディストリビューションの先駆けの一つである[3]。当初から2010年1月現在まで、日本語のみで開発・テストを行っている[注釈 2]。 2001年頃まで日本語環境を必要とするユーザに人気があった[4]。しかし、Linuxが広まるにつれて、FedoraUbuntuなどの初心者にやさしくなったディストリビューションが登場し[5][6][7]、インターネット上ではVine Linuxについて言及される回数が減少しているのとは対照的にそれらのディストリビューションに話題が集中するようになった[8]。また、2007年時点では、利用率が落ち込んだ[9]

開発はProject Vineを中心に開発が行われており、Debianのようなメジャーディストリビューションと比較すると人数は少ないがコアメンバー8人、パッケージメンテナー約100人、ドキュメント整備やテストを含めて約200人で開発している[10]

他のメジャーなディストリビューションに比べセキュリティー上の問題の修正が遅い場合もある[11]

他には、Emacs 、[[LaTeX|テンプレート:LaTeX]]の日本語環境などのデフォルト設定、プログラミング環境(GCC など)、JM Projectの日本語マニュアルの採用という特徴がある。また、Project Vineメンバーが開発しているVLゴシックフォントファミリが標準で採用されている。

なお、大学や高専といった教育機関に採用されたことがある[12]

サポート

セキュリティに関してはVine Linux Security Watch Teamが対応しており、修正プログラムは原則としてそのバージョンの次のメジャーバージョンリリースから1年後まで提供される[13]

修正パッケージはソフトウェアのバージョンアップではなく不具合箇所の修正のみを行うことが基本方針となっている[注釈 3]。これは、セキュリティ上の修正のためにソフトウェアの挙動が変更されてしまう問題を起こさないためである。

マイナーバージョン同士では大きな変更がされていないために修正パッケージが共用できる可能性が高いが、バージョンアップが推奨されている。これは、新しいマイナーバージョン環境[注釈 4]で修正パッケージを作成しているためである。

バージョン6.xよりppc(PowerPC搭載のMacintosh)は対応アーキテクチャから外された[14]

VinePlus

Vine Linuxには、VinePlusというVine Linux対応のRPMパッケージが存在する。VinePlusについてもProject Vineが管理するサーバで配布されているが、Vine Linuxをアップグレードした場合に動作しなくなる可能性があるなど、利用者の自己責任で利用する必要があるRPMパッケージ群である。

過去には、VinePlusにあるRPMパッケージのインストールに必要なパッケージがサーバに置かれていないという事例も存在した[15]

バージョン3.0からは、VinePlusは細分化された。過去にあったVinePlusのうちメンテナが不在でメンテナンス頻度が極度に低いパッケージはextrasやorphanedというリポジトリに分離された。これらのパッケージもapt-getを使ってインストールすることもできるが、そのためには利用者がaptの設定ファイルを書き換える必要がある。

殆どのディストリビューションがFHS 2.3に準拠する中テンプレート:要出典、VinePlusは原則としてFSSTND1.2に準拠している[16]

nonfreeリポジトリ

多くのLinuxディストリビューションと同様にVine Linuxではオープンソースソフトウェアのみを対象としており、再配布に制限があるソフトウェア(Adobe Readerなど)は配布しないというポリシーになっているテンプレート:要出典

また、フリーソフトウェアではあるが、特許が取得されている機能を実装しているソフトウェアのように使用に制限があるソフトウェア[注釈 5]についてもソースコードやバイナリの配布を行わないというポリシーになっているテンプレート:要出典

これらのソフトウェアをVine Linuxで利用するためには利用者自身がインストールする必要がある。VinePlusでは、それらのソフトウェアのRPMパッケージを作成するためのSRPMパッケージをnonfreeリポジトリに用意している。利用者は、これらのSRPMパッケージを用いてRPMパッケージを作成し、インストールすることができる。

SRPMパッケージでは、ソフトウェア自体のソースコードなどを利用者が別途取得する必要があったが、2007年11月にnonfreeリポジトリに公開されたself-buildパッケージを用いることによって、インターネット経由でソースコードを取得し、RPMパッケージの作成とインストールまでをほぼ自動化することができるようになった[17]

歴史

Vine Linuxは1998年PJEのメンバー主体で開発がはじまった[18]。プロジェクト開始当初、他のディストリビューションは日本語環境が整っていなかったこともあって、2001年頃まで日本語環境を必要とするユーザに人気があった[3][19]。しかし、Linuxが広まるにつれて利用率が落ち込んでいる[20]

Vine 3.0以降、Red Hat Linuxベースから独自開発に移行した[1]

2007年11月に、プリインストールしたノートPCが発表された[21]

年表

  • 1998年 - PJEのメンバーを主体としてRed Hat LinuxベースのLinuxディストリビューションの開発が始まる。
  • 1999年3月28日 - Vine Linux 1.0 リリース
  • 1999年6月4日 - Vine Linux 1.1 リリース
  • 2000年4月14日 - Vine Linux 2.0 リリース
  • 2000年7月3日 - Vine Linux 2.0 for PowerMac リリース: PowerPCに対応
  • 2000年11月4日 - Vine Linux 2.1 リリース: PowerPC、SPARCAlphaに対応
  • 2001年3月24日 - Vine Linux 2.1.5 リリース: SPARC版はこれが最終リリースとなった
  • 2002年4月15日 - Vine Linux 2.5 リリース
  • 2002年10月25日 - Vine Linux 2.6 リリース
  • 2002年10月28日 - Vine Linux 2.6r1 リリース: Webminパッケージのセキュリティホールのためのリリース[22] Alpha版はこれが最終リリースとなった
  • 2003年12月5日 - Vine Linux 2.6r3 リリース
  • 2004年2月10日 - Vine Linux 2.6r4 リリース
  • 2004年8月2日 - Vine Linux 3.0 リリース: Red Hat Linuxベースから独自開発に移行[1]
  • 2004年11月26日 - Vine Linux 3.1 リリース
  • 2005年9月18日 - Vine Linux 3.2 リリース
  • 2006年11月22日 - Vine Linux 4.0 リリース
  • 2007年2月22日 - Vine Linux 4.1 リリース
  • 2007年12月25日 - Vine Linux 4.2 リリース
  • 2009年8月24日 - Vine Linux 5.0 リリース
  • 2010年2月26日 - Vine Linux 5.1 リリース
  • 2010年11月30日 - Vine Linux 5.2 リリース: PowerPC版はこれが最終リリースとなった
  • 2011年8月6日 - Vine Linux 6.0 リリース
  • 2012年2月2日 - Vine Linux 6 特別版を配布: 震災復興支援プロジェクトへの支援として日本OSS推進フォーラムに提供[23]
  • 2012年7月30日 - Vine Linux 6.1 リリース[24]
  • 2013年10月17日 - Vine Linux 6.2 リリース[25]
  • 2013年11月30日 - Vine Linux 6.2.1 リリース: インストーラのみの修正(インストールイメージの改修版)[26]

主要なバージョンの一覧表

Vine Linuxの主要なバージョンにはコードネームがつけられており、VinePlusなどのパッケージやサポート期限もそれに応じて用意される。

本項ではコードネームによって分類した一覧表を記す。それ以外の詳細や補足情報については歴史を参照のこと。

Vine Linuxのリリース履歴
バージョン コードネーム リリース日 サポート期限
1.0 Nahe 1999年3月28日 2000年1月11日(サポート終了)
1.1 Rheingau 1999年6月4日 2000年1月11日(サポート終了)
2.0 Sociando-Mallet 2000年4月14日 2003年4月7日(サポート終了)
2.1 Cissac 2000年11月4日 2003年4月7日(サポート終了)
2.1.5 Calon-Segur 2001年3月24日 2003年4月7日(サポート終了)
2.5 Domaine de Chevalier 2002年4月15日 2006年2月28日(サポート終了)
2.6 La Fleur de Bouard 2002年10月25日 2006年2月28日(サポート終了)
3.0 Valandraud 2004年8月2日 2007年11月22日(サポート終了)
3.1 Pichon Lalande 2004年11月26日 2007年11月22日(サポート終了)
3.2 Ducru Baucaillou 2005年9月18日 2007年11月22日(サポート終了)
4.0 Latour 2006年11月22日 2010年8月23日(サポート終了)
4.1 Cos d'Estournel 2007年2月22日 2010年8月23日(サポート終了)
4.2 Lynch Bages 2007年12月25日 2010年8月23日(サポート終了)
5.0 Lafite 2009年8月24日 2012年8月6日[13](サポート終了)
5.1 Cheval Blanc 2010年2月26日 2012年8月6日(サポート終了)
5.2 Palmer 2010年11月30日 2012年8月6日(サポート終了)
6.0 Haut Brion 2011年8月6日 未定[13]
6.1 Pape Clement 2012年7月30日 未定[13]
6.2 Haut Bailly 2013年10月17日 未定[13](現在のリリース)

関連項目

脚注

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注釈

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出典

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外部リンク

テンプレート:Linux-distro
  1. 1.0 1.1 1.2 Vine Linux 3.0の特徴 (その1) (1/2)
  2. https://www.linuxfoundation.org/lsb-cert/productdir.php?by_prod
  3. 3.0 3.1 [1]テンプレート:リンク切れ
  4. @IT:リアルタイムアンケート集計結果 使用ディストリビューションは?
  5. Fedora、ライブCDをリリース
  6. Open Tech Press | Ubuntu 7.10は秀逸なリリース
  7. Ubuntu Linuxが注目される理由
  8. Google Trendsでの検索結果[2]
  9. Linux Foundationが行った2007 Linux Desktop/Client SurveySurvey Results - Japanese
  10. Vineのメンバー一覧 Debianの開発者みんなが自分の欲しいOSを作っているんです - Project Vine 代表 鈴木大輔氏
  11. 例えば次のような例。
  12. ヴァインカーブ、教育機関向け Vine Linux を大阪大学に 850 台導入 〜 4月から全学一斉稼働へ 〜テンプレート:リンク切れ
  13. 13.0 13.1 13.2 13.3 13.4 Vine Linux - セキュリティチーム、5.0より変更
  14. Vine Linux 6.x の制限事項
  15. vine-users:069713 Re: arts-develのインストール
  16. VinePlus のパッケージングルール (暫定版)
  17. vine-users:077794 self-build パッケージ追加のお知らせ
  18. About Project Vine?
  19. @IT:リアルタイムアンケート集計結果 使用ディストリビューションは?
  20. Linux Foundationが行った2007 Linux Desktop/Client SurveySurvey Results - Japanese
  21. 「Windows Vista」と「Vine Linux」のデュアルブート構成済みノートPC
  22. Vine Linux errata webmin にセキュリティホール(10/30 更新)テンプレート:リンク切れ
  23. Vine Linux News - 日本OSS推進フォーラムの復興支援プロジェクトで Vine Linux 6 特別版を配布
  24. Vine Linux 6.1 をリリース
  25. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「release-6.2」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
  26. Vine Linux 6.2.1 をリリース


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