東武東上線
東上線(とうじょうせん)は、東武鉄道の鉄道路線のうち、以下の総体である。本項ではこの路線群全体に係る事を詳述する。
概要
この項における「東上線」とは、路線群(路線グループ)である。対して伊勢崎線を中心とした路線網は「本線」と呼ぶ[1]。東上線は開業時は東上鉄道という東武鉄道とは別の会社であり、線路もつながっていない会社同士が合併したことに起因する。
この時東上の現業部門の一部を継承したのが東武鉄道東上業務部である。東上線に対して本線は「東武線」として案内することがあったが、本線だけを取り上げて「東武線」とする機会は減っている一方で、東上線においては「東武鉄道」と案内すべきところまで「(東武)東上線」と表記するなど路線群呼称が頻出する点が大きく異なっている。一例としては駅の標識、東上業務部発行の宣伝物などで、独自のロゴマークすら存在する。
西板線など東上線と本線を連絡する路線の計画もあったが、頓挫している[2]。 東上線と本線との間で車両を輸送する場合は秩父鉄道秩父本線が使われている[3]。
東上業務部
東上線を担当する現業部門として鉄道事業本部の直下に「東上業務部」がある。東上業務部の事務所は東京都墨田区押上の本社ビルではなく、東上本線池袋駅に近い豊島区西池袋1丁目10-10にある。東上業務部は営業・運転・運行管理などの部署と駅務・乗務員を持ち、車両・施設系(保線・工務・電気)をのぞく現業部門は本線のそれとは別個の組織となっている[4]。
東上業務部と本線の部署との間には車両・施設系をのぞき人事交流がなく、営業について本社は東上業務部に対して不干渉で[5]、独立色が強い。一方、東上線内で東上業務部が管轄しない施設には森林公園検修区(車両)、川越工務管理所、川越電気管理所、診療所川越分院(執行部直属)があり、東上線自体が本社から独立した組織になっているわけではない。
本線との相違
- 沿線情報のフリーペーパーは、東武全線で配布されている「マンスリーとーぶ」のほかに、東上線限定の沿線情報を掲載した別冊子の「ゆぁ東上」が発行される。
- 1990年代以降東上業務部独自に「東武東上線時刻表」を制作している。一方、本線の駅で販売されている「東武線時刻表」には東上線は掲載されていない[6]。
- 駅名標のデザインは、白地に青のライン。野田線に類似しているが、野田線にある空色の細線はない。2008年以前に整備されたものは、白地に文字・ラインが茶色ないし臙脂色で、現在順次置き換えが進行中。
- 本線の駅看板が白とピンクの2色で「東武鉄道 (駅名)」と表記されているのに対し、東上線系統では駅看板は白と紺の2色で、「東武東上線 (駅名)」という表記になっている。2008年6月以前は本線と同じ茶色を基調としたデザインで「東武東上線 (駅名)」だった。
- 自動改札機・自動券売機などは、本線がピンク系なのに対し、東上線は青系の色が使われている。
- 「東上東京メトロパス」が、東武東京メトロパス(本線の駅発着)と名称を分けて発売されている。
- 「Look for Nature 池袋から 東武東上線」というオリジナルのロゴマークがある。このロゴは1974年に商標登録を決定した[7]。かつての広告には、「池袋から東上線」と書かれ、その左脇に小さく「東武」と記されていた[8]。また、東武鉄道は2011年から東京スカイツリーをモチーフにした新しいCIロゴを導入した[9]が、CIロゴの脇に「東武鉄道」と書かれたバージョンの他に「東武東上線」と描かれたバージョンが別に存在する[10]。
- 車両の行先表示器における表示が異なる。
- 方向幕車
- 正面種別幕に英字が入る(本線系は英字なし)。
- 側面方向幕の種別が横書き・英字入り(本線系は「快速」「急行」「準急」などが縦書き・英字なし)。
- なお9000系9101Fの場合、普通(各駅停車)の側面幕に種別の表示が無い(他の9000系もフルカラーLED化改造前は無かった)。
- 回送・試運転幕は行先同様青地の白抜きで英文字も表記されている。回送はOUT OF SERVICE。試運転はTEST RUNである。これに対して本線系統は赤地に白抜きであり英文字表記がない。また、南栗橋車両管区工場エリアから出場する東上線所属の8000系電車でも試運転が新栃木(8R車は加須)まで運転されることから本線系統でも東上線タイプの回送・試運転幕を見られることがある。
- 3色LED方向幕車(プラットホームの3色LED式行先案内も)
- 2008年6月まで、「普通」の表示色は緑・「準急」の表示色は橙で、本線とは逆だった。
- 2000年11月30日に車掌が方向幕を変更するようになるまでは、有楽町線直通と秩父鉄道線直通をのぞき、全列車の行先表示が「池袋⇔成増」「準急 池袋⇔川越市」のような双方向表示だった。
- 1988年頃までの8000系は、種別表示に方向幕を使用せず、貫通路窓下のサボ受けへ差し込むタイプだった。普通列車(各駅停車)は種別表示なし。
- かつて在籍した7300系・7800系の方向板は、運転台窓下に装着された、日めくり式の双方向表示のものであり、種別表示は貫通路窓下のサボ受けへ差し込むタイプだった(東武本線は、行先表示が貫通路窓下への差し込み式サボ・単駅表示、種別表示が助手席窓下)。
- 方向幕・方向板が双方向表示なのは、1960年代に行われた合理化の結果、池袋駅以外に方向幕を変更する駅員の配置が無くなったためにとられたものである。東上線のような比較的長距離の通勤路線で始発駅と行き先の両方を表示する路線は比較的珍しい存在だった。本線系統でもこのような表示は、一部の支線内折り返し列車に限られており、東上線の特色の一つとなっていたが、文字が見づらいこともあってか、2000年12月1日から種別と行先のみを表示するようになった。
脚注
- ↑ 路線概要(東武鉄道公式サイト)
- ↑ 東武博物館館長・花上嘉成の回想によれば、国鉄川越線を買収し、大宮駅で野田線と接続するという構想も存在した(「鉄道ピクトリアル」2013年10号(第880号)p68-69)。
- ↑ その時は、秩父型ATSを搭載した8000系か秩父鉄道の電気機関車の牽引で回送される。
- ↑ 東武鉄道会社概要
- ↑ 2007年12月刊行「鉄道ピクトリアル」臨時増刊号(第799号)の東武鉄道特集P197-198
- ↑ 1980年代後半から1990年代前半にかけては、東武の全路線を掲載した大判の時刻表が発行されていたこともある。
- ↑ 東武鉄道百年史[資料編]、p938、1998年。
- ↑ 鉄道ピクトリアル2008年1月臨時増刊号(第799号)p148、1956年の「フライング・トージョー号」の広告。
- ↑ 東武鉄道株式会社様 - 事例詳細01(トッパン ブランド コンサルティング、2013年3月24日閲覧)
- ↑ 東武スカイツリーライン・東上線 3月16日(土)ダイヤ改正にあわせて時刻表を発売!(東武鉄道 2013年2月14日 2013年3月24日閲覧)