工具鋼

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工具鋼 (こうぐこう、テンプレート:Lang-en-short)とは、鉄鋼材料の一種で、強度と耐摩耗性に優れ、金属加工に用いられる刃物治具金型、掘削工具、切削工具、ベアリング、ピストンリング等の摩擦機械・しゅう動(摺動)部品等への材料である。 また最強の曲げ強度も示す材料であり、これは工具鋼は熱処理により4倍以上の材料強度の増幅能力があることに由来し、固体材料では最も強度増幅能が高い高性能なトライボロジー材料の部類に属す。金属相(マトリックス)である焼戻しマルテンサイト結晶構造テンプレート:Abbr;ナノレベルの微細析出炭化物が存在)の中にミクロンレベル遷移金属炭化物が分散して存在する金属組織で構成されている。また全合金系のなかではもっとも複雑化、高度化した合金とも位置付けられ、世界最多の11元素を添加し本来は相反する特性を両立することで、各特性を高いレベルで達成した合金なども実用化している。[1]。すなわち鉄鋼材料における最先端材料の一種ということが出来る。しかしながら、拮抗する戦場の最前線のごとく、目新しい技術で損傷・寿命を稼ぐことができる工具・金型はなかなかないのもこの分野の特徴である。

低合金工具鋼ダイス鋼高速度工具鋼などの種類がある。低合金鋼工具鋼は比較的使用力学環境がマイルドな小型工具に使用され、ダイス鋼は金型などの大型で熱や物理的インパクトの激しいプレス金型などに使用される。高速度工具鋼(英名ハイスピードスチール、通称ハイス)は特に高抗力、高耐熱性の要求される金型や金属切削工具を中心に多く用いられ、金属切削工具においては超硬合金と使用量において双璧を成す。

歴史

日本においては、日本刀が発達し、鉄と鋼の明確な概念が前近代においてもあった。そういった中で世界は、鋼 の概念を生むまでに産業革命を要した。当時爆発的に伸びた銑鉄材料をどうやって加工すればいいのかというのが課題であった。そこで一計を案じたのが、マイケル・ファラディーの鉄合金の研究を基盤にムシェット(英)がムシェット鋼(Cr-W鋼)を発明(1861)し、およびそれを基盤としたのテイラー(米)の(Cr-W-Mo-V鋼)の研究により、高速度工具鋼の地位が確立した。このことにより、銑鉄(鋳鉄)製品の精度はこのような高速度工具鋼による機械加工で格段と高い寸法精度が得られるようになり、機械工学上の普及に寄与した。これらは先の鉄鋼生産力の圧力により開花したものであったが、逆に日本では鋼の概念が明確であったため、すぐさまそれに呼応する形でアジアで初めて開発し、戦後はフォード生産システムの普及により様々な鉄鋼材料用の切削、鍛造、プレス加工等の塑性加工用の金型向けの工具鋼、あるいはアルミニウム鋳造合金の普及に伴ったダイカスト金型向けの工具鋼が開発され現在に至っている。テンプレート:要出典範囲

代表的な工具鋼

代表的な工具鋼について、JISの規格で表記する。

  • SK1 - 7:炭素工具鋼
    0.60 - 1.50%の炭素を添加した鋼。
  • SKT、SKS:合金工具鋼(低合金工具鋼)
    炭素工具鋼に少量のタングステン(W)、クロム(Cr)、バナジウム(V)などを加えたもの。
  • SKD:合金工具鋼(冷間ダイス鋼、熱間ダイス鋼)
    炭素工具鋼にすくなくとも3%以上のクロム(Cr)を添加し、その他にタングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)などを複数、加えたもの。プラスチック金型用鋼と並んで金型用の素材として多用される。
  • SKH:高速度工具鋼(ハイス鋼)
    W、Cr、V又はW、モリブデン(Mo)、Vを多く含む鋼で比較的高価だが超硬ほどではなく、靭性も高い。

脚注

  1. テンプレート:Cite web

参考資料