むこうぶち

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テンプレート:Infobox animanga/Header テンプレート:Infobox animanga/Manga テンプレート:Infobox animanga/Footer テンプレート:Sidebar with collapsible listsむこうぶち 高レート裏麻雀列伝』(むこうぶち こうレートうらマージャンれつでん)は、漫画:天獅子悦也、協力:安藤満(安藤満逝去後はケネス徳田が闘牌協力)による日本漫画作品。『近代麻雀オリジナル』(竹書房)で1999年に連載開始され、2000年に『近代麻雀』に移籍して現在も連載中。2013年、単行本は36巻まで刊行中。コンビニ版総集編『麻雀破壊神・傀』(VS水原祐太「奈落に落ちるエリート麻雀プロ」編・VS江崎編・VS日蔭「氷の打牌」編・VS上野の秀「地獄の赤牌」編・「仁義なき御無礼」編・「牌欲の交差点」編・「VS巫・安永「姫神の闘牌」編・「異邦からの侵略者」編・「逢魔ヶ時」編・「煉獄に住む者たち」編・「煉獄百景」編)も発売された。

またスピンオフ作品に江崎の物語「むこうぶち外伝 EZAKI」、上野の秀の物語「レッドドッグ ノガミの秀」がある。

概要

  • 麻雀プロであり、1980年代の賭け麻雀事情にも詳しい安藤の見聞をもとに描かれた作品。高レート麻雀に集う人々の内面を力強く描いている。
  • いわゆる「麻雀劇画」が一般的には「麻雀で勝った者の勝者のストーリー」であるのに対して、この「むこうぶち」は「傀と麻雀して負けた者」を描いた「敗者のストーリー」である点が画期的であった。その意味で本作品の本当の主人公は、さまざまな理由で高レート麻雀の卓に着き、傀に敗れていく者たち(あるいは彼の闘牌の観戦者など戦いを見届ける者)であると言える。

ストーリー

「むこうぶち」――それは誰とも組まず、何処にも属さない一匹狼。誰も何も必要無い、真のギャンブラー。

バブル経済が頂点に差し掛かりつつあった1980年代の東京。市中の雀荘に飽き足らず、1000点1000円、あるいはそれ以上の高レートで行う賭け麻雀に走る人たち。その中に一人の男が現れた。一見優男。しかし、彼に狙われた者は、この言葉と共に、獣に食い殺されるが如く敗れ去るのみ-「御無礼」。

決して己の内面を見せず、その強さ鬼の如し。男の名は「傀」。

登場人物

主人公と関係者

傀(カイ)
魔物じみた強さを持つ謎の麻雀打ち。どこからともなく雀荘(高レートが多い)に現れる。卓に座った瞬間に敗者を見抜き、彼に「御無礼」を言われた対戦相手は必ず負ける。各話に出てくるゲストキャラの対局相手として登場する(初めの話で出てきた水原祐太のように彼と対局しないパターンもあり)。
本名、出身、住所一切不明。「傀」という名前は「人鬼」から来ており、名を問われた際は「傀と呼ばれています。」と名乗り、一匹狼の真のギャンブラーを意味する「むこうぶち」の名で呼ばれることもある。容赦なく対戦相手から金を毟り取るため「暴虎」の異名を持つ。
常に丁寧な物腰で決して声を荒げたり暴力を振るったりすることはない。極端に無口で表情に乏しいため一見冷静沈着に見えるが、傲慢な相手やイカサマをする相手(唯一の例外は観客や同卓の相手にイカサマをショーとして見せる手品麻雀)は率先して潰す。また、自分の思惑や相手の底を見抜いた時にニヤリとニヒルな笑みを浮かべるシーンは非常に多いので、印象よりは感情の起伏があると思われる。また、たまにではあるが、相手を言葉で挑発することもある。
一方で、麻雀に真摯で腕も立つ者や、欲望に取り憑かれず引き際を知る者を、追いかけてまで殺そうとはせずに時には敬意を示したりなど、彼なりの美意識を持っていることも窺わせる。手品麻雀では会の趣旨を尊重し、わざとイカサマを使って勝つなど案外ジョークを解する一面もある。女性が相手の場合、相手の腕前に関わらずサディスティックな態度を取ることがほとんどである。
雀風は特に固定されておらず、自由自在。鬼ツモや御都合的な役満、イカサマを使っているわけではなく、序盤の数回戦落としてでも相手の戦術やイカサマを見抜き(時に差し込むことすらある)つつ場の流れを形成して、決め打ちや理牌、現物待ちなど偽りの癖で相手が傀の手を見抜いたと思った矢先に、それを逆手にとってトータル収支で勝つパターンが多い。手積みの場で、積み込みやブッコ抜きをやっている者の手を読んでいるような描写が多いが、自身も積み込んでいたかは不明。ただし手品麻雀での鮮やかなイカサマツモから、技術自体は高いレベルの物を会得していることが窺える。相手の運を奪い、自分の流れをつかむまでのパターンは様々だが、いったん自分が優勢と見るや徹底的に攻め続け、一気呵成に叩き潰す。そのため、鈍い者はツキ麻雀で負けただけと勘違いすることも多い。中には流れやバカヅキを掴んで傀に勝利寸前の者も少なからずいたが、傀の安目差込みやセオリーから外れた揺さぶりに流れを手離して敗北している。
単純に麻雀が強いだけではなく、ローカルルールから特殊なハウスルールの天使(アンヘル)の麻雀、三人麻雀まであらゆるルールに適応し、自動卓から発せられる異音を察知して卓に改造が施されていることを完全に見抜いたり、複雑な通しをすぐに解読したりなど、頭の切れそのものが常人離れしている。
麻雀以外では中国麻雀(麻将)に関する知識も深いらしく、21巻では中国出身の張相手にわざわざ中国麻雀の役(日本の麻雀にない役はなので、役牌や対々和などのノミ手であることが多かった)で圧倒した。また、安永に案内されて地下カジノでバカラをしたこともあり、麻雀と同様の鋭い読みを見せている。
対戦相手を待つ間には英字新聞(誌名不明)、ルモンド(仏語版)、ロシア語新聞(誌名不明)など様々なものを読んでいる。このことから傀の学識の広さが窺え、フィリピン語を理解していることを示す場面もある。
都内の高レート雀荘に出没しているが、その打ち筋ゆえに客を殺してしまう(有り金を根こそぎ奪う=破滅させるという意味)ため、彼を出禁にするところは多い。また、根こそぎタネ銭を奪うために特定の相手にわざと勝たせてからその相手を狙い撃ちで勝ち続けたり、他家の得点を調整することも可能。一方で弱者や彼が定めた獲物がいない卓では振らず和了らずに2着をキープして本気を出さない場面や、素人相手の低レートで夜の調整のために流れを作る場面もあり、どこであろうと殺す打ち筋はしているわけではない。
出禁等の代わりに新たな賭場・雀荘を紹介ということで神出鬼没であることをある程度補足しており、また安永が人の破滅に対して鋭敏であると語っているように大きな何かを賭ける者の前に現れる。対戦相手は彼との対戦によって、人生に多かれ少なかれ影響を与え、全てを失う者もいれば、大切な何かを見つける者もいる。その理由として、傀は相手を戦術だけでなくその打ち手の心の奥まで読みきることや向かい合わねばならないほどの敗北をするためであり、時に高みの見物をしていた安永や及川すら追い込むこともある。また、中には須賀の様に見事な闘牌で魅了し、再戦させる者もいる。また、非常に特殊なケースとして、順位や得点で勝っても敗北感を与えられない石川(後述)との対戦では、彼と同じスタイルで技術戦を挑み、順位を譲りつつも苦手意識を与えたということもある。彼自身の目的は、敗北者を見ることと思われ、浮いても勝ちたい者には敗北ゆえに2着に妥協する者には相手にとっては屈辱の浮きを許している。
たとえ一瞬でも、自分と同じ次元で戦える相手の事は実力を認めるらしく、打ち込んで微笑んだり、極めてまれにだが彼の方から名を尋ねることもある。それどころか、見所のある相手の成長を促す打牌をすることすらある。
トップ目のオーラスで強引な手作り連荘や山越しで相手のクビを切る(ビンタなどで基準点未満にして、自分の収益を増やす)ことすらある。しかし、大金を求めているわけではなく、タネ銭は帯封のまま紙袋に入れるなどして無造作に持ち込む(数百万から数千万)。勝ちで得た金は、作中で明示されている分だけで十億円を越え、及川からは白紙小切手を受け取っているが、彼がそれらの金を麻雀のタネ銭以外に使うシーンはない。金の行方は不明だが、一度だけ描写された時には駅のコインロッカーにしまっていた。ただし、明らかに銀行から引き出してきたと思われる封のされた新札の束を取り出す場面もあった(第2巻)。そして、相手から払える限度額を見抜く眼を持っている。
傀と複数回戦う人物は何人か居り、彼と再会した者は「傀は自分のことを覚えているのか?」と考えることがある。勝田や山下と再会したときの言動を見るかぎり、傀は今まで対戦した相手の詳細は記憶している可能性がある。
生活感や人間らしさが全く無いと作中で言われており、『ふり向いた時や角を曲がって見えなくなった時には姿を消している』『有毒ガスが効かない』『人の死に際の夢に死神として現れる』『怨霊と打って勝つ』などの人間離れしたエピソードもある。タバコを吸う以外で食事をとったり眠ったりするシーンは(対局間の休憩時でも)一切ない。また、作中では安永が今よりずっと痩せていた頃からかなりの長期間にわたって麻雀を打ち続けている事が確認されているが、加齢した様子も全く見られない[1]
及川勝依(おいかわ かつより)
通称:及川老。大企業の会長(作中では「社長」と呼ばれる)にして相撲部屋「伯洲部屋」のタニマチ。裏では政界のフィクサーとも噂される。軍隊時代は少尉の地位にあった人物で、当時の部下とは年に一度の戦友会を行う。
傀の闘牌に魅せられている。作中、傀とコンタクトを取れる数少ない人物のようで、大勝負見たさに自分が見込んだ相手と引き合わせたり、何らかの会合に傀を混ぜて敗北する姿に器量を見極めることもある。また、戦友会で部下の負け分を立て替えても笑って済ませられる財力をもつ。

水原祐太と関係者

水原祐太(みずはら ゆうた)
元競技麻雀プロの青年。第一話で安永と対戦し、競技麻雀で優勝を収めるも納得のいかない勝ち方をしてしまう(トップ目から安永の見逃し山越の親倍に振りこんでしまうが、それを他家の安手頭ハネで命拾いして優勝を拾った)。その後安永に「東空紅」に連れて来られ、そこで傀の麻雀を見て衝撃を受ける。それ以降「東空紅」へ通い、彼の強さの秘密を探ろうとする。「東空紅」ルール(東風戦アリス)での勝ち方を見つけ、勝負に勝つようになる。が、その直後忽然(こつぜん)と安永の前から消息を絶ち、長い間行方不明だった。
13巻で母の死を機に旅に出て大阪・九州に行き、代打ちになっていたことが判明。風貌も大きく変化した。東京に戻り安永と再会し、傀と戦うこととなる。西日本仕込の完先麻雀で手役確定思考が強かった。しかし傀に弱点を突かれて翻弄されるも、自分の打ち方を対局の中で進化させていった。
代打ちで培った雀力は傀も認めたらしく、傀に対局後「…名は?」「…水原祐太。」と名前を尋ねられた作中唯一の人間である。
さらに20巻での傀、安永、友人のジョージとの激闘ののちに、ジョージとともに日本全国を巡り麻雀を打つ旅打ちに出た。
門前派であるため鳴き麻雀が苦手であったが、傀、安永、ジョージ、日蔭など様々な強敵との対戦を重ねるごとに、その弱点は徐々に克服されており、今なお進化し続けている。
また、集中が極限に達した時、傀がいないにも関わらず「ああ…人鬼はそう打つのか…」と傀の手筋の幻を見るなど、「むこうぶち」に近づきつつある。日蔭との対局中にも、「傀さんのように打っているんだ」と述べる場面があり、傀を強く意識し、目標としていることが感じ取れる。
この作品ではほぼ全ての話に傀が登場するが、まれに傀がまったく登場しない回もあり、その場合は話の中心には必ず水原祐太が存在している。このことからも、この作品において祐太がかなり特殊な存在であることがわかり、本作のもう一人の主人公とも言うべき存在である。
性格は登場初期は一見、謙虚な物腰の内に熱く感情的な一面を秘めたものから、再登場時は飄々(ひょうひょう)として人懐こさと少年らしさが見え隠れさせたが、内に秘めた意地は変わらず、勝負時に表に出る。
旅打ちの中、傀の立つ「むこうぶち」を目指す。
条二(じょーじ)
ごつい体格と坊主頭が特徴の青年。体育大中退の元レスリング選手。裏メンをして稼いでいたが水原祐太と友人になったことがきっかけで傀と対戦し敗北、祐太と二人旅打ちに出る。雀風は鳴き麻雀一筋だが安易な速攻ではなく、染め手傾向に多く字牌を絞るため、プレッシャーを与えて相手の足を止め高い手作りをする重厚な打ち筋。
左手マヒの麻雀狂や流浪の裏プロ・日蔭との邂逅を経て打ち手としての「線引き」を考えるようになり、ある雀荘のママと深い仲になったことで傀の領域を目指して一線を越えていこうとする祐太を見送る。祐太からの友情に複雑な感情を抱きつつも、その後も連絡を交わしている。

プロ雀士

安永萬(やすなが ばん)
表と裏の世界を行き来するプロ雀士。作品中、傀の次に登場回数が多く、狂言回しを務めることも多い。初登場時は五段だったが、後に六段に昇段した。過去、当時表の賞金が安かったために裏が主戦場で、他家を操ってトップを確定させたり数局で相手の勝ちのフォームを崩したりと「自分に勝てる者はいない」と自負するほど強気の打ち手だったが、初めて傀と対決した際、最初はトップを取り続けたが、傀の鳴きによって流れを奪われ追い詰められた果てに浮きの確保に徹した以降二着をキープする雀風になってしまった。それを傀の呪いだと本人は思っており、傀からも「単に沈まないだけ」と評され表プロの闘牌ではここぞという時に勝ちきれない弱点を持つ。あるいは、勝利しても何らかの形であや(スポンサーを怒らせてしまった、傀と借金をして闘牌し、賞金はほとんどその返済に消えた)がつく場合が多い。
雀力はプロ雀士としては強いが、傀には及ばない。傀の強さについて研究し、秘密を探ろうとする。しかし傀に肉薄する打ち手の心の闇を知る都度、自分に欠けているものがあると思い知らされる。
全雀連に属し、理事として若手プロ雀士の育成に努めている。表では意志を持った門前志向の打牌を通し、「メンチンの安永」の異名とともに慕う者も多い。見込まれた若手は伸びるが、にらまれた若手は長続きできないらしい。若手プロが一人前になれるかどうかの試金石として、あえて傀と戦わせることもある。
裏では高レート雀荘で金を稼いでいる。こちらでは鳴きも存分に使う。二着狙いの闘牌が結果として大勝を避け、店からも客からも嫌われていない。
都内雀荘において顔が広いため、賭場荒らしが現れた時などに相談役を頼まれる場合がある。表プロとして手が出せない、自身でも倒せないほどの相手に対しては、傀をぶつけ、傀の闘牌に合わせ、相手の手口や突破口を見抜いてから、その標的に勝つことも多い。
上記のように、自分を慕う者との義理を裏切れないため、全てを振り切って突き進めない自分の甘さを自覚し、葛藤を抱くことも多い。傀も安永の顔を立てることが多いのは、情けなどではなく安永が自分に何度も挑戦、あるいは獲物を提供させるための布石としてである。
裏において傀と同卓する機会が多いため、しばしば傀のメッセンジャーと思われているが、彼自身も傀と直接連絡を取れるわけではない。雀荘にあらかじめ連絡をとって、傀が現れたという店に安永自身が足を運んで用件を伝えている(それでも傀が来るかどうかは傀自身の意思による)。その一方で傀を呼ぶコツは誰よりも把握しているという自負がある。
多河巧典(たがわ よしのり)
元暴走族の安永の後輩。漢字が苦手。だが真面目な性格で、安永を慕っている。傀との対戦以降、登場ごとに雀力が付き強くなっている。若手プロ中心の有志団体「青龍會」の指導者的立場。昼は実家の中古車屋に勤めている。
傀を知ってからは彼の強さを目指すようになり、幾度かの対局の中では読み合いの末に傀に直撃を当てるまでになり、傀も満足げだった。言動の端々に樹村潤子に思いを寄せている様子が伺え、仲間内でもしばしばネタにされるようになってきている。
樹村潤子(きむら じゅんこ)
全雀連所属の女流プロ。プロ雀士としてタイトルも持っているが、かつては効率打法と勘麻雀を併せたような、説明不能の打ち筋だった。安永の引き合わせで傀と戦い、敗れたものの自分のスタイル「すっぴん打法」に目覚める。無意識に高度な河・捨て牌読みをしており、効率より決め打ち傾向の強い感性タイプである。
以来プロとして活躍しているが、他人の眼(特に傀に対して)を気にし、受け気味の性格によって詰めの甘いミスを重ねる傾向があり、裏の猛者と戦うにはまだまだ力不足で作中でも一時は2万点以上のリードがありながら日蔭に敗北、更に傀に挑戦しようとして失態を重ねてラスに転落している。現在はOLとの兼業からプロ一本に転進。しかし、麻雀だけでは食べていけないので、エッセイを書いている。彼女もまた多河を意識している節が見られる。
藤永太郎(ふじなが たろう)
全雀連所属のプロ雀士で、「青龍會」の中核的存在。効率打法を得意としているが、闘牌レベルは安永や多河のそれより数段劣る。また、効率ではなくターツオーバーでの選択や危険牌の先切りか絞りなどの勘で選ぶ局面では大抵裏目となることが多い。そのため、近代麻雀掲載の何切る討論では悲観主義な欠点を持つ。傀との初対戦では呆気なく負けたが、本人は傀の闘牌の凄さに気付かず「効率を無視したツキ野郎」と思っていた。ところが19巻では一転して傀を「さん」付けの敬称で呼び、その次の登場21巻では傀を日本代表と例える場面が何度もあった。藤永の傀に対する考えがこのように反転した理由や描写は一切無い。その後もちょくちょく登場しては、他エピソードで傀と対戦する敵手に翻弄される役回りを背負っている一方、張の実力を素直に認めて青龍會に引き入れる器量はある。
プロ雀士としては別に、出版社に勤務し、潤子の担当編集をしている。
須田(すだ)
「青龍會」に所属している中核的存在。藤永と同時に登場するが、彼に比べて作中で出番は少ない。傀との初対局では、彼の闘牌の凄さに気付かなかったが、藤永と同様にエピソードもなくいつの間にか他の登場人物と同様に彼を畏怖している。近代麻雀掲載の何切る討論では根拠のないオカルトは信じず、効率とセオリーに縛られ、柔軟さに欠ける欠点を持ち、一種のパズル問題には弱い。
張学基(チャン)
雀荘で働く中国残留孤児の3世。中国麻雀で鍛えられた巧みな鳴きを駆使しての素早いアガリを得意としており、プロ雀士の藤永を圧倒した。その後傀と対戦し敗れるものの藤永から腕を見込まれ、青龍會に誘われる。洞察力が鋭く、他人が雀荘で打った時の話を聞いただけでその雀荘に仕掛けられていたイカサマのカラクリを見抜いたりもしている。近代麻雀掲載の何切る討論で、天然かわざとか時事ネタをよく口にするユーモアがある。
鉈切初男(なたぎり はつお)
元塾講師。全雀連所属だったが、織田・高山らを巻き込みクーデターを起こす。タイトル戦の決勝卓で3対1の安永包囲網を敷くも、前夜に傀と打ち、対策と勘を研ぎ澄ませた安永に逆転勝ちを許してしまう。その後傀とも同卓し、安永を意識するあまり手痛い敗北を喫した。現在は東北地方を中心に活動するプロ団体「アックスボンバー」の主催者を務めている。場の状況をみて山の残り牌を読む派で、初めての高レート東風戦でわずか三局で対応するなど実力は高い。昔の安永にあこがれて安永の牌譜を集めて研究しており、昔の安永と似ている打ち方も行う。
クーデター後も巧みに安永など全雀連からゲストを引き寄せようとし、塾講師だったために演説がうまく、老若問わずに引き寄せるカリスマ性を持ち、運営手腕には確かなものがある。
織田一樹(おだ かずき)
全雀連所属のプロ雀士。実家は会社を経営しており、いわゆるボンボンである。名声欲しさに同じプロの佐藤を引き込み、イカサマを使って優勝をかすめ取った。それに怒りを覚えた安永は、彼らを高レート雀荘で傀と戦わせることにした。
うぬぼれ屋で、安永を「過去の人物」と見下す一方、自身はすぐばれるようなイカサマばかり繰り返す。安永いわく「プロとしても人間としてもまがいもの」。案の定負け続け、佐藤は途中で返されたが、大量の小切手を持っていた彼は帰してもらえなかった。
その後も八百長疑惑の汚名を受けながら全雀連に所属していたが、鉈切の誘いに乗って全雀連から退会、新天地での再起をもくろんで安永と敵対する。この時の彼の雀風は鳴きによる速攻派。しかし、後半で安永さえラスなら自分がトップを取ろうと暴走し、それが安永の1対3対策にはまることになり敗北を喫した。プロと一般が同卓する番組で佑太と対戦するが、翻弄されることとなる。

三橋秀俊(みつはし ひでとし)
「上野(ノガミ)の秀」の異名をとる赤ドラ麻雀専門の有名な裏プロ。また、コンビ打ちのサポートとしても高い実力を持ち、雇われを受けている。幾度か傀と対戦する。機嫌が良いと歌い出す癖がある。
中古品屋を副業としていたが実際は盗品を流していた窃盗犯。傀に負けた夜に逮捕されたが、敗北の教訓で素直に罪を認めて執行猶予の判決が出た。拘置所を出た後も、安永を通じて傀にリベンジを挑んだり、チップ麻雀の時に偶然傀に出会って勝負したりとたびたび登場している。傀の麻雀を研究しており、傀を彼なりに認め、尊敬してもいる。
安永にとっては己の暗黒面のような存在。「表に未練がなかったらアイツみたいになっていた」と言わしめている。安永とは対立しているものの奇妙にウマが合い、そのやり取りはまるで掛け合い漫才のよう。
15、16巻で自分の技術が仇となる森江とのチップ麻雀に大苦戦しているところにも傀が現れ、そこで傀を利用し浮きの2着をかすめ取った。しかし、「この勝ち方は確かに屈辱的だ、安永もこんな気分を味わっていたのか」と落ち込み、表のプロとして生きられる安永を羨みつつ、傀を追いかけ2着を狙うことはもうしなかった。
高レート雀荘の指南役として生きる道を選ぶ。
スピンオフ作品『むこうぶち外伝 EZAKI』では、江崎と対戦するエピソードが描かれている。1局遅れて登場し、ハンデを与えながら得意の赤麻雀で翻弄。一方、江崎に赤を使った返しを受け、互いに傷を付け合いつつも二度と会うことはなかった。
「レッドドッグ ノガミの秀」では主人公として登場。この時は34歳で、「上野の秀」と呼ばれていない。ヤクザに目をつけられ、大阪へ逃げ出した彼は赤入り麻雀と出会い、牌工場の社長に勝って関東にも広めるよう助言して上野に戻る。
巫藍子(かんなぎ あいこ)
裏カジノの女ディーラー。「キラークイーン」と呼ばれている。興味のない人間には声をかけられても無視するなど冷たく傲慢な性格。過去の交通事故で足が不自由なため車椅子に乗っている。場の流れを読むことに秀でているものの全員の面子の都合を見抜けない視野の狭さが弱点である。
傀に勝負を挑むも傀に「当たる価値が無い」とロン牌をスルーされ、ツモに徹せられ、相手にされないことに動揺し、流れを奪われ、最後にやっと相手にされ、喜んで負けてしまう。これは巫に限らず、傀と戦った女性雀士には多い負け方。
これ以降彼女は傀に夢中になってしまい、16巻で再会し、勝負を挑んだ。
流れ読みの鋭さが前回の対戦よりも鮮明に描写され、傀とほぼ互角に渡り合えるほどの力を持っていることがわかる。ただし、他家も駒として扱う点においては傀に遠く及ばないため、この対局中、巫は常に傀の手を完全に読みきっていたものの、同席していた安永や彼女の父のせいで傀にアガられてしまうという場面が何度もあった。傀には敗れたものの、父との差し馬による跡継ぎ問題に解放される。
日蔭(ひかげ)
裏プロ。「氷の男」と呼ばれている。麻雀渡世で地方や東京を巡行し、ホテル暮らし。冷静な効率重視の打法をする。能面のように無表情でいることが多いが、内心は感情の起伏が大きく、闘牌を楽しむ一面を持つ。
傀に自分と同じ匂いを感じ取り、勝負を挑み最初はトップを取り続けたものの勝負の最中、自分のホテルが火災に遭っていることが分かって動揺し、また傀に自身の打法を逆手に取られた迷彩の直撃で最後は冷静さを欠いて大敗を喫し、麻雀の負けとホテルの火災で全てを失うこととなる。
その後再び東京に姿を現し、ただ和了や点棒だけでなく相手の心を折ることが勝利の最適手段と学び、状況の変化を計算、同卓者と会話しながら相手の懐や性質の把握、挑発などをするようになる。裏で遭遇した樹村潤子プロを下すが、又もや傀と遭遇し序盤はリードをしていたもののレートアップ後に連敗を喫してしまい、自ら勝負を降りたため破滅こそしなかったが獲物を傀に横取りされることになる。
更にその後、地方を巡行中に水原祐太と遭遇し、雀荘で勝負をすることになる。勝負は長期戦となり、最終的には一概にどちらの負けとも断じられないような結果(勝ち数は祐太が上で最後に役満直撃させたが、勝ち金は日蔭の方が上)で、明確な勝敗はつかないまま別れることとなった。
再登場の度に確実に実力を上げているが、傀との戦いはかなりのトラウマになっている様子。しかし、彼へのリベンジは諦めておらず、勝利の暁には傀の無様な姿を晒し者にしようと考えている。闘牌した祐太には「効率重視打法を徹底すれば傀が相手でもトータルでは浮く筈だ。ただし、傀の居る超高レートの場に長期間参加し続ける事が出来るならば」と評されている。傀との敗因は自分を崩したこと、過去二度の敗戦はいずれも傀からのレートアップを受けてからの逆転負けだったので、あながち間違いとは言えない。日蔭のスタイルは生活のための戦法ゆえに一局だけの勝利に全力を注がないことであり、それが弱点でもあり長所でもある。
スピンオフ作品『むこうぶち外伝 EZAKI』では劉の卓を訪れ、劉の罠を潜り抜けて実力を見せつけて江崎と対戦。徹底した氷の打牌で序盤は独走するが、江崎の揺さぶりに苛立ち始めて氷の冴えを崩す。最後は地和で逆転するも、実力の勝利ではないと卓を去る。そして、「むこうぶち」となることを語る。
勝田 教導(かつた のりみち)
裏プロ。茨城では無敵の腕で、高レートの雀荘を荒らしまわった茨城ナマリのチーム「水戸グループ」の兄貴分。一見、男らしい姿を見せているが、それは虚栄心の現れである。
剛腕麻雀の打ち手で、決め打ち傾向が強く、裏目やミスもツモで修正する引きの強さを持つが、それ故隙が多い。
傀に通しを見破られた上に大敗を喫し、更に意地を捨てた瞬間まで討ち取られて「マイナス千円の価値の男」と評されて自信を失った。
その後新しい舎弟分を引き連れて再登場した。しかし傀に対する恐怖は根強く、彼に遭わぬよう東京でも地方の賭場に現れて攻め一辺倒ではない新しい打法を見せている。その打法は以前より良く言えば慎重な、悪く言えば臆病な傾向の打ち筋を見せた。だが結局は傀に再会し、周囲の流れと引き際の見誤りで勝ち頭同士の場に立たされてしまうこととなる。最終的に傀の抑えた闘牌を不調と勘違いして押し引きのタイミングを外して敗れ、負け分が一万円分足らなくなった(実際には勝ち分を確保するため衣類の下などにいくらか金を隠していたが、それが知られれば赤恥をかくため取り出すに取り出せなかった)。対戦後には傀から「今度はマイナス一万円」と見下された上、舎弟分も彼に魅せられてしまい不足分を手切れに勝田の元を離れていくという散々な結果となった。
その後、虚栄心の強さのために借金を背負いこみ、今度は舎弟ではなく借金取りを連れて地元で勝負している最中に地方を巡行中の水原祐太と遭遇して対戦する。そこでは、傀との闘牌を宿命のライバルとして勝ったり(序盤の見に徹する半荘を都合よく言っているだけである)負けたりと自慢話を語りながら格下相手と言うことで弱気を見せることは無かったものの、見栄を張りたがる性向のために失策を冒し、それを祐太に見抜かれて逆転負けを喫している。そこから、祐太の実力を知って再戦を挑もうとするも、残金が借金の回収分だったために見苦しくタネ銭を借金取りに回収されて、勝負出来ずに終わった。
再登場する強者は成長、あるいは何らかの形で傀に対策をもって登場が多い中、彼だけは登場の度に小者と化している。
山下(やました)
千葉と接する都内・葛飾に賭場を持つヤクザ一家の代打ち。妾の子であり、常に辛酸を味わいつつも組を守っている立場にある。
卓上のツキを測るのがうまく、冷静に場の流れを見極めてトータル10回戦(目的は単純な1着取りではなく、外ウマから寺銭の兼ね合いなど順位調整含む)での強さは関東最強を自負する。自らの仕切る雀荘賭博に現れた傀に終盤で追い込まれた経験を持つ。その後、相手が傀と知り、出禁と領土拡大の野心を抑えることで組と賭場を守る。のちに関東の外で再び傀と対局した際には経験を活かして戦ったが、ツキの調整に腐心したあまり自らの調子を崩し、連勝する傀の陰で恥も外聞もかなぐり捨てて二着狙いに甘んじる屈辱を味わった。
1度目は勝田が同卓したおかげで彼が標的となり、2度目は二着狙いに苦心するなど、結果的に同卓しながら直接対決を避け、自身のプライドを除いて大きな傷や破滅を免れている。
塚田(つかだ)
関西ヤクザの代打ち。組の金に手をつけ、それが露見したため穴埋めのために吉井の賭場で一発逆転を狙い参戦する。傀に翻弄されほとんど手持ちを失い、闘牌の途中で逃亡するが、追っ手に捕まり、事故死に見せかけて殺害された。
後に住之江紀子の話で亡霊として登場し、彼女に適切なアドバイスをしていることから、腕は決して悪くなかった模様。
吉井 陶幻(よしい とうげん)
鄙びた海辺の町の実力者。元は漁師で現在は陶幻窯という窯元を営む陶芸家。一族は皆地域の要職に就いており、事実上の支配者でもある。
高レート麻雀の胴元でもあり、欲に駆られた参加者たちが、自縄自縛に陥る様を蛸壺に嵌る蛸と評しながら傍観するのを慰みとしている。
ヤクザ者が大嫌いで山下達を内心軽んじていたが、闘牌途中で塚田に逃亡され、同時に土地の境界線に温泉が湧き出たことから負け越したまま中断してしまった。
山下が去り際に「利権が絡めばヤクザより民間人の方がタチが悪い」と指摘され、事実多くの訴訟を起こされ不本意な日々を送ることになった。
後に塚田の弔い合戦に挑もうとする住之江紀子に面白半分ながら、傀の情報を教え、また彼女がなぜ闘ったのかその真意を悟り、嘆息している。

東空紅

河田(かわだ)
赤坂の雀荘「東空紅」のマスター。かつて「東空紅」は高レートも手がけていたが、好景気によるマンション麻雀の台頭で現在はアリス麻雀による低風速の道を選んだ。高レートで有名な傀や安永が、そんな自分の店を今でもひいきにしてくれることを「雀荘冥利」と喜んでいる。物言いがやや文学系チック。
上島(うえしま)
「東空紅」の常連客で、本職はインテリアデザイナー。オカマのような口調で話すことが多い。マスターいわく「遊びがキレイ」で、一見の客も生かさず殺さずの闘牌で常連客に引き上げる凄腕。店で傀とは何度も対戦しているが、本人の言によれば、それは傀が最も多くの金を搾り取るためにわざと完全に殺さなかっただけで、トータルでは高級外車が何台も買えるほど負けている。しかし、決して下手な相手にカモられないからこそなので、その腕は確か。
本業の都合で香港へ旅立ち、二度と傀と打つことはないと残念がっていた。

企業家・フィクサー

劉(ラウ)
裏社会にも名の通った華僑の大物。自分のマンションで1000万単位の現金を動かす超々高レートの卓を立てている。同卓しては振らずあがらずの見物麻雀を行うが、その真意は弱者が破滅する瞬間を見届けたいためと、傀と遊んでもらうには、破滅させる相手ではなく対等に勝負を挑む実力者がいるべきだと知らなかったため。本気になった時の戦法として、罠を掛ける戦いを得意とする。江崎を一度は破滅させ、密入国船に送りこんだ人物。実力は未知数だが、少なくとも乾よりは圧倒的に上手。
乾(いぬい)
証券会社を経営する社長。劉の主催する高レート卓のメンバー。第4巻で初登場した時には劉と同様の見物麻雀を行い、「自分は銭金や勝負には退屈している」と述べて江崎の破滅を楽しんでいた。しかし第11巻で再登場したときには会社の金を使い込んで勝ちを狙い、一転して江崎と傀の勝負から漁夫の利をせしめようと参戦し、逆に他の参加者達から破滅に追い込まれた。初期の江崎よりも腕は上のようで決してヘボではないが、復活後の江崎や劉、傀といった面々と比較するとさすがに見劣りするようである。
鉢黒剛毅(はちぐろ ごうき)
防衛産業に食い込む商社のトップにして、「保守党の裏番頭」と呼ばれる右翼の大物。巫藍子は馴染みの芸者に産ませた彼の私生児。血を分けた子に自分の後を継がせたいと巫を庇護下に置いてきたが、自由を望む巫と傀・安永を交えて麻雀勝負を行ったもののどちらにも敗北を喫した。打ち手としては大物らしい強運を武器としている。及川老とも知己。
小暮幸男(こぐれ ゆきお)
米穀商。高利の闇金融に手を出してしまい、なけなしの現金を持って高レートで一発逆転を図るも傀に遭遇して無残に刈られてしまい、金融屋にウルトラCでツメられてしまった不遇な登場人物第1号。作中に描かれた限りでは特に悪人というわけでも闘牌が強いわけでもないのに、傀と同卓したばかりに全てを失った(もっとも、手の縮んだ闘牌でツキを逃していた上同卓には質の悪い雀ゴロもいたので、たとえ傀がいなくとも大金を稼いで一発逆転が出来たかは疑問ではある)。なけなしの全財産を失った後も傀に無心するなど生き延びようと必死にあがいたが、死に金は回せないとあっさり断られた。
佐野(さの)
町工場の社長。かつては麻雀で食っていた剛運の打ち手だったようだが、所帯を持って守るべき家庭を作ったことで勝負運を失った。にもかかわらず麻雀をやめなかったために負けが込み、無尽やトイチ、手形などで金策をしなければならないほど追い詰められていた。最後は傀に遭遇してとどめの大敗を喫し、自殺して自分の死亡保険金で手形の代金を返済することとなった。

その他

江崎 昭彦(えざき あきひこ)[2]
悪徳不動産屋。柔和な人柄を装っては人を陥れ、自分の利益を築いていた。傀の捨牌読みに自信を持ち、ラス候補として劉の高レートに連れて行くが、完膚なきまでの敗北を喫する。
その後、傀に麻雀で復讐することを支えに3年間密入国船で働き、借金を返して傀に再挑戦する。地獄のような環境を生き延びて身に付けた捨牌・流れ読みで、再戦のための軍資金稼ぎの途中で多河とも戦ったがあっさりと勝利しており、彼からも「まるで傀と戦っているようだ」と評されている。
乾を降した後は、劉に認められて彼の下で様々な仕事を任され、請け負っている。劉が仕掛け人となる「むこうぶち」を迎える卓の一員となった。劉の賭場に復帰して以降は傀と共に挑戦者を食い尽くしてしまい、まともな卓が成り立たないほどの実力を誇っている。卓は4人であるため、劉と江崎、そして傀と互角に戦える「最後の一人」を待ちつつ、裏麻雀を続けている。実力の伴わない者が参加した場合、傀と勝負がしたくても「弱者」が先に喰い殺されてしまうからである。
速攻で鳴き(チー)をする時に「チィ!」と唇を尖らせて独特の発声をすることがある。
本人も作中で何度も言っている通り、運(ツキ)の無さが唯一ともいえる弱点だが、それを除けば復活した後の実力は「むこうぶち」中でもトップクラスの実力だと思われる。
麻雀に対して江崎なりの誇りを持つ。
江崎を主人公とした『むこうぶち外伝 EZAKI』がある。この作品の江崎はハーレーに乗って町中を移動したり、傀の「御無礼」と違い江崎は「グッジョブ」と言って和了。
後堂(うしろどう)
倉庫会社社長の娯楽担当秘書。当初は傍観者として卓の傍に立ちつつ社長をサポートしていたが、途中から麻雀に参加する。巧みに傀の流れを抑え、トップ寸前まで行くも自身の勝利より社長の損失を抑えようとしたことが仇となり、不覚をとってしまう。更に彼の不足分の代理を拒否して退職金から差し引いたことで、解離して会社をクビになるが、その場で得た退職金5千万円を使ってさらに勝負を続け、体勢を立て直して傀と渡り合った。その実力を居合わせた江崎に見込まれ、勝負を中断した後場を変えて今度は劉・江崎・傀と卓を囲んで戦う。彼らには今一歩及ばず最終的には退職金を10分の1以下にまで減らしてしまうが、その実力と引き際を誤まらず破滅を逃れた判断力は劉や江崎にも高く評価された。しかし、途中でノルマを達成しながらも彼等との勝負をやめられず、傀だけは「引き際を誤りましたね」と発言される。
その後は江崎と同様、劉の下で働き、華僑の資金洗浄用の会社で社長秘書をしている。江崎の依頼である社長から借金回収の差し馬麻雀を持ちかけられ、引き受けるが傀が同卓していた。傀の手をかわしながら差し馬を取り続け、「御無礼」を言われなかったが翻弄された結果であった。また、江崎とは互いに非常に似ていながら気の合わない事から、お互いを磁石の同極と感じている。
手積み卓の番人(てづみたくのばんにん)
サービスエリアに駐車した保冷車の荷台で賭け麻雀を開帳する老人。玄人(バイニン)の技術と映像記憶の異能によって無敵の自信を得るに至ったが全自動卓の登場により表舞台へ出ることはできなかった。手積み卓使用・実質イカサマ容認のルールのもと「麻雀狂最後の砦」を守っていたが、傀が現れたことでついに全力を尽くしての勝負をする機会を得る。しかし、ことごとく自身の技をすり抜けられ、いつの間にか車の有毒ガスが賭場にまで回ったことが原因で死亡する。
片マヒのおっさん(へんまひのおっさん)
保冷車麻雀の常連。左手芸と積み込みを得意とする凄腕だが、胴元の老人に言わせれば「半素人」。傀と老人の勝負に巻き込まれ病院送りとなる。このため左手麻痺の後遺症を負うが麻雀を止めることはできず、郷里の温泉街で打っているところに旅打ちで訪れた祐太たちと対戦。ジョージに麻雀における強者の生き方を説いた。
鈴井(すずい)
城東大学の学生。麻雀研究会に所属しており、腕前は関東学生大会で個人優勝するほど。大学OBの経営する雀荘でバイトをしており、客として来た傀の闘牌を見て高レートの住人であることやその高レートに向けて流れを調整していることを見抜いた。のちに店長の高レート場で負け金の取り立ての為来店した際、時間稼ぎの為傀と打つことになり傀の調整を徹底的に乱しつつ他家への牽制を行うなど高い技量を見せた。
須賀(すが)
元法学生。頭はそこそこ回り、楽して生きる新人類。司法試験に落ち、周囲が就職を決めているところで東空紅で傀と出会い、ビンタ麻雀に挑戦する。最初は傀の非合理的な闘牌をツキ麻雀とにらんで勝てると踏み、同時にビンタ麻雀の打ち方に徐々に適応していくが、本領を発揮し始めた傀にタネ銭を根こそぎ奪われ、傀の実力を知ると同時には華麗な闘牌で魅了されてしまう。
後に大学を辞め、派遣や請負で生活を始めていく。その後はフリーターを行いつつ、同僚から麻雀で稼いでいるが、どこか麻雀だけで生きていくには思うようにいかない。傀と意外に遭遇することは多いが、現時点では及ばないため、傀との同卓は控えて観戦に回っており、いつか挑戦しようという気が言葉の端々から伺える。
あかね
裕太と条二が旅打ちをしていた時に居ついていた雀荘のママでシングルマザー。一回り年長であるが、条二と同棲中。雀荘を経営しているだけに腕はかなりのものだが、普段自分の店では打たない主義。条二には内緒で喫煙していたり、競馬に打ち込むなど地味な見た目とは裏腹に享楽的な一面があるが、面倒見の良い姉御肌。
大雪で避難した公民館で初対面の人々と暇つぶしに麻雀を打つことになり、その中の一人が傀であったため、図らずも戦う羽目になってしまう。幸い傀の狙いが他の人物かつ場のレートアップにもついていかず、(それほどは)負けずに済んでいる。また条二から傀の恐ろしさは聞いてはいたものの、この時の対戦相手が当の傀だとは最後まで気づいていなかった。
橋場 繁(はしば しげる)
元雀ゴロのサラリーマン。製菓会社の裏仕事を担当していた父親のコネで入社しヤクザの花会で倒れて意識不明になった父の役職を引き継いだ。労災が下りなかった父親の治療費を会社から抜いた金でまかなうことを敵討ちと考えている。
件のヤクザ・菱田の花会で傀に遭遇。ヤクザの代打ちを一蹴した傀の強さに真剣勝負での再戦を望み菱田にセッティングさせる。死亡した父親の保険金と香典を種銭にし傀を倒したら会社を辞めて代打ち稼業に転じるつもりだったが、敗北。父と同じサラリーマン暮らしを続けることになる。
攻め気を抑えて相手のミスを待てる堅実な実力者だが、調子に乗ると強引さや荒さが目立つ。
石川(いしかわ)
町工場に勤める中年男性。発達障害の気でもあるのか常にぼんやりとした表情で所作も緩慢で計算や新しい事がなかなか覚えられないなため、心無い同僚からは「与太郎」呼ばわりされている。しかし、一度覚えたことは誤らない、製品の1㎜以下の誤差を見抜くなど超人的な能力を持つため、社長やベテランの高岡からは慕われている。麻雀においては、リーチや点数計算が理解できない、わざと振り込んでトップ確定させるなど戦略的な打ち方ができない、鳴かれてツモ順が変わると混乱するなどの弱点があるものの、独特の感性で他者のテンパイを察してロン牌をかわし、間隙を突いてアガるロンに特化したスタイルで、オーラスには高岡から得点を伝えられ、必要な打点を手作りして直撃する(50符以上のロン上がりの手もすぐにわかる)という弱点を補ってあまりある強みがある。
その技量を聞きつけた取引先の部長に泣きつかれ、代打ちとして高レート麻雀に参加し、同じく負け分回収としての代打ちとして現れた傀と同卓。序盤から傀より直アガリを披露し、しばしば傀を瞠目させている。
連戦途中で傀が目的である負け分の回収を完遂したこともあり、またある事情で彼の弱点を同僚がバラされたことで金銭より麻雀そのものを楽しむ石川の人柄を見抜いた傀に、技量勝負に持ち込まれ、徹底的に同じ戦法で上を行く技量を見せ付けられることで苦手意識を刷り込まれて終了した。
しかしながら、金額だけはほとんどの対戦でトップを取っており(得点計算が出来ない彼に仮にツモによって得点や順位で勝っても石川に敗北感を与えられないため、傀は上記の通り得点を度外視した技術戦を挑んだ)、作中最強クラスの打ち手の一人。
「ぽーい」という擬音とともに、躊躇なく牌を切る仕草が特徴。
山本(やまもと)
須賀のアルバイト先である洋食屋「キッチン山本」のオーナー兼シェフ。ダンゴ鼻と口ひげが特徴。同じ注文でも常連ごとの好みに合わせて調整するなど視野が広い。
麻雀においても自分から前に出ることなく俯瞰でその場の流れを読み、自分から前に出て戦わず結果的に勝ちを収める戦術を取る。
マンション麻雀で友人内藤と共に傀と遭遇し、互角の闘いを繰り広げる。山本の実力を悟った傀から闘牌を通じて内藤を共に潰そうと誘いを受けるが、それを拒み、辛うじて僅かな浮きで終了した。
山本自身は浮いたとはいえ、実は内藤には内緒で二人の収支でトントンにするよう調節して戦っていた。その内藤が大敗したため、合算では勝利とはいえないが山本自身は博打の勝ちより友情を選んだことを誇っていた。
山本がシェフのためか、「点火」「鉄火場」「黒こげ」など火にまつわる台詞が多く飛び交う。
住之江 紀子(すみのえ のりこ)
関西の信用金庫に勤める美人OLで同僚と結婚を控えている。実家は雀荘で塚田が常連だった。親子ほど歳の離れた塚田に想いを寄せていたが、直接口にすることもなく、塚田に死なれてしまったため、その敵討ちとして傀を探しに放浪の旅に出る。
関西特有のスピード麻雀を得意とし、東京の賭場を虱潰しに当たり、ついに傀と遭遇する。手牌の癖を見越したつもりだったが、傀に逆に利用され、また塚田の仇を前に冷静さを失い、敗北した。
後に所持金500万円失ったと紀子から報告された吉井は、それが塚田の生前の負債と同額と知り、その金で塚田を救えなかった彼女自身の贖罪でもあったのだと察し、「あんなイイ女がダメ中年にベタ惚れとは…」と嘆息させた。

麻雀団体

全雀連(ぜんじゃんれん)
安永はじめ、作中に登場するプロ雀士の多くが加盟している組織。単行本8巻で安永と多河が決勝進出を果たしたプロアマ戦では「協賛:全日本麻雀連合会」の文字があり、これが正式名称と思われるが、後に登場した事務局の看板では「全雀連」と略称で銘記されている。
基本的な公式ルールは一発なし裏ドラなしの東南戦。数多くのタイトル戦を年間通して開催しており、中には歴史あるタイトルや他団体との交流戦も含まれる。
古くからの麻雀打ちも多数所属しているが、昨今ではTV局や芸能界との交流も増えたため運営をめぐって理事同士の派閥争いが存在する。マンション麻雀のような鉄火場に出入りする安永のようなタイプは現在では非主流派。
アックスボンバー
元・全雀連の鉈切が退会時に多くの若手プロを引き連れて創設した新団体。主な公式ルールは一発あり裏ドラあり。
東北地方中心に展開する雀荘「曙チェーン」のバックアップを受けており、ローカルTV局番組向けの公開闘牌やイベントなどを行っている。
組織運営そのものは鉈切個人の手腕と曙チェーン会長の好意によるところが大きいため、今後の発展性は未知数。
青龍會(せいりゅうかい)
プロ団体ではなくフリーの麻雀研究会。主宰は全雀連の多河で、兄貴分の安永が世話役兼後見人をつとめる。若手のプロ雀士をはじめ在野のアマチュア、安永旧知の麻雀打ちまでさまざまな人種が出入りしているが、世間一般や全雀連の理事たちには「青龍會=安永一派」と認識されている。
定例会で公式戦の牌譜研究や、闘牌経験に対する意見交換を行い、確率論に基づく聴牌効率打法の追求を目指している。
所属員は総じて若く、傀のような裏麻雀の強者は単なるバカヅキの素人と思っている。しかし実際に傀と戦った幾人かはその強さに挑戦すべく、聴牌効率打法にさらなる磨きをかけている。
『近代麻雀』本誌において、安永と青龍會のメンバーによる何切る問題を討論方式で実施している。主に多河が答え合わせ、潤子は数手先を見据えて手を育て、張がトリッキーな手、須田と藤永は効率だが、セオリーに縛られた須田と弱気な藤永は時に詰めの甘い打牌傾向にある。安永は、締めとオチ要員。

既刊一覧

近代麻雀コミックス
  • 1巻 2000年11月発行 ISBN 978-4-8124-5443-5
  • 2巻 2000年11月発行 ISBN 978-4-8124-5444-2
  • 3巻 2001年3月発行 ISBN 978-4-8124-5491-6
  • 4巻 2001年8月発行 ISBN 978-4-8124-5545-6
  • 5巻 2002年1月発行 ISBN 978-4-8124-5612-5
  • 6巻 2002年6月発行 ISBN 978-4-8124-5664-4
  • 7巻 2002年10月発行 ISBN 978-4-8124-5720-7
  • 8巻 2003年2月発行 ISBN 978-4-8124-5769-6
  • 9巻 2003年6月発行 ISBN 978-4-8124-5815-0
  • 10巻 2003年11月発行 ISBN 978-4-8124-5889-1
  • 11巻 2004年4月発行 ISBN 978-4-8124-5949-2
  • 12巻 2004年7月発行 ISBN 978-4-8124-6002-3
  • 13巻 2004年12月発行 ISBN 978-4-8124-6080-1
  • 14巻 2005年5月発行 ISBN 978-4-8124-6171-6
  • 15巻 2005年10月発行 ISBN 978-4-8124-6250-8
  • 16巻 2006年2月発行 ISBN 978-4-8124-6434-2
  • 17巻 2006年8月発行 ISBN 978-4-8124-6495-3
  • 18巻 2006年12月発行 ISBN 978-4-8124-6537-0
  • 19巻 2007年5月発行 ISBN 978-4-8124-6583-7
  • 20巻 2007年8月発行 ISBN 978-4-8124-6725-1
  • 21巻 2008年3月発行 ISBN 978-4-8124-6808-1
  • 22巻 2008年7月発行 ISBN 978-4-8124-6854-8
  • 23巻 2008年12月発行 ISBN 978-4-8124-7017-6
  • 24巻 2009年4月発行 ISBN 978-4-8124-7080-0
  • 25巻 2009年8月発行 ISBN 978-4-8124-7150-0
  • 26巻 2010年1月発行 ISBN 978-4-8124-7231-6
  • 27巻 2010年6月発行 ISBN 978-4-8124-7286-6
  • 28巻 2010年9月発行 ISBN 978-4-8124-7453-2
  • 29巻 2011年2月発行 ISBN 978-4-8124-7504-1
  • 30巻 2011年6月発行 ISBN 978-4-8124-7610-9
むこうぶち外伝 EZAKI
  • 1巻 2011年2月発行 ISBN 978-4-8124-7505-8
  • 2巻 2012年1月発行 ISBN 978-4-8124-7721-2
レッドドッグ ノガミの秀
  • 1巻 2012年12月発行 ISBN 978-4-8124-8068-7

映画(実写版)

  • むこうぶち 高レート裏麻雀列伝(2007年)
  • むこうぶち2 高レート裏麻雀列伝 鬼の棲む荒野(2007年)
  • むこうぶち3 高レート裏麻雀列伝 裏プロ(2008年)
  • むこうぶち4 高レート裏麻雀列伝 雀荘殺し(2008年)
  • むこうぶち5 高レート裏麻雀列伝 氷の男(2008年)
  • むこうぶち6 高レート裏麻雀列伝 女衒打ち(2009年)
  • むこうぶち7 高レート裏麻雀列伝 筋殺し(2009年)
  • むこうぶち8 高レート裏麻雀列伝 邪眼(2010年)
  • むこうぶち9 高レート裏麻雀列伝 麻将(2012年)
  • むこうぶち10 高レート裏麻雀列伝 裏ドラ(2012年)
主演

監督:片岡修二 製作:山田浩貴

発売元-GPミュージアムソフト→オールインエンタテインメント[3]

ゲーム

2007年に『高レート裏麻雀列伝 むこうぶち 〜御無礼、終了(ラスト)ですね〜』のタイトルでニンテンドーDSプレイステーション2でゲーム化されている。 プレイステーション2版では音声による演出も取り入れられており、傀の声は俳優の風間杜夫、安永の声は玄田哲章が演じている。

脚注・参照

  1. 第1話の水原祐太がタイトル剥奪された第六期牌王位戦に1980年と記載があり、156話に1992年5月13日の新聞が登場し、作中だけでも12年以上の時間の経過が描写されている。(安永との初対決はそれよりさらに数年~数十年前となる)
  2. むこうぶち外伝 EZAKIの回想で名刺が登場している
  3. allcinema 天獅子悦也

外部リンク

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