満月の夕
「満月の夕」(まんげつのゆうべ)は、日本の2つのロック・バンド、ソウル・フラワー・ユニオンの中川敬とヒートウェイヴの山口洋が共作した楽曲である。なお、タイトル「満月の夕」の「夕」は「ゆうべ」とよむ。
作品背景
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の惨状、復興への厳しい現実、それらに向き合おうとする被災地の人々の姿が歌い込まれている(震災当日の夜、満月がのぼっていた)。
関西に活動拠点を置くソウル・フラワー・ユニオンは、ソウル・フラワー・モノノケ・サミットという別動隊バンドで、被災した阪神各地の避難所を数多く訪れ慰問ライブを行っている(1995年だけでそのライブの回数は百回を越えている)。ソウル・フラワー・ユニオンの中川敬とヒートウェイヴの山口洋はかねてより親交が深かった(「盟友関係にあった」といってもよい)。その中川に招かれて被災地を訪れた山口もまた、その惨状を目にして思わず言葉を失ったという。
同年2月10日、被災地の神戸で慰問ライブ活動を開始したソウル・フラワー・モノノケ・サミットの中川が、2月14日、神戸市長田区の南駒栄公園で行ったライブの光景を元に、山口と作った主旋律の一部に乗せて一気に書き上げた。その日の神戸の空には、震災から丸一か月の満月が浮かんでおり、最大余震の到来が噂される中、ライブを観る被災者たちが口々に「満月を見るの、怖いわ」と言っていたのを中川が耳にしたことから、この唄は産まれている。
ヒートウェイヴのヴァージョンは、同年3月にソウル・フラワー・ユニオンの同曲を聴いた山口が、自身の住む東京から見た被災地への思いを「書き足した」もので、中川、山口両者ともに、現場の違い(神戸・東京)により産まれたお互いのヴァージョンを認め合っている。
CD・音源
ソウル・フラワー・ユニオン版
テンプレート:Infobox Single 作詞は中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)、作曲は中川と山口洋(ヒートウェイヴ)の共作である。
1995年10月1日にシングルとしてリリースされた(大工哲弘、山口洋参加)。そのシングル・ヴァージョンの他にも、以下のヴァージョンが発表されている。
- アルバム『エレクトロ・アジール・バップ』(1996年10月)に収録された、梅津和時や大原裕の参加したロング・ヴァージョン。
- ソウル・フラワー・ウィズ・ドーナル・ラニー・バンドのミニ・アルバム『マージナル・ムーン』(1998年7月)に収録されたヴァージョン(なお、このヴァージョンは、中川のソロ・ユニットであるソウルシャリスト・エスケイプのアルバム『ロスト・ホームランド』や、ソウル・フラワー・ユニオンのシングル「青天井のクラウン」にも収録されている)。
- ライブ・アルバム『ハイ・タイド・アンド・ムーンライト・バッシュ』(1999年12月)、前掲『マージナル・ムーン』、チャリティー・オムニバス・アルバム『風ガハランダ唄』(2004年9月)、ベスト・アルバム『ゴースト・ヒッツ 00-06』の初回特典DVD (2006年9月)、マキシ・シングル『寝顔を見せて』(2007年11月)、DVD『ライブ辺野古』(2008年3月)、ライブ・アルバム『エグザイル・オン・メイン・ビーチ』(2009年9月)には、ソウル・フラワーの様々なこの曲のライブ・ヴァージョンが収録されている。
- 2008年3月19日にリリースされた2枚組シングル集『満月の夕〜90's シングルズ』には、新たに発掘された震災最初期録音のデモ・ヴァージョンに、上記の内の3ヴァージョンを加えた、計4ヴァージョンの「満月の夕」が収録されている。
- 2011年6月22日にリリースされた中川敬のソロ・アルバム『街道筋の着地しないブルース』には、新録アコースティック・ヴァージョンが収録されている。
ヒートウェイヴ版や他アーティストのヴァージョンと明らかに異なるのは、三線のサウンドとチンドン太鼓のリズムを中心に据え、鎮魂や祈りよりも「泣き笑い」が(結果的に)立ち上る演奏になる点である。ライブ会場ではエンディングが大合唱になる。
ヒートウェイヴ版
テンプレート:Infobox Single 作詞・作曲は、山口洋と中川敬の共作となっている。上記の理由により歌詞はソウル・フラワー・ユニオン版と異なる。
元々はふたりでAメロなどを書いていたが、「続きはまた」と約束している内に中川から「書き上げた(中略)もう神戸で歌っているで」と連絡が入り、フライングする形でソウル・フラワー・ユニオン版が完成したという。山口は後年、「(被災地での活動を続けるうちに)きっと書き上げずにはいられなかったのだろう」と振り返っている。
ヒートウェイヴ版は、彼らの5thアルバム『1995』(1995年8月)に収録されている(同アルバムからシングルカットされた「BRAND NEW DAY/WAY」のカップリング曲としても発売された)。また、のちに発表されたベストアルバム『LONG LONG WAY -1990-2001-』(2001年6月)にも収録されている。
ソウル・フラワー・ユニオン版よりもテンポがスローで、ロック・バラードの趣がより強い。CD音源でも7分を超える大作である。演奏にはソウル・フラワー・ユニオンの中川が三線と囃子で、伊丹英子が三板と囃子で、それぞれ参加している。
カバーしたアーティスト
2つのバンドの活動によってこの曲は広く知られるようになったが、後に以下のとおり、複数のアーティストによって、同曲のカバー・ヴァージョンが発表された。歌われる歌詞は、アーティストにより、ソウル・フラワー・ユニオン版、ヒートウェイヴ版、そして両方の混在版がそれぞれ選択されている。
- ガガガSP - メンバー全員が神戸出身。マキシ・シングルとして2003年1月に発表。オリコン・シングル・チャート11位を記録した。満月の夕 (ガガガSPの曲) を参照。
- 酒井俊 - 女性ジャズ・ボーカリストによるソウルフルなスタイル。マキシ・シングルとして2003年1月に発表。
- 平安隆 - 元チャンプルーズのギタリストによるウチナーグチ・ヴァージョン。マキシ・シングルとして2003年3月に発表。
- 沢知恵 - マキシ・シングル「死んだ男の残したものは」のカップリング曲として併録されている。2003年7月発表。
- リクオ - ライブでカバー。
- うつみようこ - ライブでカバー。
- 野田淳子 - アルバム『心歌 こころうた』に収録。
- J-Min - カバー・ミニ・アルバム「The Singer」に収録。
- 大竹しのぶ - ライブでカバー。
- アン・サリー - ライブでカバー。
- ET-KING - アルバム『応援歌集』に収録。
- 八木啓代 - ライブでカバー。
- ヒサシ the KID (THE BEACHES) - ライブでカバー。
- 二階堂和美 - ライブでカバー。
- TOSHI-LOW (BRAHMAN) - ライブでカバー。
- 大森洋平 - ライブでカバー。
- i GO 茜谷有紀 - ライブでカバー。
- 大島花子 - ライブでカバー。