ラザフォード散乱

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ファイル:Geiger-Marsden experiment expectation and result (Japanese).svg
ラザフォード散乱の意義 従来の原子モデル(上)ではぼんやりと分布する正電荷の中に電子が分布していると考えられた。もし原子がこのモデル通りなら、入射したアルファ粒子は直進するか、わずかに方向が変化するだけであるはずだ。しかしながら、ラザフォードの実験によると、約8000個のアルファ粒子のうち1つの軌道が90度以上それる後方散乱であった(下)。この実験によって、原子内の正電荷がごく小さい領域に集中している、つまり原子核が存在すると推論できた(ラザフォードの原子モデル)。ラザフォードは計算によって核の寸法が10-14mであることも導いた。これは原子の寸法の約1万分の1に相当する。

ラザフォード散乱(ラザフォードさんらん、テンプレート:Lang-en-short)は荷電粒子同士が衝突するとき、クーロン力によって散乱されることを指す。クーロン散乱とも言う。

1911年アーネスト・ラザフォードの助手であったハンス・ガイガーと学生だったアーネスト・マースデンは、の薄い箔にアルファ線(正電荷を持ったヘリウム原子核)を当てる実験を行った(ガイガー=マースデンの実験、この実験は「ラザフォードの実験」と呼ばれることもあるが、実際にはラザフォードは実験を行っていない[1])。その結果、アルファ線の大部分は金箔を透過するが、一部が大きな角度で散乱される現象を見いだした。

ここから原子の内部に正電荷の原子核が存在することが明らかにされた。アルファ線が金の原子と衝突する場合、大部分は原子核から離れたところを通過するので散乱角は小さくなる。しかしごく一部は原子核のすぐ近傍を通過する、衝突径数の非常に小さな衝突となる。この時、正電荷同士の強い電気的斥力が働いて軌道が大きく曲げられる。

当時、原子モデルジョゼフ・ジョン・トムソンブドウパンモデル(もやもやと分布する正電荷のなかに、プラムのように電子が配置しているモデル)が主流であり、長岡半太郎土星型モデル(正電荷を持つ原子核の周りを電子が回るモデル)の支持者はあまりいなかった。しかしブドウパンモデルではこの実験結果を説明できず、ラザフォードは土星型モデルに近い惑星モデルを提唱した。

陽子同士の衝突について、同種粒子の効果とクーロン力だけを考えたものをモット散乱という。

脚注

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関連項目


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  1. http://ci.nii.ac.jp/naid/110002058231/