(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
テンプレート:出典の明記
曖昧さ回避
|
この項目では、縦横15マス、駒数130枚の将棋について説明しています。二中歴に記載されている大将棋については「平安大将棋」をご覧ください。
|
大将棋(だいしょうぎ)は、将棋の一種であり、二人で行うボードゲーム(盤上遊戯)の一種である。成立は中将棋よりも古く、あまりに大規模なため実際に指されていたかに疑いも持たれていたが、鎌倉時代には普及していたことが明らかになり、「鎌倉大将棋」という名称が提案されている[1]。
ルール
基本ルール
- 縦横15マスずつに区切られた将棋盤の上で行う。
- 自分から見て手前の五段を自陣、反対に相手から見て五段を敵陣という。
- 駒は、中将棋の21種類に鉄将・石将・桂馬・悪狼・嗔猪・猫刄・猛牛・飛龍を加えた29種類あり、それぞれ動きが決まっている。
- その他のルールはほぼ中将棋に準ずると思われる。
初期配置図
香車 |
桂馬 |
石将 |
鉄将 |
銅将 |
銀将 |
金将 |
玉将 |
金将 |
銀将 |
銅将 |
鉄将 |
石将 |
桂馬 |
香車
|
反車 |
|
猫刄 |
|
猛豹 |
|
盲虎 |
醉象 |
盲虎 |
|
猛豹 |
|
猫刄 |
|
反車
|
|
猛牛 |
|
嗔猪 |
|
悪狼 |
鳳凰 |
獅子 |
麒麟 |
悪狼 |
|
嗔猪 |
|
猛牛 |
|
飛車 |
飛龍 |
横行 |
竪行 |
角行 |
龍馬 |
龍王 |
奔王 |
龍王 |
龍馬 |
角行 |
竪行 |
横行 |
飛龍 |
飛車
|
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵
|
|
|
|
|
仲人 |
|
|
|
|
|
仲人 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
仲人 |
|
|
|
|
|
仲人 |
|
|
|
|
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵 |
歩兵
|
飛車 |
飛龍 |
横行 |
竪行 |
角行 |
龍馬 |
龍王 |
奔王 |
龍王 |
龍馬 |
角行 |
竪行 |
横行 |
飛龍 |
飛車
|
|
猛牛 |
|
嗔猪 |
|
悪狼 |
麒麟 |
獅子 |
鳳凰 |
悪狼 |
|
嗔猪 |
|
猛牛 |
|
反車 |
|
猫刄 |
|
猛豹 |
|
盲虎 |
醉象 |
盲虎 |
|
猛豹 |
|
猫刄 |
|
反車
|
香車 |
桂馬 |
石将 |
鉄将 |
銅将 |
銀将 |
金将 |
王将 |
金将 |
銀将 |
銅将 |
鉄将 |
石将 |
桂馬 |
香車
|
駒の動き
駒の動きに関して、便宜上○、☆と書く。
- ○はその位置に動ける。
- ☆はその場所まで飛び越えていける。
駒の表記は1文字表記を行うため、便宜上「龍王」を「竜」、「飛龍」を「龍」、「飛牛」を「丑」、「猛牛」を「牛」と表記している。
元の駒
|
動き
|
成駒
|
動き
|
玉将(ぎょくしょう) 王将(おうしょう)
|
|
全方向に1マス動ける。
|
-
|
-
|
-
|
金将(きんしょう)
|
|
縦横と斜め前に1マス動ける。
|
飛車(ひしゃ)
|
|
飛車を参照。
|
銀将(ぎんしょう)
|
|
前と斜めに1マス動ける。
|
竪行(しゅぎょう)
|
|
竪行を参照。
|
銅将(どうしょう)
|
|
縦と斜め前に1マス動ける。
|
横行(おうぎょう)
|
|
横行を参照。
|
猛豹(もうひょう)
|
|
縦と斜めに1マス動ける。
|
角行(かくぎょう)(小角(ちょろかく)ともいう)
|
|
角行を参照。
|
香車(きょうしゃ)
|
|
前方に何マスでも動ける。飛び越えては行けない。
|
白駒(はくく、はっく)
|
|
前後と斜め前に何マスでも動ける。飛び越えては行けない。
|
反車(へんしゃ)
|
|
前後に何マスでも動ける。飛び越えては行けない。
|
鯨鯢(けいげい)
|
|
縦と斜め後ろに何マスでも動ける。飛び越えては行けない。
|
盲虎(もうこ)
|
|
前以外の方向に1マス動ける。
|
飛鹿(ひろく)
|
|
縦にどこまでも動け、それ以外の方向に1マス動ける。
|
麒麟(きりん)
|
|
斜めに1マス動け、縦横に2目先に飛び越えて移動できる。
|
獅子(しし)
|
□
|
□
|
□
|
□
|
□
|
□
|
■
|
■
|
■
|
□
|
□
|
■
|
獅
|
■
|
□
|
□
|
■
|
■
|
■
|
□
|
□
|
□
|
□
|
□
|
□
|
|
獅子を参照。
|
鳳凰(ほうおう)
|
|
縦横に1マス動け、斜めに2マス先に飛び越えて移動できる。
|
奔王(ほんおう、ほんのう)
|
\
|
|
│
|
|
/
|
|
\
|
│
|
/
|
|
─
|
─
|
奔
|
─
|
─
|
|
/
|
│
|
\
|
|
/
|
|
│
|
|
\
|
|
奔王を参照。
|
歩兵(ふひょう)
|
|
前に1マス動ける。
|
と金(ときん)
|
|
金将を参照。
|
仲人(ちゅうにん)
|
|
縦に1マス動ける。
|
醉象(すいぞう)
|
|
醉象を参照。
|
角行(かくぎょう)
|
|
斜めに何マスでも動ける。飛び越えては行けない。
|
龍馬(りゅうめ)
|
\
|
|
|
|
/
|
|
\
|
○
|
/
|
|
|
○
|
馬
|
○
|
|
|
/
|
○
|
\
|
|
/
|
|
|
|
\
|
|
龍馬を参照。
|
飛車(ひしゃ)
|
|
縦横に何マスでも動ける。飛び越えては行けない。
|
龍王(りゅうおう)
|
|
|
│
|
|
|
|
○
|
│
|
○
|
|
─
|
─
|
竜
|
─
|
─
|
|
○
|
│
|
○
|
|
|
|
│
|
|
|
|
龍王を参照。
|
醉象(すいぞう)
|
|
後方以外の方向に1マス動ける。
|
太子(たいし)
|
|
玉将と同じ。太子が存在するときは玉将を取られてもゲームを続行できる。
|
横行(おうぎょう)
|
|
横に何マスでも動け、縦には1マス動ける。飛び越えては行けない。
|
奔猪(ほんちょ)
|
\
|
|
|
|
/
|
|
\
|
|
/
|
|
─
|
─
|
猪
|
─
|
─
|
|
/
|
|
\
|
|
/
|
|
|
|
\
|
|
横と斜めに何マスでも動ける。飛び越えては行けない。
|
竪行(しゅぎょう)
|
|
縦に何マスでも動け、横には1マス動ける。飛び越えては行けない。
|
飛牛(ひぎゅう)
|
\
|
|
│
|
|
/
|
|
\
|
│
|
/
|
|
|
|
丑
|
|
|
|
/
|
│
|
\
|
|
/
|
|
│
|
|
\
|
|
縦と斜めに何マスでも動ける。飛び越えては行けない。
|
龍馬(りゅうめ)
|
\
|
|
|
|
/
|
|
\
|
○
|
/
|
|
|
○
|
馬
|
○
|
|
|
/
|
○
|
\
|
|
/
|
|
|
|
\
|
|
斜めに何マスでも動け、それ以外の方向には1マス動ける。飛び越えては行けない。
|
角鷹(かくおう)
|
\
|
|
□
|
|
/
|
|
\
|
■
|
/
|
|
─
|
─
|
鷹
|
─
|
─
|
|
/
|
│
|
\
|
|
/
|
|
│
|
|
\
|
|
横と後方と斜めに何マスでも動ける。この時飛び越えては行けない。■に1マス進んだ後に元いたマスに戻るか奥の□に行くか選択できる。
|
龍王(りゅうおう)
|
|
|
│
|
|
|
|
○
|
│
|
○
|
|
─
|
─
|
竜
|
─
|
─
|
|
○
|
│
|
○
|
|
|
|
│
|
|
|
|
縦横に何マスでも動け、それ以外の方向には1マス動ける。飛び越えては行けない。
|
飛鷲(ひじゅう)
|
□
|
|
│
|
|
□
|
|
■
|
│
|
■
|
|
─
|
─
|
鷲
|
─
|
─
|
|
/
|
│
|
\
|
|
/
|
|
│
|
|
\
|
|
縦横と斜め後ろ何マスまでも動ける。この時飛び越えては行けない。どちらかの■に1マス進んだ後に元いたマスに戻るか奥の□に行くか選択できる。
|
奔王(ほんおう、ほんのう)
|
\
|
|
│
|
|
/
|
|
\
|
│
|
/
|
|
─
|
─
|
奔
|
─
|
─
|
|
/
|
│
|
\
|
|
/
|
|
│
|
|
\
|
|
縦横と斜めに何マスでも動ける。飛び越えては行けない。
|
-
|
-
|
-
|
獅子(しし)
|
□
|
□
|
□
|
□
|
□
|
□
|
■
|
■
|
■
|
□
|
□
|
■
|
獅
|
■
|
□
|
□
|
■
|
■
|
■
|
□
|
□
|
□
|
□
|
□
|
□
|
|
■に1マス進んだ後に元いたマスに戻るか隣接する□又は■に行くか選択できる。
|
-
|
-
|
-
|
鉄将(てつしょう)
|
|
前方3方に1マスだけ動ける。
|
金将(きんしょう)
|
|
金将を参照。
|
石将(せきしょう)
|
|
斜め前方に1マスだけ動ける。
|
桂馬(けいま)
|
|
前へ2、横へ1の位置に移動できる。 その際、駒を飛び越えることができる。
|
悪狼(あくろう)
|
|
前方と真横に1マスだけ動ける。
|
嗔猪(しんちょ)
|
|
前後と真横の4方に1マスだけ動ける。
|
猫刄(みょうじん)(猫叉(ねこまた))
|
|
斜め4方に1マスだけ動ける。
|
猛牛(もうぎゅう)
|
|
前後と真横に2マスまで動ける。 2マス目に動くときは飛び越えては行けない。
|
飛龍(ひりゅう)
|
|
斜め四方に2マスまで動ける。 2マス目に動くときは飛び越えては行けない。
|
中将棋との関係
中将棋は大将棋から派生した物だが、中将棋と比較すると、いかにも中将棋に駒を適当に加えて拡張しただけという印象は否めないところであるが、それにはこうした事情がある。
水無瀬兼成が記した象戯図によると醉象→太子、麒麟→獅子、鳳凰→奔王の3駒のみが成りを持ち、その他の駒は成りを持たなかったとされる。(このほか、以上の3駒以外については、獅子・奔王・龍王・龍馬など、金将に成ってしまうとデメリットしかない駒は成りを持たず、その他の全ての駒は金将に成ったという説もある)このことから、大将棋の駒を減らして、その減った戦力を補うために多くの駒に成りを加えることによって生まれたのが中将棋であると考えられる。
その後、中将棋が盛んとなり、中将棋の認知度が大きくなるにつれて中将棋の成りが大将棋に逆輸入された。しかし、大将棋にあって中将棋になかった駒には元々成りはなかったのであるから、仕方なくそれらは成り先としてポピュラーな金将を当てることにしたのであろう。
こうして、本来先輩であるはずの大将棋が、中将棋に金になるだけの駒を適当に加えた手抜き拡張のようになってしまった。
駒が多く、1局を指すのに時間がかかりすぎたため、南北朝の動乱の時期には廃れてしまったものと考えられている。
歴史
本項で示す形の大将棋が文献に最初に現れるのは、1297年-1304年にかけて書かれたとされる「普通唱導集」とされる[2]。ここには大将棋指しに対しての死後の追悼文に、
- 大将基 伏惟 々々々々
- 反車香車之破耳 退飛車而取勝
- 仲人嗔猪之合腹 昇桂馬而支得
という表現が見られる[3]。この表現は130枚制大将棋の初期配置や駒の動きと矛盾せず、13世紀には大将棋があったものと強く推測される。
また、出土資料では、鶴岡八幡宮の鎌倉時代の出土品に「鳳凰」(裏が「奔王」)と書かれた駒が含まれている[4]。
脚注
テンプレート:脚注ヘルプ
- ↑ 尾本恵市(編)「日本文化としての将棋」三元社(2002/12) p151 佐伯真一"平安から室町のさまざまな将棋"
- ↑ 「遊戯史研究」5号、佐伯真一「「普通唱導集」の将棋関係記事について」、1993年。
- ↑ 村山修一編『普通唱導集』(法藏館、2006/05出版、ISBN 9784831875587)45ページ。
- ↑ 天童市将棋資料館『天童の将棋駒と全国遺跡出土駒』(2003年)、40ページ。
関連項目
参考資料
- 『象戯図式』江戸時代に発刊された古将棋の解説書
- 『ものと人間の文化史23 将棋』増川宏一・法政大学出版局・1977年・ISBN 4588202316(象戯図式の解説図が収録されている)
外部リンク
テンプレート:将棋類
テンプレート:大将棋の駒