渥美郡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2013年3月10日 (日) 14:30時点におけるAddbot (トーク)による版 (ボット: 言語間リンク 2 件をウィキデータ上の d:q482062 に転記)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先: 案内検索

テンプレート:Pathnav

渥美郡(あつみのこおり)は三河国の郡。7世紀後半の評制度化では、飽海評(渥美郡)と呼ばれた。

郡名は安曇連(あづみのむらじ)に由来すると伝えられている。伊勢国に近いため伊勢神宮の荘園である御厨・御園が多く存在した。垂仁天皇時代には、国造が三河国渥美郡の神戸を朝廷に寄進している(『太神宮諸雑事記』第一)。また『吾妻鑑』によると、建久10年3月23日1199年4月19日)乙卯に、参河の国飽海本神戸・新神戸・大津神戸・伊良胡御厨が存在している[1]

中世には一色氏が支配したが、応仁の乱後は田原城二連木城を築いて渥美郡の支配力を強める戸田氏に対し、16世紀の初頭からは隣郡の宝飯郡から牧野氏今橋城を築いて戸田氏と争った。度重なる今橋城(吉田城)の争奪戦に西三河松平氏まで絡んでくるが、東から駿河国遠江国を治める今川氏が松平氏・戸田氏・牧野氏をまるごと従えるようになったため、今川氏による支配で落ち着いた時期もある。

室町戦国時代には、奥郡という呼び方もある。文明6年11月1日の如光弟子帳で,「奥郡野田」と見える(上宮寺文書/岡崎市史6)。その他,戦国期から江戸初期の史料では,大津(老津)・神戸・伊良湖・堀切・弥熊などが奥郡の地名として見え,渥美半島一帯が奥郡と称されていたものと推定される。天文20年5月7日の今川義元判物によると「参河国奥郡神戸郷南方名職之事,右如前前公事年貢等令取沙汰,百姓職永可勤之并船二艘事」が本多正忠に宛行われている(摩訶耶寺文書/静岡県史料5)。

江戸期には吉田藩田原藩畑村藩などの変遷を経て廃藩置県を迎えた。

郡の北端(宝飯郡のと境界)を流れる現在の豊川(とよがわ)は、古代は飽海川(あくみがわ)、中世・近世は吉田川と呼ばれた。


テンプレート:Pathnav

渥美郡(あつみぐん)は、愛知県の南東部・渥美半島にあった。現在の豊橋市の大半(豊川朝倉川の南側)と田原市の全域にあたる。

人口21,657人、面積82.18 km²。(2004年最終)

郡区町村編制法郡制施行時、渥美郡役所は豊橋市の現在の豊橋公園内の豊橋市美術博物館の前の辺りに有った。
また、1942年(昭和17年)7月から1955年(昭和30年)11月まで、渥美地方事務所が田原町に置かれた。

2003年平成15年)8月時点では、田原町・赤羽根町渥美町の3町があったが、2003年(平成15年)8月20日に田原町が赤羽根町を編入市制施行して田原市となり、残る渥美町も2005年(平成17年)10月1日に田原市へ編入され、同郡は消滅した。

沿革

  • 1889年明治22年)10月1日 - 町村制施行に伴い、渥美郡に下記の町村が成立する。(1町32村)
    • 旧吉田城下の豊橋船町・豊橋湊町・豊橋上伝馬町・豊橋八町・豊橋関屋町・豊橋本町・豊橋札木町・豊橋呉服町・豊橋曲尺手町・豊橋下モ町・豊橋鍛冶町・豊橋松葉町・豊橋萱町・豊橋花園町・豊橋三浦町・豊橋指笠町・豊橋新銭町・豊橋魚町・豊橋紺屋町・豊橋神明町・豊橋清水町・豊橋手間町・豊橋吉屋町が合併し、豊橋町となる。
    • 豊橋村花田村牟呂(むろ)村赤羽根村高松村和地村中山村高師村磯辺村福岡村大崎村杉山村老津村が成立。
    • 岩崎村・岩田村・東田村・瓦町村・飯村・三ノ輪村が合併し、豊岡村となる。
    • 東豊田村・西豊田村・青野村が合併し、吉田方(よしだがた)村となる。
    • 大岩村・二川村・谷川村が合併し、大川村となる。
    • 上細谷村・下細谷村が合併し、細谷村となる。
    • 小島村・寺沢村・小松原村が合併し、小沢(こざわ)村となる。
    • 田原村・加治村が合併し、田原村となる。
    • 谷熊村・豊島村が合併し、相川村となる。
    • 浦村・吉胡村・波瀬村・片浜村・白谷村が合併し、童浦(どうほ)村となる。
    • 若見村・越戸村が合併し、若戸村となる。
    • 伊良湖村・日出村・堀切村・小塩津村が合併し、伊良湖村となる。
    • 畠村・向山村・亀山村・保美が合併し、福江村となる。
    • 古田村・山田村・高木村が合併し、清田村となる。
    • 植田村・野依村が合併し、植野村となる。
    • 高塚村・七根村が合併し、高根村となる。
    • 豊南村・伊古部村・赤沢村が合併し、豊南(となみ)村となる。
    • (明治11年頃)百々村・片神戸村・浜田村・久美原村・長仙寺村・数原新田が合併し、六連(むつれ)村となる。
    • 神戸村・西神戸村・東神戸村・南神戸村・大草村が合併し、神戸(かんべ)村となる。
    • 野田村・仁崎村・芦村・大久保村が合併し、野田村となる。
    • 伊川津村・宇津江村・江比間村・八王子村・村松村・馬伏村・石神村が合併し、泉村となる。
  • 1890年(明治23年)11月7日 - 伊良湖村の一部(堀切・小塩津)が分立し、堀切村となる。(1町33村)
  • 1891年(明治24年)
    • 4月15日 - 野田村の一部(大久保)が分立し、大久保村となる。(1町34村)
    • 11月10日 - 植野村が分割され、一部(植田)が植田(うえた)村、残部(野依)が野依(のより)村となる。(1町35村)
  • 1892年(明治25年)10月3日 - 田原村が町制施行し、田原町となる。(2町34村)
  • 1893年(明治26年)6月23日 - 大川村が町制施行し、大川町となる。(3町33村)
  • 1895年(明治28年)1月25日 - 豊橋町・豊橋村が合併し、豊橋町となる。(3町32村)
  • 1896年(明治29年)7月1日 - 大川町の一部(谷川)が分立し、谷川村となる。(3町33村)
  • 1897年(明治30年)2月22日 - 福江村が町制施行し、福江町となる。(4町32村)
  • 1906年(明治39年)
    • 7月1日 - (4町28村)
      • 大川町・谷川村・細谷村・小沢村が合併し、二川町となる。
      • 牟呂村・吉田方村が合併し、牟呂吉田村となる。
    • 7月15日 - 豊橋町・豊岡村・花田村が合併し、豊橋町となる。(4町26村)
    • 7月16日 - (4町17村)
      • 田原町・相川村・童浦村・大久保村が合併し、田原町となる。
      • 赤羽根村・高松村・若戸村が合併し、赤羽根村となる。
      • 福江町・清田村・中山村が合併し、福江町となる。
      • 伊良湖村・堀切村・和地村が合併し、伊良湖岬村となる。
    • 8月1日 - 豊橋町が市制施行、豊橋市となり郡より離脱。(3町17村)
    • 8月31日 - (3町11村)
      • 高師村・福岡村・磯辺村・大崎村・植田村・野依村が合併し、高師村となる。
      • 高根村・豊南村が合併し、高豊村となる。
    • 9月10日 - 杉山村・六連村が合併し、杉山村となる。(3町10村)
  • 1932年昭和7年)9月1日 - 牟呂吉田村・高師村が豊橋市に編入される。(3町8村)
  • 1955年(昭和30年)
    • 1月1日 - 田原町・神戸村・野田村が合併し、田原町となる。(3町6村)
    • 3月1日 - 二川町・高豊村・老津村が豊橋市に編入される。(2町4村)
    • 4月1日 - 杉山村が分割され、一部(杉山)が豊橋市に、残部(六連)が田原町に編入される。(2町3村)
    • 4月15日 - 福江町・伊良湖岬村・泉村が合併し、渥美町となる。(2町1村)
  • 1958年(昭和33年)11月1日 - 赤羽根村が町制施行し、赤羽根町となる。(3町)
  • 2003年平成15年)8月20日 - (1町)
    • 赤羽根町が田原町に編入される。
    • 田原町が市制施行して田原市となり、郡より離脱。
  • 2005年(平成17年)10月1日 - 渥美町が田原市に編入される。同日渥美郡消滅。
明治22年以前 明治22年10月1日 明治22年 - 明治45年 大正1年 - 大正15年 昭和1年 - 昭和64年 平成1年 - 現在 現在



豊橋船町 豊橋町 明治28年1月25日
合併 豊橋町
明治39年7月15日
合併 豊橋町
明治39年8月1日
市制 豊橋市
豊橋市 豊橋市 豊橋市 豊橋市 豊橋市
豊橋湊町
豊橋上伝馬町
豊橋八町
豊橋関屋町
豊橋本町
豊橋札木町
豊橋呉服町
豊橋曲尺手町
豊橋下モ町
豊橋鍛冶町
豊橋松葉町
豊橋萱町
豊橋花園町
豊橋三浦町
豊橋指笠町
豊橋新銭町
豊橋魚町
豊橋紺屋町
豊橋神明町
豊橋清水町
豊橋手間町
豊橋吉屋町
飽海村  
豊橋村
 
豊橋村
 
仁連木
 
東田村 東田村 豊岡村 豊岡村
瓦町村 瓦町村
下岩崎村 岩田村 岩田村
田尻村
平川新田
上岩崎村 岩崎村
手洗村
飯村
三ノ輪村
花ケ崎村 花田村 花田村 花田村
羽田村
高足村 高師村 高師村 高師村 明治39年8月31日
合併 高師村
高師村 昭和7年9月1日
豊橋市に編入
高足新々田
高足原尾先新田
藤並新田
森田新田
芦原新田
橋良村 福岡村 福岡村 福岡村
小浜村
小池村
佐藤村
山田村
小松新田
大崎村 大崎村 大崎村
東植田村 植田村 植野村 明治24年11月10日
分立 植田村
西植田村
津田新田
野依村 野依村 明治24年11月10日
分立 野依村
仏餉村
切反ケ谷村
草間村 磯辺村 磯辺村 磯辺村 磯辺村
向草間村
松井新田
上原新田
上牟呂村 牟呂村 牟呂村 牟呂村 明治39年7月1日
合併 牟呂吉田村
牟呂吉田村
中牟呂村
下牟呂村
松島新田
富田新田
野田村 豊田村 東豊田村 吉田方村 吉田方村
吉川村
三相村
馬見塚村 西豊田村
高須新田
青竹新田 青野村
茅野新田 茅野新田
土倉新田
下野新田
富久縞新田
加藤新田
牧新田
中村新田
大岩村 大川村 明治26年6月23日
町制 大川町
大川町 明治39年7月1日
合併 二川町
二川町 二川町 昭和30年3月1日
豊橋市に編入
二川村 二川村
大脇新田
雲谷村 谷川村 明治29年7月1日
分立 谷川村
原村
中原村
上細谷村 五並村 上細谷村 細谷村 細谷村
下細谷村 下細谷村
小島村 小島村 小沢村 小沢村
小松原村 小松原村
寺沢村 寺沢村
西七根村 七根村 高根村 高根村 明治39年8月31日
合併 高豊村
高豊村 高豊村
東七根村
高塚村 豊南村 高塚村
城下村
赤沢村 豊南村 豊南村 豊南村
万場新田
西伊古部村 伊古部村
東伊古部村
北大津村 老津村 老津村 老津村 老津村 老津村
南大津村
森崎新田
杉山村 杉谷村
(一部)
杉山村 杉山村 杉山村 明治39年9月10日
合併 杉山村
杉山村 杉山村 昭和30年4月1日
豊橋市に編入
神吉新田
百々村 六連村 六連村 六連村 昭和30年4月1日
田原町に編入
平成15年8月20日
市制 田原市
田原市 田原市
片神戸村
浜田村
久美原村
長仙寺村
数原新田
田原村 田原村 明治25年10月3日
町制 田原町
明治39年7月16日
合併 田原町
田原町 昭和30年1月1日
合併 田原町
加治村
谷熊村 杉谷村
(残部)
谷熊村 相川村 相川村
今田村 豊島村
院内村
浦村 童浦村 童浦村
吉胡村
波瀬村
片浜村
白谷村
大久保村 野田村 明治24年4月15日
分立 大久保村
上野田村 野田村 野田村 野田村
下野田村
芦村
仁崎村
青津村 神戸村 神戸村 神戸村 神戸村 神戸村
漆田村
市場村
水川村
赤松村 西神戸村
新美村
志田村
東ケ谷村 東神戸村
谷ノ口村 南神戸村
本前村
大草村
赤羽根村 赤羽根村 赤羽根村 明治39年7月16日
合併 赤羽根村
赤羽根村 赤羽根村 昭和33年11月1日
町制 赤羽根町
平成15年8月20日
田原町に編入
即日市制 田原市
高松村 高松村 高松村
若見村 若戸村 若戸村
越戸村
畠村 福江村 福江村 明治30年2月22日
町制 福江町
明治39年7月16日
合併 福江町
福江町 福江町 昭和30年4月15日
合併 渥美町
渥美町 平成17年10月1日
田原市に編入
向山村
亀山村
保美村
古田村 清田村 清田村
高木村
山田村
中山村 中山村 中山村
伊良湖村 伊良湖村 伊良湖村 明治39年7月16日
合併 伊良湖岬村
伊良湖岬村 伊良湖岬村
日出村
堀切村 堀切村 明治23年11月7日
分立 堀切村
東堀切村
小塩津村
和地村 和地村 和地村
伊川津村 泉村 泉村 泉村 泉村
江比間村
村松村
八王子村
石神村
馬伏村
宇津江村
吉尾曲輪 (詳細不明)
中富士見新田 (詳細不明)
松王新田 (詳細不明)
伊井新田 (詳細不明)

注釈

テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:三河国の郡
  1. 田原市のHPによると、伊良湖の檜垣氏が、渥美半島(渥美郡)の伊勢神宮の神領地を総括していたという。飽海本神戸・新神戸・大津神戸は、田原市役所南部に、神戸という地名がたくさんあることからこの辺りと比定される。伊良胡御厨とは、伊良湖岬のことであろう。