棋譜
棋譜(きふ)とは囲碁・将棋・チェスなどのボードゲームにおいて、互いの対局者が行った手を順番に記入した記録を指す。また同時に、棋譜が記入された用紙(つまり棋譜用紙)を意味する場合もある。
目次
概要
- 正確な棋譜があれば、対局後もゲームの再現が可能となる。具体的な手だけでなく、対局者名・対局日・対局場所・考慮時間・戦型などが書き込まれる場合も多い。
- その役割としては、野球やバレーボールなどのスコアブックに近い。
棋譜の付け方
チェス
公式戦では対局者自らが棋譜を記入する必要があるため、専用の棋譜用紙も販売されている。
概説
チェスの棋譜の付け方には、代数式と記述式の表記法がある。1980年代までは、記述式で書かれた書籍も多数出版されていた。しかし1981年に国際チェス連盟が代数式を採用したので、競技会でも書籍でも現在は代数式が主流になっている。
- 代数式の表記法
- チェスボードの左下のマス(a1)を基点にして、全体のマスを座標式に表記した方法。英語では「Algebraic chess notation」、または「Algebraic (code) notation」と呼ばれている。書籍によっては「国際式」や「座標式」などの日本語訳もあるが、現在では「代数式」の表現が最も多い。
- 記述式の表記法
- 代数ではなく、「QR」「KN」といった初期配置の駒の位置で列(ファイル)を表現する方法。英語では「Descriptive chess notation」、または「Descriptive (code) notation」と呼ばれている。書籍によっては「英米式」[1]などの日本語訳もあるが、現在では「記述式」の表現が最も多い。
(図1)郵便チェス | (図2)電報チェス |
- その他の表記法
- (図1)郵便チェスには、「5254」のように数字のみの表記法がある。
- (図2)電報チェスには、「GEGO」のようにアルファベットのみの表記法もある。
- ※両方とも代数式の「1.e4」を表している。
- 書籍などでは、代数式と記述式以外の表記法はほとんどない。
代数式と記述式
代数式 Algebraic Notation |
記述式 Descriptive Notation | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
手 | 白 | 黒 | 手 | 白 | 黒 | |
1 | e4 | e5 | 1 | P-K4 | P-K4 | |
2 | Nf3 | Nc6 | 2 | N-KB3 | N-QB3 | |
3 | Bb5 | a6 | 3 | B-N5 | P-QR3 | |
4 | Bxc6 | dxc6 | 4 | BxN | QPxB | |
5 | 0-0 | f6 | 5 | 0-0 | P-B3 | |
6 | d4 | exd4 | 6 | P-Q4 | PxP | |
7 | Nxd4 | c5 | 7 | NxP | P-QB4 | |
8 | Nb3 | Qxd1 | 8 | N-N3 | QxQ | |
9 | Rxd1 | Bd7 | 9 | RxQ | B-Q2 | |
10 | Bf4 | 0-0-0 | 10 | B-B4 | 0-0-0 |
- 代数式と記述式の共通点
- 駒の動きは「駒」+「移動させる場所」で表す。
- 相手の駒を取る場合は、「駒」+「x」+「取った駒がいた場所」とする。「x」は敵駒の捕獲を表し、「takes(テイクス)」または「captures(キャプチャーズ)」と読む[2]。
- キング側へのキャスリングは 「0-0」、クイーン側は 「0-0-0」 で表す。
- 白と黒が、それぞれ駒を動かして1手と数える[3]。
- 白と黒の指し手は、通常セットで表記される。(例:「1.e4 e5」)
- 指し手を単独で表記する場合、黒の手には「...」を加える。(例: 白「1.e4」 黒「1...e5」)
- 駒の表記文字が何になるかは、下記の通り国によって異なる。日本では英米式に準拠している。
キング | クイーン | ルーク | ビショップ | ナイト | ポーン | |
---|---|---|---|---|---|---|
英・米 | K | Q | R | B | N | P |
ドイツ | K | D | T | L | S | B |
フランス | R | D | T | F | C | P |
スペイン | R | D | T | A | C | P |
- どこの国にも対応できるように、実際の駒の形を使った表記もある。この方法は「figure notation」と呼ばれている。
キング | クイーン | ルーク | ビショップ | ナイト | ポーン | |
---|---|---|---|---|---|---|
白の駒 | ♔ | ♕ | ♖ | ♗ | ♘ | ♙ |
黒の駒 | ♚ | ♛ | ♜ | ♝ | ♞ | ♟ |
- 例: 「1.Nf3」は「1.♘ f3」となる。
指し手の評価
チェスの指し手の評価には、次の記号が用いられている。
|
|
代数式
- 「代数式」は現在のチェスの標準となっている表記法で、ほとんどの書籍・雑誌・新聞で採用されている。
- 記述式とは異なり、白側から見ても黒側から見ても同じ表記になる。
- FIDE(国際チェス連盟)も、この代数式の表記法を正式に採用している。
白を手前にして、チェスボードの左下のマス(a1)を基点とする。
- 横方向(→)に a、b、c、d、e、f、g、h
- 縦方向(↑)に 1、2、3、4、5、6、7、8
a8 | b8 | c8 | d8 | e8 | f8 | g8 | h8 |
a7 | b7 | c7 | d7 | e7 | f7 | g7 | h7 |
a6 | b6 | c6 | d6 | e6 | f6 | g6 | h6 |
a5 | b5 | c5 | d5 | e5 | f5 | g5 | h5 |
a4 | b4 | c4 | d4 | e4 | f4 | g4 | h4 |
a3 | b3 | c3 | d3 | e3 | f3 | g3 | h3 |
a2 | b2 | c2 | d2 | e2 | f2 | g2 | h2 |
a1 | b1 | c1 | d1 | e1 | f1 | g1 | h1 |
代数式表記法 Algebraic chess Notation | |||
---|---|---|---|
手 | 白 | 黒 | 意 味 |
1 | e4 | e5 | 白はポーンをe4へ移動させた。黒はポーンをe5へ移動させた。代数式はPを省略する。 |
2 | Nf3 | Nc6 | 白はナイトをf3へ、黒はナイトをc6へ移動させた。 |
3 | Bb5 | a6 | 白はビショップをb5に移動させた。黒はポーンをa6に移動させた。 |
4 | Bxc6 | dxc6 | 白はビショップでc6のナイトを取った。そのビショップを黒はdファイルのポーンで取った。 |
5 | 0-0 | f6 | 白はキングサイドにキャスリングを行った。黒はポーンをf6に移動させた。 |
6 | d4 | exd4 | 白はポーンをd4に移動させた。黒はそのポーンをe5のポーンで取った。 |
7 | Nxd4 | c5 | 白はナイトでd4のポーンを取った。黒はポーンをc5に移動させた。 |
8 | Nb3 | Qxd1 | 白はナイトをb3に移動させた。黒はクイーンで白のクイーンを取った。 |
9 | Rxd1 | Bd7 | 白はルークで黒のクイーンを取った。 黒はビショップをd7に移動させた。 |
10 | Bf4 | 0-0-0 | 白はビショップをf4に移動させた。黒はクイーンサイドにキャスリングを行った。 |
曖昧さの回避
- 動ける駒が複数ある場合は、駒の記号の直後に動く前の場所を書く。
- 動く前の場所はファイルまたはランクどちらか一文字で構わない。結果的に2通りの書き方が生じるが、曖昧さが無くなればどちらの書き方でも問題ない。
例えば右図のように、a1とc3にルークがあったとする。現在、白丸の地点へルークを移動させた。しかし「Ra3」と書いてしまうと、どちらのルークを動かしたのか判断できなくなってしまう。そこで、
- c3のルークを動かした場合は、「Rca3」または「R3a3」と表記する。
- a1のルークを動かした場合は、「Raa3」または「R1a3」と表記する。
その他
- アンパッサンは末尾に 「e.p. 」 と記す。 → 例: e5のポーンがd5のポーンを捕獲した場合は 「exd6 e.p. 」
- ポーンのプロモーションは、末尾に昇格した駒を付ける。 → 例: 「b8=Q」または「b8Q」[4]
- チェックは「+」で、チェックメイトは 「#」 で表す。ダブルチェックは「++」となる。
- ゲームの結果の表記は次の通り。 → 白勝ち:1-0、黒勝ち:0-1、引き分け:1/2-1/2
- さらに代数式の表記法には、下記のようなバリエーションもある。一部の書籍などで使われている。
- Abbreviated Algebraic Notation : 省略した形の代数式表記法。「+」や「x」の記号を省略する。
- Long Algebraic Notation[5] : 長くて完全な形の代数式表記法。例えば「1.e4 Nf6」を、「1.e2-e4 Ng8-Nf6」と表現する。
記述式
- 記述式は現在はあまり用いられないが、19世紀からある伝統的な表記方法である。古いチェスの書籍(特に名著)には、記述式で書かれた物が数多く存在している。
- 記述式は代数式よりも、棋譜を付けるのに多くの字数が必要となる。そのためチェス・クロックを使った実戦では、時間切れになりそうな場合に非常に不利となる。
- 記述式では「-」(ハイフン)が用いられるが、これは日本語の「~へ」「~に」(英語の「to」)に相当する。
→ 例:P- K4(ポーンをK4へ移動させた。) - P(ポーン)を省略しない点も、記述式の特徴の一つである。
記述式の列
- ファイル(縦の列)の列名は、左端から次のようになっている。初期配置のチェスボードに合わせてあり、この名を好んで使用するプレイヤーも多い。
- これらは「King's Pawn Opening」や「Queen's Pawn Opening」などの名前の由来にもなっている。
QR | QN | QB | Q | K | KB | KN | KR |
QR | QN | QB | Q | K | KB | KN | KR |
QR | QN | QB | Q | K | KB | KN | KR |
QR | QN | QB | Q | K | KB | KN | KR |
QR | QN | QB | Q | K | KB | KN | KR |
QR | QN | QB | Q | K | KB | KN | KR |
QR | QN | QB | Q | K | KB | KN | KR |
QR | QN | QB | Q | K | KB | KN | KR |
チェスボードの左端から
- QR:クイーン・ルーク
- QN:クイーン・ナイト
- QB:クイーン・ビショップ
- Q:クイーン
- K:キング
- KB:キング・ビショップ
- KN:キング・ナイト
- KR:キング・ルーク
記述式の行
- 記述式の最大の特徴は、白側と黒側で行(ランク)の数字が逆になり、座標が二重化・複雑化する点である。
- 例えば白の「P-K4」と黒の「P-K4」は、ポーンを同じマスに移動させたのではない。それぞれ、代数式の「e4」「e5」にあたる。
- 記述式の棋譜を扱う場合は、白側と黒側とで異なる対応表を使用した方がわかりやすい。
- 白の手前(↑)から 1、2、3、4、5、6、7、8
- 黒の手前(↓)から 1、2、3、4、5、6、7、8
↓ 黒から見た記述式の対応表 ↓ | ||||||||||||||||
QR8 | QN8 | QB8 | Q8 | K8 | KB8 | KN8 | KR8 | QR1 | QN1 | QB1 | Q1 | K1 | KB1 | KN1 | KR1 | |
QR7 | QN7 | QB7 | Q7 | K7 | KB7 | KN7 | KR7 | QR2 | QN2 | QB2 | Q2 | K2 | KB2 | KN2 | KR2 | |
QR6 | QN6 | QB6 | Q6 | K6 | KB6 | KN6 | KR6 | QR3 | QN3 | QB3 | Q3 | K3 | KB3 | KN3 | KR3 | |
QR5 | QN5 | QB5 | Q5 | K5 | KB5 | KN5 | KR5 | QR4 | QN4 | QB4 | Q4 | K4 | KB4 | KN4 | KR4 | |
QR4 | QN4 | QB4 | Q4 | K4 | KB4 | KN4 | KR4 | QR5 | QN5 | QB5 | Q5 | K5 | KB5 | KN5 | KR5 | |
QR3 | QN3 | QB3 | Q3 | K3 | KB3 | KN3 | KR3 | QR6 | QN6 | QB6 | Q6 | K6 | KB6 | KN6 | KR6 | |
QR2 | QN2 | QB2 | Q2 | K2 | KB2 | KN2 | KR2 | QR7 | QN7 | QB7 | Q7 | K7 | KB7 | KN7 | KR7 | |
QR1 | QN1 | QB1 | Q1 | K1 | KB1 | KN1 | KR1 | QR8 | QN8 | QB8 | Q8 | K8 | KB8 | KN8 | KR8 | |
↑ 白から見た記述式の対応表 ↑ |
記述式表記法 Descriptive chess Notation | |||
---|---|---|---|
手 | 白 | 黒 | 意 味 |
1 | P-K4 | P-K4 | 白はポーンをK4へ、黒はポーンをK4へ移動させた。記述式はPを省略しない。 |
2 | N-KB3 | N-QB3 | 白はナイトをKB3へ、黒はナイトをQB3へ移動させた。 |
3 | B-N5 | P-QR3 | 白はビショップをQN5に移動させた[6]。黒はポーンをQR3に移動させた。 |
4 | BxN | QPxB | 白はビショップでナイトを取った。そのビショップを黒はクイーン・ポーンで取った。 |
5 | 0-0 | P-B3 | 白はキングサイドにキャスリングを行った。黒はポーンをKB3に移動させた。 |
6 | P-Q4 | PxP | 白はQ4にポーンを移動させた。黒はそのポーンをポーンで取った。 |
7 | NxP | P-QB4 | 白はナイトでポーンを取った。黒はポーンをQB4に移動させた。 |
8 | N-N3 | QxQ | 白はナイトをQN3に移動させた。黒はクイーンで白のクイーンを取った。 |
9 | RxQ | B-Q2 | 白はルークでクイーンを取った。黒はビショップをQ2に移動させた。 |
10 | B-B4 | 0-0-0 | 白はビショップをKB4に移動させた。黒はクイーンサイドにキャスリングを行った。 |
将棋
テンプレート:Shogi diagram 基本的な考え方はチェスの代数式と同様である。
先手、もしくは下手を下として、盤面を右上を基点として、横を1、2、……、9、縦を一、二、……、九とし、手番と進んだ先、駒を示す。例えば、第一手で先手が角道を開ける手は、「▲7六歩」である。▲は先手、△は後手を示し、印刷物では将棋の駒をかたどったもの(テンプレート:JIS2004フォント(Unicode文字参照2617)=14px、テンプレート:JIS2004フォント(2616)=14px)を使うことが多い。
直前の相手の移動先の駒を取る場合は、移動先でなく「同」を用いる。移動によって成ることができる場合、成った場合は「成」、成らなかった場合は「不成」(「ならず」と読む)を付け加える。字数を減らす、あるいは字数を整えるためなどの理由により「不成」を「生」と表記することもある。
詰将棋においては、特に駒の種類を特定しなくてもよい合駒を「合」と表記することがある(「△2三合」など)。また、「合駒である」ということを強調するため、指し手に「△2三銀合」などと「合」を加えることもある。
上記の表現のみではどの駒を動かしたのか特定できない場合は、さらに以下の文字を付記して区別する。
- 「打」(うち、うつ)
- その位置に盤上の同種の駒が移動できる位置に持ち駒を打った場合、駒の後ろに「打」をつける。右の図で、持ち駒の銀将を7三に打ったときは「▲7三銀打」となるが、7二に打ったときは単に「▲7二銀」でよい。
- 「寄」(よる)「引」(ひく)「上」(あがる)、「右」(みぎ)「左」(ひだり)「直」(すぐ)
- どの駒なのか曖昧な場合は「寄」「引」「上」によって具体的な移動を記述する。それでも判断不可能な場合は「右」「左」「直」で駒の位置を示す。ここでの左右は指した主体から見てのものであり、先手の側からではない。これらが複合する場合もある。右の図で、4二のと金が5一に移動した場合、「▲5一と右上」となる(「右」だけでは4一のと金と区別が付かず、「上」だけでは5二のと金と区別が付かない)。
- 竜と馬も「寄」「引」「上」で移動を、「右」「左」で位置を示すが、「直」は用いない(最大2枚しか盤上にないため)。正式な表記ではないが、「上」の代わりに「行」「入」を用いることもある。右の図で、1三の竜が2四に動いたときは「▲2四竜右」、2二の竜が動いたときは「▲2四竜左」となる(▲2四竜引ではどちらの竜が動いたが判別できない)。
これらが複合することもある。右の図で、8四の銀将を9三に動かし、成らなかったときは「▲9三銀右上不成」となる。
速記する場合は下のような略記法を使うことがある。略記法ではアラビア数字だけを用い、漢数字は用いない。
歩兵 | 香車 | 桂馬 | 銀将 | 金将 | 角行 | 飛車 | 玉将 |
フ、・ | 禾 | 土 | ヨ | 人 | ク | ヒ、乙 | 玉 |
原始筋違い角戦法の出だしの棋譜を例にあげる。
- ▲7六歩 △3四歩 ▲2二角成 △同銀 ▲4五角 △6二銀 ▲3四角 △3二金
囲碁
囲碁の盤面図を印刷した用紙(碁罫紙)に、1手目から終局までの着手点を、1からの数字で順に記録したもの。現在では、記入の際には黒番と白番を別の色(黒と赤など)で書き分けて見やすくし、印刷する場合には黒番の着手を黒丸に白色数字、白番の着手を白丸に黒色数字で表示する。1局の全着手を1枚の盤面図に記載したものを総譜と呼ぶ。解説書や新聞の観戦記などでは見やすくするために数十手毎に複数の図に分割して記載することが多い。石取りなどで石が存在しなくなった箇所に打たれた場合や、コウなどで複数回同じ場所に打たれた場合は、「160は158の下」「159(157)」「159コウトリ(153)」などと盤面図の外に記す。また終局時のダメを詰める過程の着手(黒白どちらがその点に打っても地の増減に影響しない着手)は省略することが多い。
盤面の向きは、先手番の者から見た盤面となるようにするのが通例だが、後手番の者が記録した場合には逆向きになっていることもある。
持ち時間の決まっている公式戦などで、一手打つのにかかった所要時間の記録が必要な場合には、通常の棋譜と同時に所要時間の表を作る。
特に囲碁では棋譜を記録することを採譜と呼ぶ。
記録の義務
管轄する団体によって異なるが、次回の対戦に生かすため棋譜をまとめている者も少なくない。
チェス
公式戦では必ず対局者本人が一手指すごとに、専用の用紙にペンで記録することが義務づけられており、例外は認められていない。ゲーム終了後は棋譜用紙(またはコピー)を大会の主催者へ提出する必要がある。
将棋
アマチュアだけでなくプロ同士の対局でも、対局者自身が棋譜を付ける義務はない。主催者やスポンサーによって公開が予定されている対局では、記録者が用意されるケースがほとんどである。当日に記録者がいない場合は、終了後か後日にまとめて書き留める。
囲碁
日本棋院では、勝者が棋譜を提出することを義務付けている。その他については将棋と同様である。
他
チェッカーやバックギャモンでは棋譜(記録)を付ける義務はない。熱心なプレイヤーが自発的に付ける場合もあるが、ゲーム内容は記録しないのが一般的である。
棋譜と著作権
テンプレート:Amboxテンプレート:DMC 棋譜に著作権があるのか否かについては、過去さまざまな議論が行われており、法律の専門家の中にも著作権ありとする見解[7]があったが、2007年に渋谷達紀による著作権を否定する見解[8]が出されて以来、テンプレート:要出典範囲一方で、ゲームを統括する団体によっては、独自の判断から著作権ありと主張している場合もある。但し、裁判に訴えた事例は無い為、いまだ判例は存在しない。
チェス
「棋譜(score)は単なる事実の記述なので、パブリックドメインとして自由に扱ってよい」という古くからの慣例があり、FIDEと海外の下部組織はこれを踏襲している。しかし、日本のみ日本チェス協会(JCA)はこの伝統を無視し、JCA側に権利があるとし、FIDEと対立している。
高度な棋譜データベースソフトでは、ある対局者が用いたオープニングの種類と頻度、そのオープニングに対して勝率の高いディフェンスなど、特定の条件で検索する機能を有しているものがある。またそれに近いサービスをインターネット上に構築しているサイトも数多くある。また近年では競技会終了後に、公式サイト上に棋譜がまとめて公開されることも多い。
日本国外では将棋や囲碁についても、棋譜は「著作物ではなく記録」というチェスの慣例があるためか、後述のように管轄団体が規約で禁止していてもネット上で棋譜が出回る例もある。
将棋
日本将棋連盟は、過去には法的根拠は無い(棋譜に著作権は無い)とした上で、収入問題に発展しかねないので頒布を控えてほしいとの「お願い」をネットコミュニティに対して行っていた[9]が、最近では、棋譜に著作権ありとして、許諾を得ない掲載や転載を禁じているケースもあり[10]、必ずしもスタンスは一定していない。一時、江戸時代の棋譜に著作権を主張し、物議をかもしたこともある(後に撤回された)。2012年2月現在、ニコニコ動画に於いては現役故人を問わず日本将棋連盟所属棋士の棋譜に著作権を主張し、棋譜を機械的に再生した動画を削除させている。
著作権は別にして、将棋連盟の主な収入が棋譜掲載の権利によることから、棋戦スポンサーである新聞社の優先掲載権に対して一定の配慮を行うというポリシーを取る棋譜掲載サイトも多いが、一方で全く配慮せず自由に掲載するサイトもあり対応はまちまちであり、個人主催の棋譜データベースサイトが多数運営されている。
囲碁
日本棋院・関西棋院は、棋譜に著作権があると主張しており、許諾を得ずに棋譜を公開したり配布したりすることを禁じている。一方で海外ではチェスの慣習から、日本国内棋戦の棋譜が海外サイト経由で出回るという状況となっている。将棋と同様に個人サイトの対応もまちまちであり、データベースサイトに関しても同様である。
コンピュータ上での棋譜保存
Smart Game Format (SGF)の様な共通のファイル形式も存在するが、囲碁を除くと普及度は低い。
チェス
インターネット上に公開されている棋譜は大多数がPGN形式のため、大半のチェス関連ソフトは対応している。
将棋
コンピュータ将棋協会が策定した「CSA形式」以外にも「柿木形式」「PSN形式」など、多数のフォーマットがあるため、ソフトが読めない形式の棋譜ファイルを利用する際は、ファイルコンバータが必要である。
囲碁
SGFが一般的であるが、その他の独自形式も存在する。
注釈
参考文献
- 「Chess Training」 Nigel Povah 著 CADOGAN Chess ISBN 1-85744-170-2
- 「チェスの本」 フランソワ・ル・リヨネ 著 成相恭二 訳 白水社 ISBN 4-560-05603-X
- 「挑戦するチェス」 権田源太郎 著 中央公論事業出版 ISBN 4-89514-159-4
- 「ヒガシ コウヘイのチェス入門 定跡編」 東 公平 著 河出書房新社 ISBN 4-309-26001-2
外部リンク
- チェスの記法の解説 FIDE のサイト。E . Algebraic notation の項目(英語)
- チェスの記法の解説 JCA
- notation website
- 棋譜の表記方法(日本将棋連盟)
- ↑ 以前は英語の方でも、「English Descriptive Notation」と呼ばれていた。
- ↑ 「x」ではなく、「:」(コロン)が使用されることもある。
- ↑ つまりチェスの1手は、将棋や囲碁の2手に相当する。
- ↑ 「=」の記号はドロー・オファーなどに使用されるため、国際チェス連盟(FIDE)では「b8/Q」を標準としている。
- ↑ 「Full Algebraic Notation」とも呼ばれている。
- ↑ 「B-N5」について→「N5」だけだと「QN5」なのか「KN5」なのか紛らわしいが、局面上明確な場合は省略することができる。
- ↑ 加戸守行『著作権法逐条講義・五訂新版』著作権情報センター、2006年
- ↑ 渋谷達紀『知的財産法講義II 第2版 著作権法・意匠法』有斐閣、2007年
- ↑ http://bug.org/ML/shogi/onegai.txt
- ↑ 大和証券杯ネット将棋利用規約http://www.daiwashogi.net/agreement.html