削り節

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削り節(けずりぶし)とは、鰹節カツオサバイワシマグロ等の干し魚を薄く削ったものである。 日本食の調味料の基礎と位置づけられており、出汁の素材として昆布などと共に欠かせないものである。料理の仕上げ(見た目、香りやコクの付加)として最後に振りかけられる場合もある。

概要

かつては鰹節と呼び広く流通していたが、かつお以外を原料とするものまで混じっていたことから、商品としての誤解を避けるため、「削り節」と呼ぶこととなった。

鰹節や削り節はうま味成分のイノシン酸を多量に含有し、和風の調味料として好んで用いられる。ビタミンB群など栄養分を豊富に含む。

また削り節の風味は揮発性であり空気中で急速に失われるので削りたてのものほど風味が高い。風味を大切にするなら毎回使用する分だけ削るのが理想的だが、現在では削り器を持っているような家庭は少なく、工場で削って窒素封入によって酸化や香りの飛散を防いだ包装の鰹節削り節(かつおぶしけずりぶし)や花鰹(はなかつお)、鰹削り節(かつおけずりぶし)などとして購入する家庭が多い。

削り節が普及した結果、鰹節についての古くからの常識が忘れられた時代となり、カビの生えた節が高級品であることを知らない者が世間の多数となった。実際に香りにこだわる場合は、削った物よりも節を購入するのだが、近年では既に削られた密封パック製品が増え、そもそも固形状態の鰹節を見たことが無い者も多い。贈答品として枯節(黴節)を贈られた者が、カビの生えた鰹節の価値を知らず、悪くなったものと勘違いして捨ててしまう事態もしばしば生じている。このため、鰹節メーカーでは注意書きを添付するようになったが、それでも黴節が捨てられてしまうケースは後を絶たないという。そもそも鰹節を削る道具が家庭から消えてしまいつつある。

削り節を加工した食品として、「ふりかけ」がある。削節を佃煮にしたものや醤油であえたものは「おかか」と呼ばれ、握飯の具として使用される。

加工

ファイル:Kezuribushi.jpg
鰹節を削った「かつおぶし削り節」、かつお荒節を削った「かつお削り節」

鰹節などを加工して生産される製品である。

現在では節の状態で売られることは少なく、薄いスライス状に削られたものに窒素を入れ気密パックの状態で小分けした削り節が主流である。カツオを原料とした削り節の小袋(かつおパックという商品名)が家庭で手軽に使える商品として、ヒット商品となった。大正時代に広島県福山市の富士ワ安部商が紙袋で包装して出荷する削り節を考案した。削らなくてもよいので労力が省ける反面、劣化により風味が失われる問題が残された。しかし風味を保つことのできる削り節の研究が続けられ、1969年昭和44年)ににんべんが発売したのが「フレッシュパック」である。包装に3層構造の合成樹脂フイルムを使用するとともに酸素除去のために不活性ガスを充填することで長期間風味を保つことに成功したこの商品は多く売られ、他社からも同様の製品が発売された。様々な需要に応えるため、量などを違えた様々な削り節が市販されている。

かつては、日本の各家庭に「鰹節削り器」があり、使用する直前に鰹節を削っていた。この鰹節削り器は、大工道具のカンナを刃を上向きにして小箱に据え付けたもので、小箱には引き出しがついており、削った鰹節が取り出せるようになっている。削り器の箱の部分は鰹節を保存する機能も持つ。この器械は江戸の小倉氏が考案したもので「小倉式鰹節削り器」という。箱の下の方には留め金が付属していて、調理台に固定できる仕組みになっている。鰹節削り器は土佐で発明されたが、製造方法は門外不出であったため明治時代まで普及しなかったともされている[1]

風味を重視し使う直前に鰹節を削る人がいなくなったわけではない。料理店では「鰹節は、客の顔を見てから削れ」と言われる事もある。

削り方にもいろいろな種類があり、一般的に見られるのは「糸削り」(主にトッピング用)や「厚削り」(主にだし取り用)、「薄削り」(両用)などがある。

お好み焼きたこ焼きや、焼きそば焼きうどんきしめん、一部地域においてのうどんなどの麺類にも花鰹や削り節を食べる直前に乗せることがよく行われる。

その他の用途として、カツオ・サバ・イワシなどの節類が状になった「削り粉」をたこ焼きお好み焼きに振り掛けたり、つけ麺のつゆに入れてコクを出す。出荷用の鰹節を直接粉状にすることは稀で、製作工程上で出た節や廃棄用の物を粉状にして販売することで有効利用していることが多い。静岡市周辺では削り粉と青海苔を混ぜたものを「だし粉」と呼び、振り掛けて食べる地域がある。

かつおぶし削りぶし

鰹節削り節(かつおぶしけずりぶし)は、カビ付けを繰り返した鰹節(枯節・本枯節)を削ったもの。 高級料亭などでは本枯節を使われる事が多い。この「本枯節」は「かつお・かれぶし」で、「かつおぶし削りぶし」の原料。この本枯節を使用したもので、価格は高いが非常にコクがある。

かつお削りぶし

鰹削り節(かつおけずりぶし)は、カビ付けしていない「荒節」を削ったもの。コクが少ないが安価である。 この鰹削り節を出汁に良く使う地域がある。特に大阪など西日本を中心とした所で使用される。「荒節」は一括表示で「かつお・ふし(原産国)」と称され「かつお削りぶし」の原料となる。「花かつお」とも呼ばれる。

いわし削り節

静岡県の一部では、イワシ削り節がよく用いられる。鰹削り節よりはコクがあり、安価なため大量に使用しやすい。

脚注

  1. 食の器の事典(柴田書店)34項

関連項目