白ポスト
白ポストとは、有害図書を投入してくださいと呼びかけている箱である。白く塗られているものがほとんどであり「白ポスト」と呼ばれる場合が多いが、実際には少数ではあるが白以外の色のものもあり、また名称も「有害図書ポスト」「グリーンポスト」となっている物も少数ある[1]。
登場した経緯
白ポストが登場したのは1963年に尼崎市においてドラム缶を白く塗り有害図書を入れるように設置されたのが最初と見られている[2][3]。1950年頃から日本の出版業界では性や暴力・麻薬を扱うものが登場するようになり教育者・青少年の保護者(特に教育委員会やPTAなどの団体)は「性と暴力の商品化」が顕著になっている事に危機感を覚えて「悪書追放運動」を展開、その流れであるとされる[4](なお、「悪書追放運動」はそれ以前にもあったが、先行する運動は思想的背景を持つものが多く、この性や暴力に特化した悪書追放運動とは、やや文脈が異なっていた)。その後、1960年代中に有害図書を家庭に持ち込まない趣旨で、主に白く塗られた箱型の物が全国的に広まり現在にいたる[5]。
概要
白色に塗装されているもの[6][7]、緑に塗装されているもの[8]、独自の意匠をほどこしたもの[9]、黄色塗装、金属地肌など、さまざまなものが存在する。おおむね郵便ポストに似た形をしているが、かたちは地域・設置年代によってさまざまであり、箱型[10]・円筒型[11][12]・異形のもの[13][14]、などがある。
設置主体も地域によって異なる。地域の「少年センター」「青少年センター」などの条例設置組織が設置しているもの[15][16]、教育委員会が設置しているもの[17]、任意団体が設置しているもの[18]、さらに複数の名義が記されていて実質的な設置主体がどこなのかよくわからないもの、などがある。
呼びかけの表記も、各地それぞれまちまちであり、そのことから全国的で統一的な運動ではなく、同時並行的に発生したものであると考えられる。
投入された本は回収され、焼却あるいは古紙として再資源化される。主に1970年代前半から1980年代にかけて設置されているため、「本」「雑誌」と表記されている場合が多いが、青少年に有害な内容を含むVHSビデオテープやDVDをも回収対象としている。
「家庭に持ち帰りたくない…」などの文面でわかるとおり、成人が有害図書を買うことを全て否定しているわけではなく、あくまでも「子供に見せないように」という趣旨であると理解されている(方向性に類似点はあるものの、有害図書撲滅やエロ否定などの風潮ないし運動と足並みをそろえているとは言えない)。
問題点
- 投入された雑誌は古紙として再資源化されるため、リサイクルボックス代わりに一般の雑誌等を投入する者もいる。しかしこの行為は白ポストの設置意義を逸脱しており、「少年雑誌を入れないでください」などの注意書きをしている例もある。さらに、近くにゴミ箱がない場合に白ポストにゴミを投入する者が跡を絶たず、問題化している例もある[19]。
- 神奈川県寒川町の相模線宮山駅前てんとうむし君ポストのように、動線からはずれた場所に置かれているものもある。
注釈
- ↑ 毎日新聞 朝刊宮崎地方版、2006年1月24日 p20、地方面より
- ↑ 読売新聞、東京本社-茨城東版、2009年10月11日朝刊、P23、茨城東地方面から
- ↑ 朝日新聞1966年5月25日「悪書、家へ持ち込まないで」で、山手線巣鴨駅における「白いポスト」の設置が報じられており、この頃には「目新しく、歓迎すべきもの」であったことがわかる。
- ↑ 毎日新聞、東京本社-群馬地方版、2008年2月3日朝刊、P23、地方面から
- ↑ 読売新聞、東京本社-茨城東版、2009年10月11日朝刊、P23、茨城東地方面から
- ↑ 朝日新聞 朝刊 東京地方版、1966年10月1日、p14、東京地方面
- ↑ 白塗装の例 福島県:郡山市/群馬県:渋川市・高崎市/茨城県:土浦市/神奈川県:小田原市、など
- ↑ 朝日新聞 朝刊 大分全県版、2008年4月12日、p31、大分県地方面
- ↑ 独自デザインの例 神奈川県:寒川町、など
- ↑ 角型の例 福島県:郡山市/群馬県:渋川市/埼玉県:加須市/茨城県:土浦市・取手市/神奈川県・小田原市
- ↑ 読売新聞、東京本社-茨城東版、2009年10月11日朝刊、P23、茨城東地方面から
- ↑ 円筒形の例 群馬県:高崎市・大間々町・黒保根村
- ↑ 毎日新聞 朝刊宮崎地方版、2006年1月24日 p20、地方面では埴輪をかたどった有害図書ポストが設置されたことを報道している。
- ↑ 異形のものの例 神奈川県・寒川村(四角いポストの上部を丸めたものでナナホシテントウムシを模している)
- ↑ 毎日新聞朝刊 福島地方版 2006年8月28日 地方面より
- ↑ 大間々警察署(ただし「少年警察協力員」の添え書きあり)、郡山市少年センター、渋川市青少年センター、など
- ↑ 高崎市教育委員会青少年課、土浦市教育委員会、など
- ↑ 加須市青少年健全育成対策協議会、土浦ライオンズクラブ、寒川町青少年環境浄化推進協議会、など
- ↑ 東武鉄道東武宇都宮駅で2005年7月18日に確認された事例[1]、など。