砂漠
砂漠(さばく、沙漠とも)とは、降雨が極端に少なく、砂や岩石の多い土地のこと。 年間降雨量が250mm以下の地域[1]、または降雨量よりも蒸発量の方が多い地域などの定義がある。
植物がほとんど生息せず、水分も少ないため、気温の日較差が激しい。よって農業には適さず、人間の居住が難しい地域(アネクメネ)である。砂漠地は岩石(メサ、ビュート)、礫(れき)、砂、ワジ(涸れ川)、塩湖などで形成され、砂漠地の中で水が得られる希少な場所は人などが生息できるオアシスとなる。
海の砂漠は砂漠ではないが、本項で解説する。
目次
分類
土質による分類
「砂漠」という表記からの連想もあり、一般的には見渡す限り砂地が広がって風紋を織りなしている情景がよく想像されるが、実際には岩原など、地形は多岐にわたる。世界では岩石砂漠、礫砂漠、砂砂漠の順に多い。
成因による分類
砂漠を形成する要因は、以下のように分類される。それぞれについて、分布する緯度に差異が見られる。
- 熱帯砂漠(海岸砂漠)
- 亜熱帯砂漠(中緯度砂漠)
- 温帯砂漠
日本には、伊豆大島の火山地帯などに砂漠と呼ばれる場所はあるものの、砂漠に分類される地域はない。広大な砂礫地である鳥取砂丘は砂漠でみられる地形とよく似ているが、あくまで温帯湿潤気候下で降水量は豊富であり、風で絶えず砂が動くために植物が生えにくいことから生じたものである。
砂漠化
地球上の砂漠は、毎年600万ヘクタールの規模で拡大を続けている[2]。これは、上記のような気候による影響だけではなく人間の活動に伴う要素が大きい。砂漠化によって、
などという深刻な影響がある。こうした砂漠化を進行させる原因は、
などが指摘されている。
一方で、1980年と2000年を比べると、サハラ砂漠とその周辺では、降雨量の増加により緑化が進行しているとされる[3]。
砂の組成
砂漠の砂の組成は砂漠によって異なる。またその組成は、砂漠の成熟度に影響を受ける[4]。砂漠においては昼夜の温度差や氷結によって岩石→礫(れき)→構成鉱物単位に分割され、さらには細粒化する。さらに砂漠環境であっても、化学的な風化作用によって鉱物は溶解する。これら風化作用に対する抵抗性は鉱物によって異なり、かんらん石、輝石、角閃石、Caの多い長石などは風化を受けやすく、Caの少ない長石、石英などは風化を受けにくい。特に石英は抵抗性が高く、成熟した砂漠で最後まで残る鉱物種となる。
成熟した砂漠の例としてはリビア砂漠(石英91.7%)、オーストラリア砂漠(同80~100%)、カラハリ砂漠(95%以上)、ナミブ砂漠の一部などが挙げられる[4]。特にサハラ砂漠の一部であるリビア砂漠には大小の天然ガラスの塊で構成された領域が点在し (リビアングラス)、どのように生成されたのかが謎となっている。
逆にタクラマカン砂漠(36%)などはきわめて未成熟である[4]。
砂漠一覧
アジア
- カヴィール砂漠(イラン)
- カラクム砂漠(トルクメニスタン)
- キジルクム砂漠(ウズベキスタン、カザフスタン)
- グルバンテュンギュト(古爾班通古特)砂漠(中国・新疆維吾爾自治区)
- ゴビ砂漠(モンゴル、中国・内蒙古自治区)
- サルイイシコトラウ砂漠(カザフスタン)
- シリア砂漠(シリア、ヨルダン、イラク、サウジアラビア)
- タール砂漠(インド、パキスタン)
- タクラマカン(塔克拉瑪干)砂漠(中国・新疆維吾爾自治区)
- ダフナー砂漠(サウジアラビア)
- ネゲヴ砂漠(イスラエル、パレスチナ)
- ネフド砂漠(サウジアラビア)
- ハジャラ砂漠(イラク)
- バダインジャラン(巴丹吉林)砂漠(中国・内蒙古自治区)
- ホルチン砂漠(中国・内蒙古自治区):日本から1500kmと最も近くにある砂漠。
- ムウス(毛烏素)砂漠(中国)
- モインクム砂漠(カザフスタン)
- ルート砂漠(イラン)
- ルブアルハリ砂漠(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーン、イエメン)
- レギスタン砂漠(アフガニスタン)
アメリカ州
- アタカマ砂漠(チリ)
- グレートサンディ砂漠(アメリカ合衆国)
- グレートソルトレーク砂漠(アメリカ合衆国ユタ州)
- コロラド砂漠(アメリカ合衆国、メキシコ)
- ソノラ砂漠(アメリカ合衆国、メキシコ)
- ブラックロック砂漠(アメリカ合衆国ネバダ州)
- ペインテッド砂漠(アメリカ合衆国)
- モハーヴェ砂漠(アメリカ合衆国カリフォルニア州)
アフリカ
- カラハリ砂漠(ボツワナ、ナミビア、南アフリカ共和国)
- サハラ砂漠(エジプト、リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、西サハラ、モーリタニア、マリ、ニジェール、チャド、スーダン)
- ナミブ砂漠(ナミビア)
- ニーリ砂漠(ケニア)
- ヌビア砂漠(スーダン)
- リビア砂漠(リビア、エジプト)
- シャルキーヤ砂漠(エジプト)
- ガルビーヤ砂漠(エジプト)
- ワラーヌ砂漠(モーリタニア)
- ビルマ砂漠(ニジェール、チャド)
- オリエンタル砂漠(アルジェリア、チュニジア)
オセアニア
- カウ砂漠(アメリカ合衆国ハワイ州)
- ギブソン砂漠(オーストラリア・ウェスタンオーストラリア州)
- グレートサンディ砂漠(オーストラリア・ウェスタンオーストラリア州)
- グレートビクトリア砂漠(オーストラリア・ウェスタンオーストラリア州、サウスオーストラリア州)
- シンプソン砂漠(オーストラリア・北部準州、サウスオーストラリア州、クイーンズランド州)
- タナミ砂漠(オーストラリア)
- スタート砂漠(オーストラリア・サウスオーストラリア州、クイーンズランド州)
表記
当用漢字制定前は「沙漠」という表記が使用されていたが、「沙」が当用漢字から外れたために「砂」を用いた「砂漠」という表記が使用されるようになった。なお、「沙」も「砂」も「すな」という意味を持つ漢字であり、むしろ「漠」という字が、水がないという意味である。
学術用語としては“desert”に対して「砂漠」という訳語が当てられる。このため、学術用語の「砂漠」はすなじ(砂地/沙地)だけを指すものではないことは既述のとおり。中国語では沙漠(砂漠)・砾漠(礫漠)・岩漠・泥漠・盐漠(塩漠)等の総称として「荒漠」を用いることがある。
砂漠は無か?
素朴には、砂漠は何も無い地域だという誤解もあるが、そうではない。砂漠にも人が生活している場所もある。砂漠には固有の生態系がある。砂漠の砂が風によって海に運ばれることで、海洋生態系にとって重要な栄養素の供給源ともなる。また、シロッコとしてサハラ砂漠の熱は南ヨーロッパに運ばれ、緯度の割に温暖な気候をもたらしている。
海の砂漠
珊瑚環礁などにおいて違法な漁法として使用される青酸化合物などの毒物や爆薬の影響により珊瑚が死滅し、海底に瓦礫のように珊瑚の死骸が広がっている現象を海の砂漠化と呼称する。東南アジアなどの珊瑚環礁において特に顕著である。