レンジファインダーカメラ

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レンジファインダーカメラとは、光学視差式距離計が組み込まれており、距離測定に連動して撮影用レンズの焦点を合わせられるカメラのことである。

構造

レンズの繰り出し量などを測定することで合焦装置と光学距離計を連動させ、スプリットイメージや二重像の重ね合わせによりピント合わせを行う。一眼レフカメラよりコンパクトでありながらきちんとピント合わせができるため、未だに愛用者が多い。一部オートフォーカスカメラでもこの機構を自動化したものがある。

特徴

利点としては本体を一眼レフカメラよりコンパクトにできること、一眼レフカメラのようなミラーボックスを持たないのでフィルム面直前にまで後玉が突き出したような設計のレンズも使用可能でレンズ設計の自由度が高いことが挙げられる。またミラーが存在しないのでシャッター時のショックや音が小さい傾向にあるため、カメラぶれを軽減することができ、またスナップ写真において好都合とされる。

欠点としてはレンズとファインダーの光学系が分かれているため撮影範囲を確認するにはレンズの焦点距離に見合ったビューファインダーを用意する必要があること、パララックスを完全には補正できないこと、撮影用レンズとファインダーのどちらかの調整が狂っても気付きにくく素早く対応できないこと、またピント合わせ方式の都合上最短撮影距離がある程度長くなることが挙げられる。接写用アタッチメントを用意することで近接撮影を可能にしたレンズも存在するが、超近接撮影に関してはレンジファインダーカメラでは対応できない。 後には複数の枠(フレーム)がファインダーに内蔵されるようになったが、枠が内蔵されていない焦点距離については外付けファインダーが必要になり、またその場合は距離計とファインダーが別になってしまうので迅速な撮影が不可能になる。

また距離計の基線長がカメラの大きさによって制限されるため、望遠レンズ装着時のピント精度に限界が生じる。一部メーカーではレンズとカメラの間に後付け装着して一眼レフカメラ化するアタッチメント(レフボックス)を用意しており、これを使用することにより望遠レンズでの確実なピント合わせが可能になるが、この場合利点であったコンパクトさは全く失われ、元々一眼レフカメラである製品と比較して自動化も限界がある。

一方標準~広角レンズにおいては、一眼レフカメラの測距精度が焦点距離の長さに左右される[1]のに対し、どのようなレンズをつけてもピント精度とは無関係のレンジファインダーカメラの方が光学的にはピント精度が高くなるために有利であるものの、レンジファインダーカメラは距離計との機械的連結が必要となり、その機械的精度を考慮すると一眼レフカメラに対する絶対的優位性は打ち消されるとの考え方もある。

またレンズのフォーカシングと連動しない単体距離計を内蔵しただけのカメラは、通常レンジファインダーカメラに含まれない。

連動距離計の機構

二眼式レンジファインダーと一眼式レンジファインダー

カメラの距離計においては、フレーミング用のファインダーと測距用のレンジファインダーがともに必要になり、その二つの配置の違いで一眼式と二眼式に分かれている。用語が似ている一眼レフカメラ二眼レフカメラとは関係ない。

ここでは連動距離計に関する記事のみ記載する。 テンプレート:Main2

二眼式レンジファインダー

ファイル:Leica-III-p1030030.jpg
ライカIII - フレーミング用の四角いファインダー窓1つと丸い測距用窓2つを持つ

フレーミング用のファインダーと測距用のレンジファインダーが別窓になっているもので、初期のレンジファインダーカメラでは標準的に装備されていた。

フレーミング用のビューファインダーと測距用のレンジファインダーの倍率をそれぞれ異なったものにできるため、レンジファインダー側の倍率を上げて高い測距精度を実現することができるが、フォーカシングとフレーミングが別操作になるため速写性は一眼式より劣る。 テンプレート:-

一眼式レンジファインダー

ファイル:Rangefinder-Singleview.jpg
キヤノンP - フレーミングと測距兼用の四角いファインダー窓1つと、丸い測距用窓1つを持つ

フレーミング用のビューファインダーの中に測距用のレンジファインダーが組み込まれており、測距とフレーミングが同時にできるためすばやく撮影することができる。コンタックスII型を嚆矢とし、以来高級機・普及機を問わず今日まで広く普及した方式である。

しかし通常ファインダーの倍率は最大1倍[2]であるため、有効基線長は実際の基線長以上にはできず、測距精度に制限が出るという欠点がある。

通常はフレーミング用のファインダーの中央部にレンジファインダー二重像が組み込まれているが、アグファ・カラート36のようにファインダー全体が距離計になっているものや、コダック・メダリストのようにファインダー下方に二重像があるものも存在する。

虚像式と実像式

一眼式レンジファインダーにおいては、ファインダー内に距離計二重像を投影する方式も虚像式と実像式に分けられる[3]

虚像式

ファイル:Rangefinder-Virtual-image.gif
虚像式レンジファインダー - 二重像の境界がぼやけている

ファインダー内のビームスプリッターで距離計二重像をファインダー内に直接投影する方法。部品数が少ないためコストが抑えられ、調整も簡単で済む。距離計に映る像と二重像自体の境界は別の場所に結像するため、距離計二重像の境界ははっきりと見えない。しかし通常の使用には問題がなく、多くのカメラがこの方式を採用している。 テンプレート:-

実像式

ファイル:Rangefinder-Real-image.gif
実像式レンジファインダー - 二重像の境界がはっきりと見える

多くのプリズムやレンズを使用して、フレームと距離計二重像が同一平面に結像するようになっている方式。虚像式よりコストがかかるが、距離計二重像の境界がはっきり見えるため、二重像を重ね合わせる以外に二重像でない部分と二重像を見比べて像を一致させる使い方も可能である。この使い方のほうがより正確に測距可能であるとされるが、虚像式に慣れた人は苦手と感じることもある。 テンプレート:-

標準レンズの焦点距離

レンジファインダーカメラのレンジファインダーはレンズの繰り出し量を検知するものがほとんどであり、ピント位置とレンズ繰り出し量は常に一定の関係となっていることが前提である。しかし同じ距離にピントを合わせる場合でもレンズの焦点距離が異なるとレンズの繰り出し量が変わる。このためレンズ交換式のレンジファインダーカメラでは標準とする焦点距離をあらかじめ決めておき[4]、標準以外のレンズには距離計と連動する部分の移動量が標準レンズ相当になるように変換する機構がついている。

代表的な機種

135フィルムを使用するカメラ

ライカ判を使用するレンジファインダーカメラを代表する機種といえばライカIIIなどのLマウントライカである。小型軽量で機動性に富み、故障が少なかった。

ライカにはかつてドイツ国内に「コンタックス」という強力なライバルが存在した。後のライカM3で「先進機能」とされていたバヨネットマウントは1932年発売のコンタックスI型、距離計一体型ファインダーと一軸不回転式シャッターダイヤルは1936年発売のコンタックスII型ですでに実現しており、その先進性が伺える。コンタックスを製造したツァイス・イコンは1930年代当時ドイツ最大の光学機器メーカーとして君臨したカール・ツァイスのカメラ部門で、ライカを製造していたエルンスト・ライツ(現ライカ)と激しい開発競争や販売合戦を繰り広げた。極論すればドイツの戦前のライカ判高級カメラはライカとコンタックスの2機種であり、日本のメーカーも大きな影響を受けている。

Lマウントライカには多数のコピー商品が作られた。コピーに当たって一番問題になったのは「距離計の2つの窓の間にファインダーを入れる」というライカが持っていた特許だったが、戦前精機光学(現キヤノン)は飛び出し式ファインダー、昭和光学精機(レオタックス)は基線長が短くなることを覚悟で距離計の外側にファインダーを持って来てライツの特許を回避した。また第二次世界大戦中ドイツからの輸入が止まり軍用カメラの必要性から軍部が「特許を無視して製造せよ」と命じてアメリカのカードン、日本のニッポンカメラが作られた。戦後はドイツの特許が無効化されキヤノンニッカカメラ(後のヤシカ)、レオタックスカメラ、イギリスのリード&シギリスト(リード)などがこぞってライカを模倣し、互換機ないしはデッドコピーを作り続けて技術を磨き、さらには改良した機種を作り始めた。

各社が独自の改良を続けて利便性を高める中、本家ライカは「信頼性は高いものの時代遅れのカメラ」になりかけていたが、1954年にバヨネットマウント、装着レンズに応じて枠を自動的に切り替える距離計一体型ブライトフレームファインダー、一軸不回転式シャッターダイヤルを装備したライカM3が発売された。その完成度に驚いた日本のメーカーはライカとの競争を諦めて一眼レフカメラの開発に走ったと言われる程で、現在でもその後継機が販売されている。

日本の場合戦後の摸倣期から脱却した1960年代半ば以降高級ライカ判カメラの中心が一眼レフカメラへと移行し、レンズ交換式ライカ判レンジファインダーカメラは「ライツミノルタCL」「ミノルタCLE」など一部機種を除いてその後1990年代前半までほとんど製造されず忘れ去られた存在であったといってよい。しかしコンパクトカメラの分野においてはその後も一貫してレンジファインダー方式が主流であり、その後に普及したコンパクトオートフォーカスカメラの構造も基本的にこの原理を踏襲している。

クラシックカメラブームに乗り、2000年頃からコシナフォクトレンダーブランドで「ベッサ」シリーズや「ツァイス・イコン」シリーズ、コニカから「ヘキサーRF」などレンジファインダーカメラの発売が相次いだ。また、ニコンはかつて製造していたレンジファインダー方式のカメラであるニコンS3を2000年、ニコンSPを2005年に、ともに限定品として復刻販売している。 テンプレート:-

120/220フィルムを使用するカメラ

戦前からツァイス・イコンの「スーパーイコンタ」、フォクトレンダーの「スーパーベッサ」、プラウベルの「プラウベルマキナ」などが著名で、主に上位機種に搭載された。なお、これらの製品もライカ判カメラと同様に各国でコピー・模倣機が製造され、日本でも六桜社(コニカを経て現コニカミノルタホールディングス)の「セミパール」、千代田光学(ミノルタを経て現コニカミノルタホールディングス)のオートセミミノルタ、マミヤ光機(現マミヤ・オーピー)のマミヤ6など、数多くの製品が作られた。

ただし蛇腹を用いたフォールディングカメラが多い120フィルム使用カメラは構造上レンジファインダーをレンズに正確に連動させることが難しく[5]、連動レンジファインダーの装備は一部上位機種にとどまり、単体距離計を内蔵しただけのカメラも多かった。

戦後になって二眼レフカメラを除く120フィルムを使用するカメラが高級機・プロ用機に限定されていくと、蛇腹カメラが通常の固定鏡胴のカメラに置き換わっていき連動機構の制約がなくなった。135フィルムと比較して重厚長大になりやすい120フィルムの分野では小型軽量化しやすいレンジファインダー式は有利であり、オートフォーカスが実用化されても長らくその必要性が薄いとされてきた経緯から、比較的遅い時期まで一般的であり続けた。戦後の日本の代表製品としてはマミヤプレス、ニューマミヤ6、フジカG690、トプコンホースマンプレス、プラウベルマキナ67シリーズ、ブロニカRF645等が挙げられる。 テンプレート:-

ファイル:Linhof img 1876.jpg
リンホフスーパーテヒニカ45

シートフィルムを使用するカメラ

リンホフ・スーパーテヒニカシリーズやグラフレックス・スピードグラフィックシリーズ、ホースマン45Hシリーズなど蛇腹プレスカメラでも連動距離計を装備するものがある。これらはピントグラスによる測距やアオリ撮影対応など、フィールドカメラとレンジファインダーカメラの両方の性格を持ったカメラといえる。

スピードグラフィックシリーズは1950年代頃以降レンジファインダーに照明を組み込み、被写体に照射することで完全な暗闇でもピント合わせができる機構を持っている。 テンプレート:-

レンジファインダー式デジタルカメラ

2004年エプソンから世界初のレンジファインダー式デジタルカメラR-D1」が発売され、2006年にはライカからもレンジファインダー式デジタルカメラ「M8」が発表されている。 テンプレート:-

注釈

テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:Sister

テンプレート:写真
  1. 一眼レフのファインダーを距離計に換算した場合、有効基線長がレンズ焦点距離の2乗に比例する。
  2. 例外的に最大1.5倍程度までファインダー倍率を可変できるものがある。またM型ライカではファインダーと距離計窓の対物側に一種のテレコンバージョンレンズを追加してファインダー倍率を上げるアクセサリが用意された。
  3. 二眼式レンジファインダーにおいては、距離計側は視野全体が二重像となるため実像式にするメリットがなく、すべて虚像式である。
  4. 例えばライカLマウント/Mマウント、ニコンSマウントでは51.6mm、コンタックスマウントでは52.2mmが標準となっている。特にニコンSマウントとコンタックスマウントはマウント形状もフランジバックも同一ながら標準レンズの焦点距離が異なるために完全な互換性がない。
  5. スプリングカメラに詳しい記事がある。