ファーゴ (映画)
テンプレート:Infobox Film 『ファーゴ』(原題: Fargo)は、1996年製作のアメリカ映画。
概要
コーエン兄弟制作の映画作品。ノースダコタ州の都市ファーゴとその周辺を舞台に、狂言誘拐をめぐる人間模様を描いたサスペンス。
映画の始めに「これは実話である」(原文:THIS IS A TRUE STORY.)という一文が映るがこれも演出の一つで、実際に映画のような経緯を辿った誘拐事件が起きた事実はなく、物語は完全なフィクションである[1]。
ストーリー
物語の舞台は1987年、ミネソタ州ミネアポリス。自動車セールスマンのジェリー・ランディガードは、多額の借金を抱えていた。ジェリーは金銭的な苦境を脱するために、自身の妻ジーンを誘拐させ、裕福な義理の父親ウェイド・グスタフソンから8万ドルの身代金をせしめる計画を立てる。ノースダコタ州ファーゴでジェリーは、整備工場のメカニックから紹介されたカール・ショウォルターとゲア・グリムスラッドという二人のチンピラと面会し、細かい打ち合わせをする。ジェリーは二人組に仕事用兼報酬として、販売店から持ち出した車を引き渡す。
しかし、ジーンを誘拐した二人組は、逃げる途中に彼らを不審に思ったパトロール中の警察官、さらに彼らの凶行を見た目撃者を殺害してしまう。
翌朝、ブレーナードの殺人事件の捜査に乗り出したのは、妊娠中の女性署長マージ・ガンダーソンだった。彼女は地道な聞き込み捜査で犯人たちの足取りを追う。そしてマージは殺害された警察官がメモしていた車の情報から、当該車種のディーラーであるジェリーの元に辿り着く。最近店から盗まれた車はないか問いかけるマージに対し、何とかその場を取りつくろうジェリーだが、そのことが逆にマージに不信感を抱かせる。
警察が必死の捜査を続ける中、カールはジェリーに対し報酬の引き上げを要求する。簡単な狂言誘拐のはずが、何時の間にか血腥い殺人事件にまで進展してしまったことを知り、ジェリーは慄然とする。彼は誘拐犯たちが100万ドルの身代金を要求してきたと義父のウェイドに告げる。誘拐犯との約束の日、ジェリーを信用せず、ウェイドは自ら身代金を持って犯人たちと交渉しようとする。
待ち合わせの場所に現れた彼を見て、カールは約束が違うと怒りを露にする。ジーンを解放しなければ身代金は渡せないと主張するウェイドだが、逆上したカールは彼を射殺、大金の入ったブリーフケースを奪って逐電する。ジェリーが身代金引渡しの場所に駆けつけた時には、既にウェイドの死体が残されているだけだった。ジェリーは死体を車のトランクに積め、現場から立ち去る。
一方、ウェイドから奪った100万ドルを見たカールは、それを独り占めにしようと8万ドルだけを手元に残し、残りの大金が入ったブリーフケースを雪原に埋める。カールがアジトに戻ったときには、すでに人質のジーンは事切れていた。それでも当初の約束どおり8万ドルを山分けしようとするカールとゲアだが、誘拐に使った車をどちらが手にするかで口論、その結果カールはゲアに斧で殺害されてしまう。
ブレーナードに戻る前に、もう一度ジェリーに会いに行くマージ。事件の真相に近づきつつある彼女の尋問にパニック状態に陥ったジェリーは、車に乗って逃走する。
部下に行方不明になったジェリーとウェイドの捜索を指示するマージは、地元のバーテンダーの情報から誘拐犯たちのアジトを発見する。そこでマージが見たものは、カールの死体を木材破砕機で粉微塵にしているゲアの姿だった。マージは逃げようとするゲアの足を撃ち抜き、彼の確保に成功する。警察署へ向かう途中、マージは後部座席のゲアに向かって、「どうしてこんなちょっとばかりのお金の為に人を殺したのか」「人生にはお金より大切なものがある」と語りかけるが、ゲアは何も答えない。
逃亡中だったジェリーも、しばらく経ってビスマーク郊外のモーテルで逮捕された。
自宅の寝室でテレビを見るマージに、夫のノームは彼の絵が3セント切手の絵柄に採用されたと告げる。マージの胎内には、出産間近の赤ん坊の生命が息づいている。ささやかだが、確かな幸せをかみしめるマージとノームであった。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | |
---|---|---|---|
VHS・DVD・BD | TV | ||
マージ・ガンダーソン | フランシス・マクドーマンド | 塩田朋子 | 高島雅羅 |
ジェローム・“ジェリー”・ランディガード | ウィリアム・H・メイシー | 佐古正人 | 古川登志夫 |
カール・ショウォルター | スティーヴ・ブシェミ | 小杉十郎太 | 大塚芳忠 |
ゲア・グリムスラッド | ピーター・ストーメア | 荒川太朗 | 菅生隆之 |
ジーン・ランディガード | クリステン・ルドルード | ||
ウェイド・グスタフソン | ハーヴ・プレスネル | 有川博 | |
ノーム・ガンダーソン | ジョン・キャロル・リンチ | 土師孝也 |
作品解説
狂言誘拐が巻き起こす悲喜劇を扱った本作品であるが、誘拐はコーエン兄弟が好んで描くモチーフである。劇中に登場するポール・バニアンの像はアメリカではホラ話の象徴とも言われている。
舞台
映画のタイトルは『ファーゴ』であるが、実際に映画中でファーゴが舞台となるのは冒頭の酒場のシーンだけである。物語は殆どミネソタ州のミネアポリスやブレーナードを中心に展開している。
コーエン兄弟はファーゴをタイトルに選んだ理由について、『ファーゴ』の方が『ブレーナード』より面白そうだったからと述べている[2]。
反響・評価
映画は1996年3月8日に北米で公開され、約2400万ドルの興行収入を挙げた[3]。批評家たちからの評価は高かったものの、興行的な成功とは縁遠かったコーエン兄弟の映画としては、『赤ちゃん泥棒』以来のヒット作となった。批評家たちからも絶賛を受け、名実共にコーエン兄弟の代表作となった。
同年度のアカデミー賞では作品賞を含む7部門の候補となり、そのうち主演女優賞、脚本賞の2部門で受賞した。その他にもカンヌ国際映画祭監督賞、英国アカデミー賞監督賞など受賞多数。インディペンデント・スピリット賞では作品賞や監督賞を含む、候補になった6部門全てを受賞すると言う快挙を成し遂げた。日本では1996年度のキネマ旬報外国語映画ベスト・テン第4位にランクインした。
1998年にアメリカ映画協会が選んだ映画ベスト100中第84位にランクインした。2006年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。
フランシス・マクドーマンド演じる女性署長マージ・ガンダーソンは、その印象的なキャラクターによって映画史に特筆される人気者となった。役作りのために知人からミネソタ訛りの英語を習得したマクドーマンドの演技は絶賛され、第69回アカデミー賞の主演女優賞を与えられた。1997年には、マージを主役としたテレビドラマシリーズを放送する計画もあったが、パイロット版が製作されたのみで実現には至らなかった。そのパイロット版では、イーディ・ファルコがマージを演じていた[4]。
2003年にアメリカ映画協会が選んだアメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100では、マージ・ガンダーソンがヒーロー部門第33位にランクインした。
リブート
今後に本作のリブート作品[5]となるTVドラマを制作する予定である。このリブート版はリメイクではなくマーティン・フリーマンが出演する予定である。
脚注
外部リンク
テンプレート:コーエン兄弟制作映画- ↑ Minesota Nice(『ファーゴ』製作の模様を扱ったドキュメンタリー、MGM版DVD収録)
- ↑ "The Charlie Rose Show" Segment(『ファーゴ』公開後にコーエン兄弟とフランシス・マクドーマンドが出演したトークショー、MGM版DVD収録)
- ↑ 引用エラー: 無効な
<ref>
タグです。 「boxoffice
」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません - ↑ Filmsite.org、“Fargo (1996)”(参照:2009年3月23日)
- ↑ ニュース:『SHERLOCK』マーティン・フリーマンが、TV版『ファーゴ』に主要キャラで出演!|海外ドラマNAVI