岩魚坊主
岩魚坊主(いわなぼうず)は、大きな岩魚が化けた日本の妖怪である。江戸時代の随筆『想山著聞奇集』に美濃国恵那郡(現・岐阜県中津川市・恵那市)の伝承の記述があるほか、福島県や東京都など、日本各地の伝承に登場する[1]。
概要
釣り人が川で釣りをしている最中に、一人の坊主が現れて長話に興じる。この近くは寺の土地なので釣りはあまりしないようにと釣り人に注意をするが、釣り人は持っていたご飯を振るまったので、気をよくして坊主は帰って行った。その後、とても大きな岩魚がかかり、持って帰って捌いてみると、腹から坊主に振る舞ったご飯がでてきた。
というような話である。もちろん、地域によって多少話の流れが異なるものの共通点としては、人間が坊主に食べさせたものが魚の腹から出てくるということである。
いろいろなバリエーション
釣り人は一人とは限らず、大勢で釣りを行う場合もある。毒を流したり網をはって大量に魚を捕ろうとするところへ現れた坊主が殺生を戒めるが、坊主が立ち去った後にその漁法で大きな岩魚がかかるというケースや、釣り人の釣り場を聞いて帰っていったが釣り人が釣り場を変えた途端に大きな岩魚がかかるケースなど、釣られないように必死で化けた岩魚で祟ることも無いというケースが多いようである。しかし中には釣れた後死骸から毒気が出て釣り人が死んでしまうという話も存在する。
人間に化けた魚が人間に魚獲りをやめさせようとする話は岩魚に限らず、ヤマメ、ウナギなどの話もあり、沿岸地方ではタラの話もある。多くの場合、これらは年老いた魚が妖怪となったものが多い[1]。
あるいは、旅の坊主が一夜の宿を借りた次の日、大雨で川が決壊しそうな時に旅の坊主が飛び出していったが、雨がやんでから川を見に行ってみると腹が破れご飯の覗いた大きな岩魚が土手の亀裂に挟まって川の決壊を止めていたというような村を救った岩魚の話もある。
いずれの話にせよ、最後に腹を割かれることで坊主と岩魚を同一視させるという流れであり、必ず死んでしまう可哀想な妖怪である。