エンパイア・ステート・ビルディング
エンパイア・ステート・ビルディング(テンプレート:Lang-en-short、テンプレート:IPA-en ジ・エンパイァ・ステイトゥ・ビルディング)は、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン区にある超高層ビル。
「エンパイア・ステート(帝国州)」はニューヨーク州の異名である。
目次
歴史
建築家集団、テンプレート:仮リンク、テンプレート:仮リンク、テンプレート:仮リンク(Shreve, Lamb and Harmon)の3名によって設計されたエンパイア・ステート・ビルディングは、マンハッタン島を代表する高級ホテルであるウォルドルフ=アストリアが建っていた跡地に建設された。低層部や最頂部には、当時世界的に流行したアール・デコ様式が採用されている。
工事はクライスラービルから「世界一の高さのビル」の称号を奪うために急ピッチで行われ、1931年に竣工したが、世界恐慌の影響でオフィス部分は1940年代まで多くが空室のままであった。そのため、「エンプティー(空っぽの)・ステート・ビルディング("Empty State Building")」と揶揄(やゆ)されることもあったが、戦後は多くの人々が訪れる観光名所となり、1972年にワールドトレードセンターのノースタワーが竣工するまでの42年間、世界一の高さを誇るビルとなっていた。完成して55年が経った1986年には、アメリカ合衆国国定歴史建造物に指定されるなど、ニューヨークのシンボルの一つとして認知されていった。
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件によってワールドトレードセンターが破壊されてしまった際には、ノースタワーを電波塔にしていた各局が放送不能となるが[1]、WCBS-TVはエンパイア・ステート・ビルの電波塔を活用し、放送を続けた。テロ後、WCBS-TVは被害を受けた各局に電波送信スペースの貸し出しを行った後、2005年より地上波テレビ各局の電波塔がこのビルに集約されることになった。 ワールドトレードセンターの崩壊という痛ましい理由からではあるが、再び「ニューヨークで最も高いビル」となった。
2012年4月30日、建設中の1 ワールドトレードセンターのフロアの高さがエンパイアステートビルのフロアの高さを上回った[2]。2013年5月10日には、アンテナを含めた最長部の高さも1 ワールドトレードセンターがエンパイアステートビルを上回り、ニューヨークで最も高いビルの座は再び入れ替わった。
施設
ビルの総床面積は20万4,385m²におよび、質量は全体でおよそ33万 t ある。6,500個の窓や73基のエレベーター(貨物用の6基を含む)、1,860個の階段などで構成されている。
最上階である102階の床面は地上373.2m(1,224 ft)の高さにあり、軒高(本体構造物の最高所の地上高)は381.0m(1,250 ft)である[3]。また、1950年代に付け加えられた上部付属施設である電波塔(67.7m〈222 ft〉)を併せた場合の地上高は443.2m(1,454 ft)である。
最上階付近一帯と電波塔にはイルミネーションによる光の演出が施されており、日によって色の変化を見せる(右上、テンプレートの画像を参照)。かつては尖塔部分に飛行船を係留できるようになっていた[4]が、現在テンプレート:いつは電波塔が設置され、テレビ・ラジオ用送信用アンテナ機材が取り付けられている。
頂上はニューヨーク・エリアにおけるテレビ・ラジオの電波塔としての役割も持っており、以前よりWCBS-TVがこのビルをサブの電波塔として利用していた(テロが起きるまでは、メインはワールドトレードセンターであった)。
展望台
エンパイア・ステート・ビルディングの屋外展望台は世界的に有名なもののひとつであり、1億1千万人を越える来場者が訪れている。ビルの86階(320m)にある屋外展望台からは窓越しではなく、直接ニューヨークの街を360度一望することができる。102階(381m)にある第二展望台は1999年に一度閉鎖されたが、2005年11月の再オープンより追加料金を支払うことで入場できるようになった。しかし86階のものと比べると非常に小さく、またガラスで完全に囲われたものであり、混雑する日(週末)には閉鎖されるので注意が必要である。展望台までのルートは、公式ウェブサイトによると、「ビルそれ自体と同じように有名」であるとしている。それはサイドウォークの列、ロビーエレベーターの列、チケット購入の列、第二エレベーターへ続く列、そしてエレベーターを降り展望台へと続く列の5つからなるものである。また特別料金を支払うことで列に並ばずに展望台へ行くことも可能。列の途中では記念写真の撮影があり、帰りの際には完成した写真をみて購入することができる。
事故・事件
B-25の衝突事故
1945年7月28日の9時49分、濃い霧の中をニュージャージー州のニューアーク・リバティー国際空港に着陸しようとしたアメリカ陸軍の中型爆撃機 B-25が、79階の北側に衝突して機体が本ビル内に突入するという事故が起こった。79階で火災が発生し、衝突時の衝撃で機体から脱落したエンジンが破壊したエレベーター扉と同シャフトを経て80階へ延焼したが、約40分後に消火された。
乗員3名を含む死者14名を出したものの、着陸直前で燃料残量が少なかった上に比較的小型の機体であったことから建物自体への損害は比較的少なく、事故後2日で営業を再開している。なお、この事故でエレベーター1基のケーブルが切断され、エレベーターガールを乗せたまま約300m落下した。エレベーターガールは全治8ヶ月の重傷を負ったが、奇跡的に生存した[5]。
1963年の火災
1963年1月9日に複数のフロアから同時に火災が発生した。当初、火災の発生した階は65階、66階、67階で、その後24階、25階、33階、55階、67階、の合計8つの階からの出火を確認。出火の原因はビルを縦に貫くパイプの中にある電線からの出火が疑われた。火災発生は早朝でビル利用者の多くが出勤する前だったので大きな混乱はなかった。この火災により同ビル内にあるテレビ局1局、ラジオ局2局が放送を停止するなどの被害がでた[6]
1997年の無差別発砲事件
1997年2月22日、69歳のパレスチナ人の元英語教師が86階の展望デッキで突然銃を取り出し、歩き回りながら約100人いた観光客に向かって無差別に発砲した。デンマーク出身のミュージシャンが死亡、6人が負傷した。犯人は銃乱射後、こめかみを撃って自殺し、病院に搬送されたが死亡した。銃のほか、ナイフと爆弾と声明文を所持していた。声明文には、シオニズムへの怒りと、アメリカ、フランス、イギリスのパレスチナ人に対する不当な扱いへの怒りが綴られていたが、公式発表では、あくまで政治的なものではなく、詐欺被害による金銭的な破綻が原因とされた[7]。しかし、10年後の2007年、犯人の娘がデイリーニューズ紙のインタビューに答え、犯行の目的は政治的なもので、イスラエルを支援するアメリカへの報復としてエンパイアステートビルを破壊するつもりで行なったが、当時、和平交渉への影響を恐れたパレスチナ自治政府の指示で母親(犯人の妻)が嘘の発言をしたと述べた[8]
9・11の流言
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の際には、エンパイア・ステート・ビルにもハイジャック機が向かっているという流言が一部で流れた(この噂は、テロリストの意図に基づくデマゴギーであった可能性も排除できないが、証拠が無い)。この影響でビル内部にいた職員などが急遽、避難するといった混乱も見られた。
フィクション
エンパイア・ステート・ビルはさまざまな映画や小説に出ているが、とりわけ有名なのは特撮映画『キングコング』であろう。人間の所業に怒り狂うコングは、エンパイア・ステート・ビルに故郷の断崖を見たか、外壁を剥がしつつよじ登り、頂上で野生を叫ぶ。しかし、文明の象徴でもあるその場で森の王者の命運は尽き、人々には問い掛けが残される。
なお、キングコングがこのビルに登ったのは、1933年製作のオリジナルと、2005年製作のオリジナルの筋立てに忠実なリメイク版の2回。1976年製作のリメイク版で登っているのは、ワールドトレードセンタービルであった。これにはエンパイア・ステート・ビルの関係者から「何故うちに来ないのか」との抗議の声が挙がったという。
その他、エンパイア・ステート・ビルを舞台にした作品としては、イギリスBBC制作によるTVドラマ『ドクター・フー』がある。2007年に制作された新シリーズシーズン3、第4話および第5話において、世界恐慌のさなか何故無理をしてまでエンパイア・ステート・ビルを建てる必要があったのかについて語られている。
20世紀のモニュメント
エンパイア・ステート・ビルは、米国土木学会(ASCE)によって2001年、20世紀の10大プロジェクトを選ぶ「モニュメント・オブ・ ザ・ミレニアム(Monument of the Millennium)」の「高層ビル」部門に選定された。これは、20世紀最高の高層ビルと認められたことを意味する[9]。
なお、この「モニュメント・オブ・ザ・ミレニアム」は他に9つの部門を設けており、例えば「水路交通」部門ではパナマ運河、「ダム」部門ではフーバーダム、「空港の設計・開発」部門では関西国際空港が、「鉄道」部門には英仏海峡トンネル、「長大橋」部門にはゴールデンゲートブリッジが選定されている。
ギャラリー
エンパイア・ステート・ビルディングからの 360°パノラマ
360°-Panorama </div>
- 画像-1:エンパイア・ステート・ビルの全景。
- 画像-2:ブロードウェイおよび34丁目(en:)の道路標識と、エンパイア・ステート・ビル。
- 画像-3:イルミネーションに彩られたクリスマスのエンパイア・ステート・ビル。
- 画像-4:真下から見上げたエンパイア・ステート・ビル。
- 画像-5:ロックフェラー・センターから望むエンパイア・ステート・ビルと
- 画像-6:ニュージャージー州から望む
アクセス
脚注・出典
関連項目
- WCBS-TV - 当ビルを電波塔として使用。
- キングコング
- 横井英樹 - 前オーナー
- ドナルド・トランプ
- ピーター・マルキン
- デビッド・マコーレイ - 当ビルの解体を想定してその手順を図解した『エンパイア・ステート・ビル解体』を執筆。
外部リンク
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- ↑ もっとも、放送不能となったのは電波による放送のみであり、ケーブルテレビでの放送は続けられた。
- ↑ ワンワールドトレードセンターがNYで最も高いビルに(ロイター)
- ↑ 居住目的のある建築物では軒高が他との比較(ランキング)における第一の基準。よって、通常的に言われるこのビルの高さは381mである。
- ↑ 実際は上空400mの強風に飛行船が流されるため使われた事は無かった。
- ↑ guinnessworldrecords.com
- ↑ 朝日新聞・1963年1月10日記事
- ↑ http://www.nytimes.com/1997/02/25/nyregion/from-teacher-to-gunman-us-visit-ends-in-fatal-rage.html?ref=aliabukamal&pagewanted=all
- ↑ http://www.nydailynews.com/news/crime/killer-daughter-admits-political-article-1.233826
- ↑ The Empire State Building: A Monument of the Millennium