奇子

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テンプレート:Sidebar with collapsible lists奇子』(あやこ)は、手塚治虫漫画作品。1972年から1973年まで小学館ビッグコミックに連載された。

あらすじ

昭和24年、戦争から復員した天外仁朗はGHQスパイになっていた。ある時、命令で共産主義者の男の殺人(通称 淀山事件)に関与するが、その男は仁朗の妹・天外志子の恋人であった。

さらに事件関与後、血のついたシャツを仁朗が洗っている時、近所に住む知的障害者の少女・お涼と、自分の父親と兄嫁との間にできた少女奇子がそれを見てしまう。仁朗はお涼を口封じのため殺し逃亡する。奇子は一族の体面のために肺炎で死亡したことにされ、天外家の土蔵の地下室に幽閉されたまま育てられるが…。

登場人物

天外仁朗(てんげ じろう)
東北地方の大地主・天外家の次男。復員後はGHQの工作員となり、江野正殺害に関与する。事件後は逃亡し、“祐天寺富夫(ゆうてんじとみお)”として朝鮮戦争の特需をきっかけに裏社会で名を上げ、やがて暴力団「桜辰会」を設立、それを政界に影響力を及ぼすまでに成長させる。自分が原因で奇子が土蔵に閉じ込められてしまったことを悔やみ、その償いとして、正体を隠したまま奇子あてに送金を続けていた。天外家から逃げてきた奇子の身を引き受け、彼女を社会復帰させる為に尽力する。
天外奇子(てんげ あやこ)
表向きは天外ゐばが47歳で産んだ末娘とされているが、実際は作右衛門が長男の嫁であるすえに産ませた私生児(仁朗の異母妹)。4歳の時、仁朗の証拠隠滅工作を目撃してしまい、一族から犯罪者を出す事を恐れた市郎から、警察による聞き取りを防ぐ為に病死した事にされて、以後戸籍を失ったまま20年以上土蔵の地下室に幽閉される。長年の幽閉生活の内にやがて土蔵から出る事を怖がるようになるが、土蔵が取り壊されることになり、家の中に移された後、土蔵へ戻ろうとして天外家から抜け出す。隔絶された環境で成長したために禁忌に疎く、唯一接する事のできる男性である伺朗を異性として求め、肉体関係を結んでいた。
天外市郎(てんげ いちろう)
仁朗の兄。日和見主義な天外家の長男で、父の衰えに乗じて天外家の実権を掌握する。奇子を土蔵へ幽閉することを提案した張本人。天外家の遺産を相続する事と引き換えに作右衛門に妻のすえを渡したが、その約束を破られ、遺産はすえが相続する事になった際、すえを殺害する。しかし遺産を手にしたものの悪夢に悩まされるようになり、やがて伺朗やゐばにすえを殺した事を勘づかれてしまう。
天外すえ(てんげ すえ)
作右衛門によって選ばれた市郎の嫁。市郎との子供はいないが、関係を強いられた作右衛門との間に奇子を生む。戸籍上は奇子の義姉となっており、奇子に対して母と名乗れない事を思い悩んでいる。後に作右衛門が亡くなった際、彼の遺産を奇子の母として受け継ぎ、奇子を連れて天外家を出ようとするが、市郎によって殺害される。
天外伺朗(てんげ しろう)
天外家の三男。仁朗の犯罪を告発しようとするなど、天外家では強い正義感の持ち主。奇子の幽閉に憤り、彼女のために尽力していたが、後に成長した奇子に求められて近親相姦を交わしてしまい、以後自らも奇子を求めるようになる。
天外志子(てんげ なおこ)
天外家の長女。仁朗の妹で伺朗の姉。GHQに殺害された江野の恋人だが、この事件に兄が関わっていることを知らない。天外家では最も常識人であるが共産主義と関わった事で作右衛門から勘当されたために、一族から離れて暮らしている。
天外作右衛門(てんげ さくえもん)
天外家の傲慢、不遜、放蕩、淫乱、冷酷非情な当主。すえとの間に生まれた奇子を溺愛している。幽閉された奇子を蔵の外へ出してやろうとしていたが、後に脳卒中を起こし、数年間植物状態となった末に死亡。
天外ゐば(てんげ いば)
滅私奉公型貞女的な性格で、夫や長男に従順な作右衛門の妻。天外家に逆らう事はなかったが、密かに奇子の身を案じていた。
お涼(おりょう)
天外家の小作人の子で、女中として天外家に仕えている知的障害のある娘。実際は奇子同様に作右衛門の私生児だが、奇子と違って全く愛情を注がれていない。幽閉前の奇子の良い遊び相手だった。彼女の目撃情報から仁朗の犯行が露見したため、口封じで仁朗に殺害されてしまう。
下田波奈夫(げた はなお)
仁朗と淀山事件の関わりを探る警視庁捜査一課長・下田警部の一人息子で検事。東京で知り合った奇子と同棲することになる。
江野正
志子と共に革新派政党に所属する青年。暗殺され、遺体は仁朗によって線路に運ばれた(淀山事件)。その後、史実の下山事件をモデルとした国鉄総裁死亡事件が起きており(霜川事件)、淀山事件は霜川事件の予行演習だった事が示唆されている。

単行本

関連項目

外部リンク

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