ミルフィーユ
ミルフィーユ(テンプレート:Lang-fr-shortテンプレート:Lang-en-short、テンプレート:IPA-fr ミルフーイュ[1]、テンプレート:IPA-en ミールファーイ。テンプレート:Lang-de-short)は、フランス発祥の菓子の一種。
歴史のある菓子であり、形状や製法も様々なものがあるが、現代では3枚のフイユタージュ(パート・フイユテとも言う、日本では通称パイ生地)にクリームをはさみ、表面に粉糖がまぶされたもの、あるいはフォンダンがけされているものが基本とされている。
目次
[非表示]一般的な種類
- ミルフイユ・ロン (mille-feuille rond)
- 丸い形状のミルフイユ、側面にはカスタードクリームを塗り刻んだフイユタージュをまぶし、上面に粉糖をまぶしたもの。
- ミルフイユ・グラッセ (mille-feuille glacé)
- フォンダンがけにしたミルフイユ、チョコレートで矢羽模様などを描き飾りとしているもの。
- ミルフイユ・ブラン (mille-feuille blanc)
- 3枚のフイユタージュ生地を用いる代わりに、中央の1枚をスポンジケーキ(ビスキュイあるいはジュノワーズ)に置き換えたもの。
- ミルフイユ・オー・フレーズ (mille-feuille aux fraises)
- 苺のミルフイユ、ナポレオン・パイとも言われる。クリームだけでなく苺もはさみこんだもので、冷やして供される。
ミルフイユに用いられるクリームとしてはカスタードクリームがよく知られているが、生クリームやバタークリームなども広く用いられている。またクリーム以外にも、アプリコットジャムやリンゴのコンポートなどが使われる場合もある。
パイ菓子以外のミルフィーユ
薄切りの肉・魚や野菜を何層にも重ねた料理をミルフィーユまたはミルフィーユ仕立てと呼ぶことがある。
由来と歴史
フランス語で「mille」(ミル)は「千」、「feuille」(フイユ)は「葉」を意味しており、一般的にmille-feuilleは「千枚の葉」という意味だと理解されている。
ミルフイユに用いるフイユタージュは、四角く広げた小麦粉生地に平らにしたバターを乗せ、何回も折りたたんで作るもので、折りたたむ工程を重ねるほど層が増し、パリパリとした食感になっていく。工程を5回繰り返し729層となったものや、6回繰り返し2187層になったものが主に用いられており、その層になった生地を何枚か重ね合わせて、さらに沢山の層をなしているという状態を「千」で表現し、また層になったフイユタージュの落ち葉をイメージさせるような独特の焼き上りを「葉」として表現し、mille-feuilleという合成語として文学的に言い表したものが名前となったとも考えられている。
偉大なる古典と言われる菓子であり、1807年にはフランスの『食通年鑑』(Almanach des Gourmands)の食味鑑定委員会がミルフイユを鑑定している。創造者は同時代の著名な菓子職人であり料理人であったアントナン・カレーム(Antonin Carême)だとも言われており、フランスのルージェ(Rouget)が得意としていたとも伝えられている。
ただ、当時はジャムなどが主に用いられていたようで、カスタードクリームも現代のものとは異なる製法であったと考えられている。また、初期のミルフイユは上面にするフイユタージュ生地に卵を塗り、粉糖をふりかけオーブンで焼き、表面をカラメル化するといった仕上げ方だったとも言われている。現代の製法に見られるような、上面へのフォンダンがけは1822年頃になって用いられ始めたもので、今日に至るまで職人が様々に工夫を凝らし続けている菓子でもある。
ナポレオン
日本において苺のミルフィーユを指す「ナポレオン」ではあるが、「ナポレオン」を通常のミルフィーユの名称として使う国も多い。 例:フランス(Napoleon)、ロシア(Наполеон)、オーストリア(napoleon slice)、ポーランド(napoleonka)、スウェーデン(Napoleonbakelse)、香港(拿破侖)、イラン(Nâpel'oni)等
こちらの語源は、元はイタリアの都市であるナポリのフランス語形容詞変化ナポリタンとしていたのが、 フランスの皇帝として活躍したナポレオン・ボナパルトに掛け合わせるために変化させたことから来ている[2]。
日本での広まり
近年日本ではこの菓子の名称が「ミルフィーユ」として広まり定着している感もあるが、これはフランス語では「千人の娘」(mille filles)を意味する発音となる。「ミルフイユ」の方が本来の「千枚の葉」を意味する発音に近い。
幕末から明治にかけて、フランス人のサミュエル・ペールが横浜で洋菓子店を営んでおり、ミルフイユが日本に伝わったのはその当時ではないかと考えられている。1870年(明治3年)テンプレート:年代要検証、御所の饗宴用フランス菓子御用として出仕し、サミュエル・ペールの元で在官のままフランス菓子製造技術を学んだ村上光保が、1874年(明治7年)にフランス菓子の製造と仕出しを行う村上開新堂を開業しており、同店では明治の後期にフランスの製法を研究し「ミルフェ」という商品名で販売も行っていた。
千葉県とミルフィーユ
ミルフイユが「千枚の葉」を意味する事から、千葉県では「千葉ミルフィーユ」と言うお菓子が作られたり[3][4]、施設に「ミルフィーユ」と名付けるなど、県名との類似を利用し地域振興につなげようとする試みもなされている。
食べ方
ミルフィーユはパイが何層にも重なっているため、普通のケーキと同じように正立した状態で上からナイフを入れて食べようとすると、カスタードが横にはみ出して簡単に崩れ、食べにくい。上手に食べるには、まずミルフイユを横に倒し、フォークで上から押さえてナイフを使うと良い。ナイフは上から押すようにするのでなく、横に挽きながらパイ生地を切れば、一口ごとに食べることができる。なお、ミルフィーユのパイ生地を一枚ずつ剥がして食べると、パイとカスタードのバランスが合わなくなる。
脚注
参考文献
- プロスペル・モンタニェ著『ラルース料理百科事典 4』三洋出版貿易
- W・J・ファンス編 辻静雄訳『現代洋菓子全書』三洋出版貿易
- イヴ・チュリエ著 千石玲子、千石禎子訳『フランス菓子百科 1』白水社
- 池田文痴菴編著『日本洋菓子史』日本洋菓子協会
- 静雄著『フランス料理を築いた人びと』鎌倉書房 ISBN 4-308-00107-2
- 吉田菊次郎著『洋菓子事典』主婦の友社 ISBN 4-07-933424-9
- 吉田菊次郎著『洋菓子の世界史』製菓実験社
- ニナ・バルビエ、エマニュエル・ペレ共著 北代美和子訳『名前が語る お菓子の歴史』 白水社 ISBN 4-560-03991-7