三すくみ
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三すくみ(さんすくみ、三竦とも書く)とは、3つの物が、互いに得意な相手と苦手な相手を1つずつ持ち、それで三者とも身動きが取れなくなるような状態のこと。つまり、AはBに勝ち、BはCに勝ち、CはAに勝つという関係。
三すくみの例
矢印の向く相手に勝つ、という関係を表す。
- 通常のじゃんけんではグー(石) → チョキ(はさみ) → パー(紙) → グー ……
- 上記のじゃんけんでは「石」は「はさみ」をうち砕き、 「はさみ」は「紙」を切り刻み、 「紙」は「石」を包み込む。下記(星拳)もじゃんけんである。
- 星拳(ほしけん)ではグー(天球)→ チョキ(手の形が通常のじゃんけんと異なる:地球)→ パー(水星)→ グー ……
- ヘビ → カエル → ナメクジ → ヘビ ……
- ヘビはカエルを一飲みにする。ヘビには負けるカエルだが、相手がナメクジならばやすやすと舌でとって食べる。だがカエルに食われるナメクジは、ヘビ毒が効かず、身体の粘液で(カエルより強いはずの)ヘビを溶かしてしまう。(実際にはそのようなことはおこらないが、古い時代の日本ではそう信じられていた。しかしナミヘビ科にはナメクジを捕食する種もいる)このときカエルがナメクジを食べると、その後ヘビに食われてしまうから、ナメクジを食べられない。ヘビ、ナメクジも同様の状態で、このため、三者とも身動きがとれず三すくみとなる。
- 狐けん:狐 → 猟師 → 庄屋 → 狐 ……
- 狐は猟師に鉄砲で撃たれるので狐は猟師に負け、猟師は依頼主の庄屋に負け、庄屋は狐に化かされるので狐に負ける。
- 歩兵 → 騎兵 → 大砲 → 歩兵 ……
- 歩兵の槍衾は騎兵突撃を止め、騎兵突撃は大砲陣地を崩し、大砲の砲撃は歩兵を吹き飛ばす。
- 象 → 人 → アリ → 象 ……
- 象は人を踏み潰し、人はアリを踏みつぶし、アリは象を刺し殺す。ちなみにインドネシア周辺のじゃんけんはこの形になっている。親指が象、人差し指が人間、小指がアリ。
- 炎 → 草 → 水 → 炎 ……
- 炎は草を燃やし、草は水分を吸い取り、水は炎を消す。ポケットモンスターシリーズに見られる三すくみ。
- 皇帝 → 市民 → 奴隷 → 皇帝 ……
- 皇帝は市民を支配し、市民は奴隷をこき使うことで生活設計を立て、奴隷は捨て身の行為で皇帝に襲いかかる。市民は命や生活が惜しいので、皇帝がどんな圧政を行っても逆らえない(皇帝に逆らうと処刑、あるいは市民としての権利を剥奪される)。奴隷は、市民により強制労働を強いられ、市民の生活を支えなければならない。一方で、奴隷はそもそも人間としての権利などは無い(市民のように皇帝に命や生活を人質のように握られておらず、皇帝の支配は何ら受けない)ので命や生活が惜しいなど考えず、殺されてもともとの状態で皇帝に襲いかかる可能性がある。奴隷は皇帝に反逆行為を行ったことで何かを剥奪されることも無い。皇帝にとっては、命や生活が惜しいなどの損得を度外視した反逆行為を受けることは脅威である。即ち、皇帝は奴隷に反逆行為を受けて命を狙われることに常に怯えなければならない。このことから、奴隷は皇帝より強いとされる。賭博黙示録カイジの登場ギャンブル・Eカードに見られる三すくみである。
- 右翼 → 警察 → ヤクザ → 右翼 ……
- 警察はヤクザに対しては暴対法等の法令を駆使して強制捜査や逮捕を行うことが出来るが、言論を利用して警察の不祥事等を街宣する右翼には弱い。一方、右翼はヤクザの実力を背景に威圧感を保って初めて街宣活動の実効性を確保できることから、ヤクザには弱い。武富士創業者の武井保雄はこの3すくみを利用してサラ金の帝王となった。
三すくみの構造
trade-offs(トレードオフズ) 原文「螂蛆食蛇、蛇食蛙、蛙食螂蛆、互相食也」
螂蛆はムカデのこと。正三角形の配置構造を連鎖構造に言葉として表記した。「じゃんけん」の勝負とは異なるが、互いの影響を説明するうえで「三つ巴」や「三すくみ」と表現される説明が多くの理論で利用されている。
経営理論の例
産業組織論(経済学)の主要なパラダイムとして構造 → 行為 → 成果(S-C-P)がある。産業構造がその産業にいる企業の行為(戦略)を決定し、行為が産業の成果を決定し、成果がその産業の構造を決定する。
同様な論理構造として
- 重要制約(Core Constraints)
- 利益 → 技術 → 権利(Economic-Technical-User)
- 物資(Resources)リソース
- ヒト → 作用 → モノ(People-Process-Product)
- 顧客(Customers)カスタマー
- 時間 → 費用 → 品質(Schedule-Budget-Performance)
が上げられている(上記は、矢印の向く方向に強い影響を与え行動を決定させる、関係を表す)。
各要素の影響の強弱は1対1の関係(部分構造)では勝ち、負けである。拮抗状態が全体最適(継続)である各要素が正三角形の位置に配置されている状態である。
三すくみは位置関係と互いの距離によってバランスされている。「蛇」と「蛙」が一呑みで「蛞」から余裕で逃走可能な距離(状態)では成立しないという論理構造である。この状態で、3匹が逃走するためには互いに距離を伸ばす(正三角形が相似的に拡大)する状態と説明される。