アド・バード
テンプレート:Portal 『アド・バード』は、椎名誠によるSF長編小説。『水域』『武装島田倉庫』と共に椎名SF3部作に数えられる。小説誌『すばる』に1987年9月から1989年12月まで連載され、1990年3月に集英社より刊行された。同年、第11回日本SF大賞を受賞した。
あらすじ
K二十一市に住む青年、安東マサルとその弟菊丸は、行方不明となった父が生きていることを知り、マザーK市への旅へ出る。世界はターターとオットマンの両陣営による改造生物を使った広告戦争の結果、荒廃しており、市外を一歩出たところには、何もかも分解して土に変えてしまう科学合成虫ヒゾムシ、鉄を食いつくすワナナキ、触手を持った動く絨毯のような赤舌、そして鳥文字を作ったり人語を話す広告用の鳥アド・バードといった、珍妙不可思議な生物たちがうごめく危険な時代だった。道中で出会ったキンジョーという名の生体アンドロイド(ズルー)と共に、兄弟はマザーK市へ向かう。
解説
この作品の原案は初め、1972年に椎名の友人目黒考二の個人誌『SF通信』(後の『本の雑誌』)の別冊特集号のために書いた、30枚足らずの『アドバタイジング・バード』という作品であった。
『別冊SF通信』に書いた4年後に椎名は、自分の編集している流通業界専門誌『月刊ストアーズレポート』に小売業の宣伝合戦の未来を描いた『クレイジー・キャンペーン』という小説を書き、そこにデパートの屋上に鳥文字を書くメッセンジャーズ・バードを登場させた。
それから2、3年後、創刊間もないSF雑誌『奇想天外』の懸賞小説へ応募するために『アド・バード』というタイトルで100枚の小説を書いたが、落選した。この作品では鳥自身が主人公だった。
集英社の文芸誌『すばる』から小説連載の依頼があった時、椎名はこの『アド・バード』を書かせてもらうよう編集者に頼んだ。当初1年だった連載予定は半年延長されたが、それでも終了せず、結局2年6ヶ月の長期にわたった。結果、全850枚で作者の最長の小説作品となった。
目黒考二曰く、この作品はブライアン・オールディスの異様な植物が蔓延る未来の地球を描いた小説『地球の長い午後』を椎名なりに描いたオマージュであるという[1]。
後にアニメ化の話もあったが、制作は中止された。