STNet
株式会社STNet(エスティネット、STNet Inc.)とは、香川県高松市に本社を置く、電気通信事業者の一つで、システムインテグレーター(ユーザー系)である。四国電力の連結子会社で、四国地方を拠点としている。
また同時に情報システム開発やデータセンターなどの情報システム事業と通信事業の両サービスを1社で提供できる全国的にも数少ない企業でもある。
目次
概要
もともと法人向けサービスを主に提供していたが、2004年10月に個人向けの光ブロードバンドサービス「Pikara(ピカラ)」を開始し、光トリプルサービス(インターネット+電話+放送)や四国地域情報サイト「ピカラタウン」での民放テレビ番組のインターネット配信など、個人向けサービスも拡大してきている。
事業展開は四国内だけにとどまらず、東京にも首都圏営業部、首都圏システム部をおいて、主に四国外の企業向けの情報システム開発を行っている。
同社は、先進的な事業・サービス展開に注力しており、例えば、戸建住宅を含めたすべての住宅向けに光IP電話を全国に先駆けて提供開始したほか、医療施設向けに医療画像や診断レポートの入力/参照などに機能を、データセンターを介してインターネットで提供するシステム「遠隔医療データ連携システム(est)」を全国でいち早く事業化している。
また、各種認証の取得にも積極的に取り組んでおり、ISO9001(品質マネジメントシステム)やJISQ15001(プライバシーマーク制度)、ISO27001(ISMS適合性評価制度)の認証を相次いで取得。これらの取得により、同社は製品品質や個人情報などの情報セキュリティに関しての信頼性は高い。
2009年3月には、25年度を目標年度とする中期戦略を発表し、既存事業分野の強化はもちろん、情報サービスと通信サービスを1社で提供できる強みを活かし、分野横断型事業を展開することを戦略目標とした。具体的には、既存分野の競争力強化や個人分野の事業拡大による収益を活用して、今後の要と位置づけたプラットフォーム分野を重点的に育成することとしている。
沿革
- 1984年7月 - 四国電力の情報システム部門の一部を分離して、「株式会社四電情報ネットワークサービス」として設立
- 1989年7月 - 社名を「株式会社四国情報通信ネットワーク(略称:STNet)」に変更
- 1989年10月 - 第1種電気通信事業を開始
- 1992年5月 - 高松市春日町に情報通信センター(現本店ビル)を開設
- 1996年2月 - 100%子会社の株式会社ネットウェーブ四国を設立し、個人向けISPサービス開始
- 1996年11月 - 東京営業所(現首都圏営業部)設置
- 1997年4月 - 全国の電力系通信事業者との相互接続により全国への専用サービスを開始
- 1997年10月 - 法人向けインターネットサービス(STCN)開始
- 1999年3月 - 資本金を100億円に増資
- 2000年10月 - ソフトウェアの設計・開発に関する品質マネジメントシステム(ISO9001)の認証を取得
- 2001年6月 - 広域イーサネットサービス(ST-WAN)開始
- 2002年2月 - プライバシーマーク制度(JISQ15001)の認証を取得
- 2002年3月 - ISMS適合性評価制度(ISO27001)の認証を取得
- 2002年4月 - 社名を株式会社STNetに変更(この時点ではアルファベットの使用が認められていなかったため、登記上は「株式会社エスティネット」となっていた)
- 2004年10月 - 個人向け光サービス「ピカラ光ネット」「ピカラ光でんわ」開始
- 株式会社ネットウェーブ四国を合併
- 2005年5月 - PHS事業終了
- 2006年10月 - 小規模法人向けインターネットサービス「お仕事ピカラ」サービス開始
事業概要
法人向け通信事業
電気通信事業法をはじめとした電気通信制度の変革が進んでいた1989年10月に、電力系通信事業者のひとつとして第1種電気通信事業(当時)に参入した。当初は専用線サービスが中心であったが、ユーザーニーズがIP系サービスへと移行するのに伴い、法人向けインターネット接続サービスのSTCN、広域イーサネットサービスのST-WANが主力商品となってきている。2006年10月には、四国内の事業所数の約9割を占める中小規模事業所をターゲットにした光インターネット/光IP電話サービス「お仕事ピカラ」の提供を開始し、契約数を伸ばしている。
個人向け通信事業
1996年2月に100%子会社の株式会社ネットウェーブ四国を設立してインターネット接続(ISP)サービスを開始し、2001年3月にはADSLメニューも開始した。その後のブロードバンド化の流れの中で、2004年10月には光ファイバー(FTTH)で提供するインターネットと電話サービス「Pikara(ピカラ)」を開始。同時に、2004年10月にはネットウェーブ四国を吸収合併し、サービスブランドのピカラへの集約を進めている。
ピカラサービスでは、インターネットだけでなく、光電話や地元CATV会社と提携した光放送(CATV)サービスを含めた光トリプルサービスを全国に先駆けて開始したほか、系列の異なる四国内の民放テレビ局の制作番組を数多くインターネット配信する(ピカラタウン)など、業界に先駆けた取り組みに数多くチャレンジしている。
さらに2010年12月には、RBB TODAY主催の「ブロードバンドアワード2010」で、「ベストキャリア(最優秀回線事業者)」および「キャリア・サポート部門」を3年連続で、四国地区における読者投票No.1に選ばれるなど、一般ユーザーから好評価を得ている。
こうしたことが反映され、2010年11月には、サービス開始6年余りで累計申込数が15万件を突破するなど、順調に契約数を伸ばしている。
システム開発事業
四国電力向けの業務システム開発・運用をはじめとして、法人向け業務用ソフトウェアの開発受託やERPソリューションの提供等を行っている。なかでも、オラクルやSAP、SSJのパートナーとしてのERPソリューション、人事労務・給与管理、生産管理などに実績が多い。香川県および香川県医師会と協力して始まった「かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)」の開発受託をきっかけに、医療分野にも重点的に取り組んでいる。
また、システム開発事業の顧客先を首都圏にも拡げており、システム開発だけでなく、情報と通信を一体化させた業務のIT化提案などを行っている。
プラットフォーム事業
同社は、システム開発事業を通信事業の中間領域で、LANやデータセンターなどの利用基盤構築、セキュリティやSaasなど、業務システムや通信サービスを利用するためのIT業務基盤を提供する事業を「プラットフォーム事業」と呼び、主には以下のようなサービスを手掛けている。
ネットワーク・ソリューション事業
自治体や企業向けにLAN(企業内ネットワーク)/WAN(広域エリアネットワーク)を構築するネットワーク・ソリューションサービスを手掛け、通信サービスだけでなく、社内ネットワークインフラから社内業務システムまでを一貫して提供できる体制を整えている。
これらを活かし、徳島県や愛媛県を始めとする地方自治体のネットワーク構築とその運用を受託しているほか、満濃町(香川県)などから地方住民にも利用できる公設民営方式の光インターネット・電話網の構築と運用受託の実績がある。
データ処理/データセンター事業
高松市(香川県)、松山市(愛媛県)に自家発電設備や空調設備を備えたデータセンターを持ち、耐震性を備えた建物に高速通信回線を引き込んだ施設に、IDカードによる入退室管理やカメラによる24時間365日監視のもと、セキュリティを確保し、データ処理サービスやサーバー等のハウジング/ホスティングサービスを提供している。
また、特定のOSやデータベースに縛られない自由なアプリケーション運用を実現する次世代ホスティングサービスである仮想専用サーバーサービス(VPS)も提供している。
情報セキュリティ事業
各種認証取得で得たノウハウを活かし、自治体や企業等に向けたセキュリティ診断を含む情報セキュリティ監査、セキュリティポリシー策定支援やプライバシーマーク、ISMSの認証取得支援などのコンサルティング、技術的セキュリティ対策ツールの構築など、ニーズに合わせた情報セキュリティサービスを提供している。
医療分野事業
多数の依頼側医療施設と中核となる支援側医療施設との間で、データセンターを介し、概要説明と合わせて、撮影した画像(DICOM画像、JPEG画像)の表示や、画像をもとにした診断レポートの入力/参照などの機能をインターネットでやり取りできる「遠隔医療データ連携システム(est)」を提供。
香川県医師会では、このシステムを活用した「かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)」を運営しており、データセンターを活用したセキュアな医療連携ネットワークを提供することで、質の高い医療の提供や医療機関の信頼性向上に貢献しているほか、総務省からも「地域ICT利活用モデル事業 遠隔医療プロジェクト」に指定されている。
STNet中期戦略
同社は、平成15年4月策定の中期経営戦略「STNetの新たなステージを拓く」以降、Pikara光サービスやデータセンターなど新たな事業領域への進出を図ることで、事業ポートフォリオの多様化、事業基盤の拡大を目指してきた。
その一方、情報通信分野では、依然としてユーザーニーズの多様化・高度化と、急速な技術進歩、価格低下が続き、事業者間の競争は従来の閉じた事業分野の中だけでなく、業界を超えた大競争時代に突入し、2008年下期からの不景気も重なって、事業環境はこれまで以上に厳しさを増してきた。
このような背景を踏まえ、同社は、2009年3月に新たな中期戦略を策定した。その概要は以下のとおり。
基本戦略
平成25年度までの今後5年間を、「成長分野および新規分野の育成を積極的に行い、事業/サービスと顧客基盤の多様化によって事業構造のさらなる発展を図る時期」と位置づけ、システム開発分野からプラットフォーム分野、通信分野までを1社で提供できる同社の強みを最大限活かし、異なる分野のサービスを組み合わせた「分野横断型」事業を展開し、また、従来の事業分野をまたがる一体的なサービス提供によって、既存事業分野の競争力も強化することを基本戦略としている。
事業方針
既存分野の競争力強化
従来の主力事業である法人通信分野とシステム開発分野では、プラットフォーム分野等とのシナジーを出すことで商品競争力をさらに強化する。
新たな収益の柱としての個人分野
契約数の拡大によって、個人分野(Pikara光サービス事業)の事業基盤を磐石なものとし、確実に営業収支を好転させ、事業ポートフォリオの次の成長エンジンとすることを目指す。
プラットフォーム分野の戦略的育成
プラットフォーム分野を今後の事業ポートフォリオの要の分野と位置づけ、5年後の成長エンジンとなるよう、投資を伴う重点的な育成を行う。
将来を見据えた事業運営
技術進歩やユーザニーズの変化に迅速に対応する早いサイクルでの設備投資や、将来の事業の核になりうる事業シーズの育成、能力育成のための人材投資などを着実に進める。