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'''ボロト・テムル'''('''Bolod-Temür''', ? - [[1365年]])は、[[元 (王朝)|元]]の将軍。漢字表記は孛羅帖木児。 [[チンギス・カン|チンギス・ハーン]]以来の[[モンゴル]]譜代部将の子孫で、父のタシ・バアトルは[[四川省|四川]]・[[雲南省|雲南]]方面の反乱鎮圧に活躍し[[宰相]]格の中書平章政事にのぼった軍閥である。ボロト・テムルは早くから父に従って反乱軍の討伐に活躍し、父の死後にその軍を引き継いだ。[[1358年]]には河南行省平章政事の肩書きを与えられ、[[河南省|河南]]に派遣されて[[開封]]を占拠する[[劉福通]]らの[[紅巾の乱|紅巾軍]]と戦って河南、[[山東省|山東]]の各地を転戦し、紅巾軍を打ち破って大きな戦功を残した。 [[1359年]]には元の首都[[大都]]の西にある要衝[[大同市|大同]]に入城し、[[山西省|山西]]の北部から[[内モンゴル]]の南辺を支配する大軍閥に成長する。しかし、やがて劉福通との戦いにともに活躍した河南の軍閥[[チャガン・テムル]]と山西南部の[[太原市|太原]]の支配をめぐって争うようになり、この軍閥同士の争いが宮廷における皇太子[[アユルシリダラ]]と、その父[[トゴン・テムル|トゴン・テムル・ハーン]]の側近たちとの権力争いと結びついて深刻な抗争となった。ボロト・テムルはもうひとつの首都[[上都]]に勢力を伸ばしたために中央政府の政治と軍事を一手に握ろうと目論む皇太子アユルシリダラと不和であり、反皇太子派の重要な後ろ盾となったので、皇太子は逆にチャガン・テムルおよびその後を継いだ[[ココ・テムル]]と結んだ。 [[1364年]]、宮廷において反皇太子派の高官が皇太子アユルシリダラによって処刑される事件が起こり、これをとりなして刑の減免を願い出たボロト・テムルも大同駐留を免ぜられる事件が起こった。これを聞いたボロト・テムルはついに決起して軍を[[居庸関]]に送り込んで大都に圧力をかけ、皇太子アユルシリダラを逃亡させるとともに政府に迫って皇太子派の高官を引き渡させた。ボロト・テムルが一旦兵を引くとアユルシリダラはココ・テムルに命じて大同を攻撃する一方、自らは大都に戻って対抗しようとしたが、かえってボロト・テムルが主力の大軍をもって大都に迫ったので、ついにアユルシリダラは大都を脱出して太原のココ・テムルのもとに逃げ込んだ。 ボロト・テムルは大都に入城するとトゴン・テムル・ハーンから中書右丞相に任命され、全権を掌握した。大都においてボロト・テムルは[[宦官]]や[[チベット仏教]]の[[僧侶]]を宮廷から追放してトゴン・テムルの宮廷の弊を払おうとしたが、ハーンの寵臣をはじめ多くの人々を些細な罪で殺害したため、宮廷の不満を買うばかりであった。さらにボロト・テムルに帰京を要請されたアユルシリダラは帰京を拒み、翌年ココ・テムルと結んでついにボロト・テムル打倒の兵をあげた。 ココ・テムルの軍が大都に向けて進軍してくると、ボロト・テムルは迎撃のために軍を送り出したが、迎撃軍はもとより戦意を持たず、アユルシリダラとココ・テムルに降った。ボロト・テムルはこれに驚き、自ら迎撃の軍を率いて出ようとしたが、悪天候のため大都を離れられず失敗した。 ボロト・テムルは苦境に陥ると疑心暗鬼に陥って恐怖政治をひきはじめたので、当初よりその政権に不満を募らせていたトゴン・テムル・ハーンはついにボロト・テムル誅殺の密命を下した。7月、上都において味方が勝利したとの報を受けたボロト・テムルはこれを上奏するために宮殿に向かったが、建物の前の樹下に伏せていた刺客に襲われ、殺害された。 ボロト・テムルの死後、その軍閥はことごとく討ち滅ぼされてアユルシリダラとココ・テムルが政権を奪った。ボロト・テムルはその抜群の戦功にもかかわらず、内紛の中で逆臣として殺害されたので、『[[元史]]』の「逆臣伝」中に伝が残されることとなる。 [[Category:元代の人物|ほろとてむる]] [[Category:1365年没|ほろとてむる]]
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