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'''ファツィオリ'''('''FAZIOLI''')は、[[1981年]]に創業した[[イタリア]]の[[ピアノ]]メーカーである。イタリア語の標準的なアクセントは、後ろから2つ目の音節の母音につくため、「ファツィオーリ」ともカタカナ表記される。綿密な手作業をふんだんに盛り込み、世界で最も高額なピアノ<ref>出典:吉澤ヴィルヘルム著『ピアニストガイド』、青弓社、2006年、227ページ。</ref>として知られている。また[[ファツィオリ#可変式ブリッジによる倍音の調律|独立アリコート方式]]、「[[ファツィオリ#音色の変わらない弱音ペダル|第4ペダル]]」など特殊な設計でも知られる。現時点で世界最長サイズ(奥行き308センチメートル)のモデルも製作している。 == 概要 == 創始者兼現社長、[[パオロ・ファツィオリ]]は、家具職人の家に生まれ、[[ロッシーニ音楽院]]で[[ピアノ]]を、[[ローマ音楽院]]で[[作曲]]を専攻した後、ファツィオリ社を[[1981年]]に創業した。 工場は[[イタリア]]北部の[[サチーレ]]にある。この際、各分野の専門家たちに、ゼロからピアノを設計する計画への参加を要請<ref>『パリ左岸のピアノ工房』、新潮社、2001</ref>。[[ピアノ調律師]]兼製作者のチェーザレ・アウグスト・タローネ([[アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ|ミケランジェリ]]の[[ピアノ調律]]も務めた)の弟子らを招聘し、[[1980年]]に最初のモデルを完成させた。 製品ラインナップは高級[[グランド・ピアノ]]に限定されている。生産量は、[[2009年]]時点で年間120台程度とされる<ref>[http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20081024/174996/ 『日経ビジネス ONLINE』]</ref>。 == 特徴 == === 響板 === ピアノの音色を決定づける[[響板]]は、[[フィエンメ峡谷]]産のレッド[[スプルース]]が使用されている。またファツィオリの響板は、製作が終わってから2年間、空気管理された倉庫で熟成される。 === ハンマーのフェルト === 他メーカーでは機械によるハンマーのフェルト作りが一般的であるが、ファツィオリはフェルトに硬化剤を使用せず、手作業でフェルトを作る<ref>[http://www.fazioli.co.jp/manufacture/index.html#m09 製造・技術情報 | FAZIOLI]</ref>。これにより弾力に優れたハンマーが得られる。 === フレームの鋳造 === 現代の一般的なピアノ製造工程では、ピアノ内部の鉄製フレームを鋳造する際、[[精密鋳造|真空吸引法]]を用いる。これは鋳型の隅々に鉄を確実に流し込み、作業を短時間で進めることができるという利点を持つが、ファツィオリでは、伝統的な方法で時間をかけて鋳造している。 === 可変式ブリッジによる倍音の調律 === 多くのピアノの中高音部の駒からヒッチまでの弦(バックストリング)には倍音を豊かに響かせるためのアリコートブリッジが取り付けられている。通常のアリコートブリッジは一体型で、各音程に毎にアリコートブリッジの位置を独立して調節することは不可能である。ファツィオリでは各音のブリッジを個別に移動できる独立アリコート方式を採用している。ただし、独立式アリコートブリッジはファツィオリのみに見られる特徴ではない。 === 駒の材質の使い分け === ファツィオリでは、駒の基礎(カエデとマホガニーとの積層材)上に貼る木材に[[カエデ]]と[[シデ]]と[[ツゲ]]の3種を用い、硬度の違いを生かして音域ごとに(低音から中音域にカエデ、高音域にシデ、最高音域にツゲ)3種を順に使用するよう設計している<ref>FAZIOLI日本総代理店トピックス[http://www.fazioli.co.jp/new]Fazioli工場見学ビデオ中(28:25版)の12:53~13:22を和訳</ref>。駒の表面の加工も、熟練した職人の手作業で仕上げられる。 === 4番ペダル === 通常の3本のペダルのさらに左側に4番ペダルのあるものがあり、この特許を取得している。このペダルによって、ハンマーと弦の距離が短くなり、同時に鍵盤が浅くなる。ファツィオリはこれを「音色を変えることなく音量のみが小さくなる」としている<ref>[http://www.fazioli.co.jp/manufacture/index.html ファツィオリの技術情報]公式サイト日本語版、2010年11月閲覧</ref>。これによってピアニッシモの効果が得られるだけでなく、グリッサンドや速いパッセージに利点がある。 4番ペダルは、モデルF308のみ、標準仕様である。他機種ではオプションで4本ペダル仕様にすることが可能であるが、追加料金が必要となる。また購入後にペダルの増設はできない。 === 金属部品のメッキ === ファツィオリでは防錆と美観を考慮し、金属部品に金[[めっき|メッキ]]処理を採用している。 == 現行機種一覧 == ファツィオリは、6種類のグランド・ピアノを製造している。<ref>[http://www.fazioli.com/eng/modelli.php The six models (F156 - F308)]([http://www.fazioli.com/ 公式サイト])</ref> *F156 *F183 *F212 *F228:通常のセミ・コンサート・グランド・ピアノ *F278:通常のフル・コンサート・グランド・ピアノ *F308:ファツィオリ独自の特大コンサート・グランド・ピアノ 機種番号のFに続く数字は、ピアノの奥行きを([[cm]]単位で)表している。 ===日本における納入先施設=== 一般に開かれている施設を、以下に納入順で記す。 {| class="sortable wikitable" |+ 日本国内のファツィオリ納入先施設(一般公開) ! 納入順 !! 施設名 !! 場所 !! 納入機種 !! ペダル !! 納入時期 !! 使用できるホールの客席数 !! 備考 |- | 1 | style="width:23%" | [[栗東芸術文化会館さきら]] | style="width:12%" | [[滋賀県]][[栗東市]] | style="width:6%" | F278 | style="width:5%" | 3本 | style="width:10%" | | style="width:15%" | 小ホール149席<br> 中ホール406席<br> 大ホール810席 | 日本で初めてファツィオリを納入したホール。 |- | 2 || [[北上市文化交流センター]] || [[岩手県]][[北上市]] || F278 || 3本 || || 小ホール264席<br> 中ホール461席<br> 大ホール1406席|| 2005年10月に[[アルド・チッコリーニ]]が再来日し、ファツィオリを演奏。 |- | 3 || [[石川県こまつ芸術劇場うらら]] || [[石川県]][[小松市]] || F212 || 3本 || ||小ホール250席|| 詳細は公開されていない。 |- | 4 || [[仙川アヴェニュー・ホール“ve quanto ho......”]] || [[東京都]][[調布市]] || Silver (F228) || 4本 || 2009年春公開 || 160席前後(増減可) || 一般利用可能なホールとして関東初、4本ペダル装備モデルとして日本初。[[ノーマン・フォスター]]のデザインによる特別モデル"Silver"で、アートケース・コレクションとしても日本初登場。 |} 広く一般に開かれていない施設を、以下に納入順で記す。 {| class="wikitable" |+ 日本国内のファツィオリ納入先施設 ! 施設名 !! 場所 !! 納入機種 !! ペダル !! 納入時期 !! 客席数 !! 備考 |- | [[幕張ベイタウン・コア]] || [[千葉県]][[千葉市]][[美浜区]] || F278 || 3本 || 2002年4月26日 || 200席 || 東日本初の導入で、市民運動により選定・募金により購入された。幕張ベイタウン自治会連合会所有。地域ボランティアスタッフによる管理。使用は地元[[幕張ベイタウン]]関連団体主催、または共催イベントのみ許可(審査あり)。観客に対する制限はない。 |- | [[渋谷教育学園幕張中学校・高等学校]]田村記念講堂 || [[千葉県]][[千葉市]][[美浜区]] || F278 || 3本 || 2009年 || || 非一般公開:学内用途のみ。 |} ===海外における納入先施設=== *[[ジュリアード音楽院]]:1924年から、名器として[[スタインウェイ]]しか学内への納入を認めない体制が貫かれてきたが(学内にある300台弱のピアノすべてが[[スタインウェイ]])、2010年それがほどかれ、[[アメリカ]]随一の名門である同院がファツィオリを第一線の名器と認定し、ファツィオリの注文・納入を開始した<ref>[http://www.theglobeandmail.com/news/arts/music/juilliard-breaks-with-all-steinway-tradition-purchases-a-fazioli/article1960468/ The Globe Life Newsletter]"Juilliard breaks with all-Steinway tradition, purchases a Fazioli "、2011年3月29日</ref>。 ==関連項目== 以下のコンクールのピアノとして採用された。 *[[高松国際ピアノコンクール]](2010年~) *[[ヨーロッパ国際ピアノコンクール・イン・ジャパン]](2010年~) *[[ショパン国際ピアノコンクール]](2010年) *[[フランツ・リスト国際ピアノコンクール]](2011年) *[[チャイコフスキー国際コンクール]](2011年)<ref>[http://www.fazioli.co.jp/new FAZIOLI日本総代理店トピックス]([http://www.fazioli.com/ 公式サイト])</ref>。 ==脚注== <div class="references-small"><references/></div> ==参考文献== *斎藤信哉著『ピアノはなぜ黒いのか』(幻冬舎) *吉澤ヴィルヘルム著『ピアニストガイド』(青弓社) ==外部リンク== *[http://www.fazioli.com/ 公式サイト] *[http://www.fazioli.co.jp/ 日本総代理店] {{DEFAULTSORT:ふあついおり}} [[category:ピアノメーカー]] [[Category:イタリアの企業]]
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