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[[Image:Zeeman effect.png|thumb|ゼーマン効果の模式図。磁場がない場合は縮退している軌道エネルギー(左)が、磁場がかかることで分裂する(右)。]] [[Image:ZeemanEffect.GIF|thumb|ナトリウムD線のゼーマン効果の観測結果。3本以上に分裂していることが分かる。]] '''ゼーマン効果'''(ゼーマンこうか、''Zeeman effect'')は[[原子]]から放出される[[電磁波]]の[[スペクトル]]において、[[磁場]]が無いときには単一[[波長]]であったスペクトル線が、原子を磁場中においた場合には複数のスペクトル線に分裂する現象である。 [[1896年]]にオランダの物理学者[[ピーター・ゼーマン]]がナトリウム原子を磁場の中で発光させた時にその[[D線]]のスペクトルが数本に分かれることを発見した。発見された1890年代は、原子の内部構造の研究が進められていた時代で、原子中に振動する荷電粒子が存在することの証拠の1つの現象とされた。 [[ヘンドリック・ローレンツ]]、[[ジョセフ・ラーモア]]などによってこの現象の理論的な検討がなされた。ローレンツの[[古典電磁気学]]による理論を元にゼーマンは光を放射している荷電粒子は負の電荷を持ち、その[[比電荷]]を約1/1600と決定した。これはほぼ同時期に[[ジョセフ・ジョン・トムソン]]らによって測定されていた[[陰極線]]の構成粒子のそれとほぼ同じ値であった。ゼーマンとローレンツはこれらの研究により1902年の[[ノーベル物理学賞]]を受賞した。 磁場のない場合においては、[[主量子数]]nと[[方位量子数]]lが等しく[[磁気量子数]]m<sub>l</sub>だけが異なる軌道のエネルギーは[[縮退]]している。 しかし磁場の存在する場合には、[[磁気量子数]]と磁場の積に比例して各軌道のエネルギーが変化して縮退が解ける。この磁場による[[エネルギー準位]]の分裂を'''ゼーマン分裂'''という。電子遷移の[[選択律]]はΔm<sub>l</sub>=0,±1であるから、スペクトル線は3本に分裂することになる。 このようなスピン角運動量を無視して軌道角運動量のみを考えたときの分裂を'''正常ゼーマン効果'''という。 正常ゼーマン効果において放出される電磁波には[[異方性]]が存在する。かけた磁場に対して平行な方向にはΔm<sub>l</sub>=±1の遷移による光が放出される。そしてΔm<sub>l</sub>=+1とΔm<sub>l</sub>=-1の遷移に対応する光はそれぞれ逆向きに回転する円偏光となっている。かけた磁場に対して垂直な方向にはすべての遷移による光が放出され、それらの光は直線偏光となっている。Δm<sub>l</sub>=0の遷移による光は磁場と平行な方向に偏光している。それに対し、Δm<sub>l</sub>=±1は磁場と直角の方向に偏光している。Δm<sub>l</sub>=±1の遷移による光は'''σ線'''、Δm<sub>l</sub>=0の遷移による光は'''π線'''と呼ばれる。 多くの原子の場合には、より複雑なスペクトル線の分裂が見られる。このスピン角運動量と軌道角運動量の両方を考慮した場合の分裂を'''異常ゼーマン効果'''という。ゼーマンが最初に発見したナトリウムのD線の分裂においても、より詳しく調べると複雑な分裂があることが発見された。これは古典電磁気学では説明できず、発見後長らく謎とされていた。[[量子力学]]の成立後、電子の[[スピン角運動量]]と[[軌道角運動量]]がカップリングする結果、より複雑なエネルギー準位の分裂が起こることが原因と分かった。 ==関連記事== *[[縮退]] *[[シュタルク効果]] *[[核磁気共鳴]] *[[MRI]] {{DEFAULTSORT:せえまんこうか}} [[Category:固体物理学]] [[Category:量子力学]] [[Category:物理化学の現象]] [[Category:電磁波]]
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