アルバート・マイケルソンのソースを表示

{{Infobox scientist
| name        = アルバート・エイブラハム・マイケルソン
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'''アルバート・エイブラハム・マイケルソン'''（'''Albert Abraham Michelson''', [[1852年]][[12月19日]] - [[1931年]][[5月9日]]）は、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[物理学者]]。[[アメリカ海軍]][[士官]]。[[光速度]]や[[エーテル (物理)|エーテル]]についての研究を行った。[[1907年]]、[[光学]]に関する研究によって[[ノーベル物理学賞]]を受賞した。これは科学部門における、アメリカ人初の受賞でもある。

== 生涯 ==
[[プロイセン王国]]のストシェルノ（現在の[[ポーランド]]領）で、ユダヤ人一家に生まれる<ref>[http://www.aip.org/history/gap/Michelson/Michelson.html Albert Abraham Michelson] Selected Papers of Great American Physicists</ref>。2歳の時に両親とともにアメリカへ渡った。父は鉱山町で商人として働いていたため、マイケルソンは[[カリフォルニア州]]マーフィーズや[[ネバダ州]][[バージニア・シティー]]といった町で育った。高校時代は[[サンフランシスコ]]の叔母の下で過ごした。なお、この叔母の娘が[[作家]]となった [[:en:Harriet Lane Levy|Harriet Lane Levy]] である<ref name="Levy-47">Levy, ''920 O'Farrell Street'', 47.</ref>。

1869年、大統領[[ユリシーズ・グラント]]の命によって[[海軍兵学校 (アメリカ合衆国)|アメリカ海軍兵学校]]に入学。そこで4年間、[[光学]]、[[熱]]、[[気候学]]、製図などを学んだ。1873年に卒業すると[[アメリカ海軍|海軍]]に入隊して2年間洋上で過ごし、1875年には兵学校に戻って1879年まで[[化学]]と[[物理学]]の講師を務めた。1879年、ワシントンの航海年鑑局に異動となり、[[サイモン・ニューカム]]と共に働くようになった。しかし翌年彼は休暇を願い出て、ヨーロッパで学ぶための旅に出た。[[ベルリン]]や[[ハイデルベルク]]の大学、パリの[[コレージュ・ド・フランス]]や[[エコール・ポリテクニーク]]を訪れている。

マイケルソンは科学に魅了され、特に[[光速]]度の測定という問題に惹かれるようになる。1877年、兵学校での授業の一環として[[アナポリス (メリーランド州)|アナポリス]]で光速度測定実験を初めて行った。ヨーロッパで二年間学んだ後、[[1881年]]に海軍を退官。このころ[[マイケルソン干渉計]]を発明。1883年、[[オハイオ州]][[クリーブランド (オハイオ州)|クリーブランド]]の[[ケース・ウェスタン・リザーブ大学|ケース工科大学]]で物理学教授の職を得、そこで[[干渉法|干渉計]]の改良に取り組んだ。1887年、[[エドワード・モーリー]]と共に有名な[[マイケルソン・モーリーの実験]]を行い、[[エーテル (物理)|エーテル]]の存在を事実上否定することになった。その後[[天体干渉計]]を使った天体観測に転向し、天体の直径の測定や[[連星]]の距離の測定などを行った。

1889年、[[マサチューセッツ州]][[ウースター (マサチューセッツ州)|ウースター]]の[[クラーク大学]]の教授となる。1892年には新たに創設された[[シカゴ大学]]物理学部門の学部長に就任した。

1899年に結婚。1人の息子と3人の娘をもうけた。

1907年、「干渉計の考案とそれによる分光学およびメートル原器の研究」によりアメリカ人初の[[ノーベル物理学賞]]を受賞。同年、[[コプリ・メダル]]も受賞した。また、1916年には[[ヘンリー・ドレイパー・メダル]]、1923年には[[王立天文学会ゴールドメダル]]を受賞。[[月]]には彼の名を冠した[[クレーター]]がある。

78歳のとき、[[カリフォルニア州]][[パサデナ (カリフォルニア州)|パサデナ]]で死去。シカゴ大学には彼の名を冠した建物 [http://michelson-house.uchicago.edu Michelson House] がある。ケース・ウェスタン・リザーブ大学にも彼の名を冠した建物があり、[[海軍兵学校 (アメリカ合衆国)|アメリカ海軍兵学校]]の化学部門の建物もマイケルソンの名を冠している。カリフォルニア州リッジクレストの[[チャイナレイク海軍武器補給所]]にあるマイケルソン研究所もマイケルソンに因んだものである。

== 光速度 ==
[[ファイル:Michelson - Experimental Determination of the Speed of Light, p 1.jpg|thumb|210px|マイケルソンの ''Experimental Determination of the Velocity of Light'' の1ページ]]

=== 初期の測定 ===
[[File:Albert_Abraham_Michelson_1918.jpg|thumb|230px|第一次世界大戦の際にアメリカ海軍で士官をしていた頃に撮影された写真]]

[[アメリカ海軍]]士官だった1877年ごろから、マイケルソンは[[レオン・フーコー]]の回転鏡を使った光速度測定法の改良を計画し始めている。1878年、大幅に改良した装置を使った最初の測定を行い、同様の研究を計画していた[[サイモン・ニューカム]]に注目されるようになった。1879年、マイケルソンは 299,910±50&nbsp;km/s という測定値を発表しており、その後[[ワシントンD.C.]]の[[サイモン・ニューカム]]の下でニューカムの測定実験の助手を務めることになった。その後2人は親友となり、長い協力関係を築くことになる。

ニューカムのプロジェクトは資金も潤沢で、299,860±30&nbsp;km/s という測定値を得ている。これはマイケルソンのそれまでの結果よりさらに正確である。マイケルソンはその後も技法の改良に取り組み、1883年に 299,853±60&nbsp;km/s という測定結果を発表。ニューカムのものよりさらに正確さが増している。

=== ウィルソン山での測定 ===
1906年、[[アメリカ国立標準技術研究所|アメリカ国立標準局]]の E. B. Rosa と N. E. Dorsey が電気を使った全く新たな測定法を考案し、299,781±10&nbsp;km/s という測定値を得た。ただし当時の電気に関する知識の不足から、後にこの測定値は低い方に偏っていたことが判明している。

1920年からマイケルソンは[[ウィルソン山天文台]]で最終的な光速度の測定を行う計画を立て始めた。それは、ウィルソン山から東に22マイルほど離れたサンアントニオ山の南の稜に突き出たルックアウト山までを基線とする計画である。

1922年、米国沿岸測地測量局は2年をかけ、新たに利用可能となった[[インバー]]のテープを使ってその基線の測量を綿密に行った。1924年に基線の長さが確定すると、さらに2年をかけて光速度の測定を行い 299,796±4&nbsp;km/s という値を得た<ref>{{cite web | url = http://www.pvaa.us/nightwatch/GeodeticMeasurementOfUnusuallyHighAccuracy.pdf | last = Garner | first = C. L., Captain (retired) | title = A Geodetic Measurement of Unusually High Accuracy | journal = U. S. Coast and Geodetic Survey Journal | date = April 1949 | pages = 68–74 | publisher = Coast and Geodetic Survey | accessdate = 2009-08-13 }}</ref>。

この測定は、山火事で発生した煙で鏡像がぼやけるなど多数の問題に見舞われたことでも有名である。また、1925年6月29日に[[マグニチュード]]6.3の[[サンタバーバラ]][[地震]]が起き、基線の測量に100万分の1程度の誤差が生じたと見られている。

=== 最後の測定 ===
1927年以降、[[電子光学]]機器を使った全く新しい[[光速]]度測定法が開発された。それによって得られた光速度は1926年のマイケルソンの測定値よりもことごとく低かった。

マイケルソンは新たな測定法を捜し求め、大気の影響を避けるために真空にしたチューブを使うことを考えた。1930年、[[フランシス・ピーズ]]やフレッド・ピアソンと共に[[カリフォルニア州]][[パサデナ (カリフォルニア州)|パサデナ]]で 1.6&nbsp;[[キロメートル|km]] の真空チューブを建設し、測定を開始した。233回の一連の測定のうち36回が完了した時点でマイケルソンは亡くなった。その後地質的不安定さなどの問題に見舞われたが、1935年に発表された測定値 299,774±11&nbsp;km/s は電子光学的測定法の結果とほぼ同じだった。

=== 干渉測定 ===
1887年、[[ケース・ウェスタン・リザーブ大学|ウェスタン・リザーブ大学]]の[[エドワード・モーリー]]とともに、当時[[光]]の媒質として仮想されていた[[エーテル (物理)|エーテル]]を検出するため、[[公転|公転運動]]する[[地球]]とエーテルの相対運動による[[光波]]の[[干渉 (物理学)|干渉]]を検出する実験を繰り返した（[[マイケルソン・モーリーの実験]]）。ところが、もしもエーテルが光の媒質として存在するのなら当然生じるはずの干渉現象が見出されなかった。マイケルソンはその結果に驚き、翌年もさらに精度を上げて実験を繰り返したが、やはり干渉は起きなかった。この実験結果の影響は大きく、干渉が起きなかったことを説明するために[[ヘンドリック・ローレンツ]]が[[ローレンツ収縮]]の方程式を考案したほどである。

このことはあらゆる方向に運動する物体から観測する光速度は常に一定であるという「[[光速度不変の原理]]」の発見につながり、のちに[[アルベルト・アインシュタイン]]の[[特殊相対性理論]]の根拠となった。そのため、極めて意義の大きい失敗と言える。なお、アインシュタインが特殊相対性理論を構築する際にマイケルソン・モーリーの実験のことを知っていたかどうかという歴史的議論もあった（特殊相対性理論では、エーテルは「不要」とされている）<ref>アインシュタインは1905年の論文 ''[[:en:On the Electrodynamics of Moving Bodies|On the Electrodynamics of Moving Bodies]]'' でマイケルソン・モーリーの実験と思われるものに言及しているが、その描写から別の実験を指しているという説もある。</ref><ref>Holton, Gerald, "Einstein, Michelson, and the 'Crucial' Experiment", ''Isis'', Vol. 60, No. 2 (Summer, 1969), pp. 133-197</ref>。

== 天文学における干渉測定 ==
1920年から1921年にかけて、マイケルソンと[[フランシス・ピーズ]]は世界で初めて太陽以外の恒星の直径を測定した。彼らは[[ウィルソン山天文台]]の[[天体干渉計]]を使い、[[ベテルギウス]]の直径を測定。この技法を後に[[アントワーヌ・ラベリー]]が発展させた。マイケルソンはその後、天体の直径や連星の距離の測定を主に研究するようになった。

== ポップカルチャーにおけるマイケルソン ==
『[[ボナンザ (テレビドラマ)|ボナンザ]]』というテレビ番組（西部劇）の1エピソード（''Look to the Stars''、1962年3月18日放送）で、主人公は16歳のアルバート・マイケルソンが海軍兵学校に入学するのを助ける。『ボナンザ』はマイケルソンが海軍兵学校に入学する前に住んでいだネバダ州[[バージニア・シティー]]が舞台となっていた。エピソードの最後に主人公の[[ボイスオーバー|ナレーション]]で、マイケルソンが1907年に[[ノーベル賞]]を受賞したことが語られている。

カリフォルニア州マーフィーズでマイケルソンが住んでいた家は、[[:en:Twisted Oak Winery|Twisted Oak Winery]] というワイナリーのテイスティングルームになっている。

== 受賞と栄誉 ==
[[ファイル:Michaelson experiment annapolis.JPG|thumb|230px|[[海軍兵学校 (アメリカ合衆国)|アメリカ海軍兵学校]]にあるマーカー。マイケルソンが光速度の測定実験を行った経路を示している。]]

* フェローまたは会員資格: [[王立協会]]<ref>{{FRS |code = NA721 |title = Michelson; Albert Abraham (1852 - 1931) |accessdate = 2011-12-11 }}</ref>、[[米国科学アカデミー]]、[[アメリカ物理学会]]、[[アメリカ科学振興協会]]
* [[ノーベル物理学賞]] (1907)
* [[ランフォード賞]] (1888)
* [[マテウチ・メダル]] (1903)
* [[コプリ・メダル]] (1907)
* [[エリオット・クレッソン・メダル]] (1912)
* [[王立天文学会ゴールドメダル]] (1923)
* [[フランクリン・メダル]] (1923)

== 脚注・出典 ==
{{Wikisource author|Albert Abraham Michelson|アルバート・マイケルソン}}
{{Wikiquote|en:Albert Abraham Michelson|アルバート・マイケルソン}}
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
* {{cite book | last=Livingston | first=D. M. | title=The Master of Light: A Biography of Albert A. Michelson | year=1973 | isbn=0226487113}}
* {{cite book | last=Levy | first=Harriet Lane | authorlink=| title=920 O'Farrell Street | publisher=Heyday Books | year=1996 | location=Berkeley | isbn=0930588916}}

== 外部リンク ==
* [http://spaceinfo.jaxa.jp/note/kagaku/j/kag108_michelson.html スペース百科 アルバート・マイケルソン]
* [http://www1.odn.ne.jp/jsbach/yougo/ka/sokutei.html 光速度の測定]
* [http://books.nap.edu/books/0309025184/html/282.html Albert Abraham Michelson National Academy of Science]
* [http://www.aip.org/history/gap/Michelson/Michelson.html Michelson's Life and Works from the American Institute of Physics]
* [http://www.usna.edu/LibExhibits/Michelson/Michelson_navy.html U. S. Naval Academy and The Navy]
* [http://michelson-house.uchicago.edu Michelson House at the University of Chicago]
* [http://nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/1907/michelson-bio.html Michelson's Nobel Prize Biography]
* {{gutenberg author|id=Albert_A._Michelson|name=Albert Abraham Michelson}}
** ''[http://www.gutenberg.net/browse/BIBREC/BR11753.HTM Experimental Determination of the Velocity of Light]''
* [http://www.imdb.com/title/tt0529603/ IMDB: Bonanza episode ''Look to the Stars'']
* [http://www.laphamsquarterly.org/voices-in-time/norman-maclean-learns-from-the-master.php?page=all Norman Maclean: ''"Billiards Is a Good Game": Gamesmanship and America’s First Nobel Prize Scientist''; reprinted in Lapham's Quarterly]
*  [http://www.navair.navy.mil/nawcwd/nawcwd/news/2008/2008-02_michelson.htm NAWS China Lake]

{{ノーベル物理学賞受賞者 (1901年-1925年)}}

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[[Category:アメリカ合衆国の物理学者]]
[[Category:ノーベル物理学賞受賞者]]
[[Category:シカゴ大学の教員]]
[[Category:クラーク大学の教員]]
[[Category:ケース・ウェスタン・リザーブ大学の教員]]
[[Category:ポーランド系アメリカ人]]
[[Category:東欧ユダヤ系アメリカ人]]
[[Category:1852年生]]
[[Category:1931年没]]