JFK (映画)

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テンプレート:Infobox FilmJFK』(テンプレート:En)は1991年アメリカ映画ケネディ大統領暗殺事件の捜査に執念を燃やす地方検事ジム・ギャリソンケビン・コスナー)を中心に描いた現代史ミステリー。大統領暗殺をめぐる唯一の訴訟であるクレイ・ショー裁判にいたる捜査を題材として描いている。

第64回アカデミー賞撮影賞と編集賞を受賞した。

劇場公開版の時点で、上映時間3時間を超える大作だった。公開と同じ1991年、さらに長いディレクターズ・カット版(約206分)がビデオ発売された。

主として、リー・ハーヴェイ・オズワルドCIAマフィアや大物政治家がケネディ暗殺の犯人あるいは黒幕らしいとして語られるが、この映画は独自の説に基づいて展開されている。この独自の説の材料は1980年代に発表されていたものの、この映画により一躍知名度を高めた[1]

あらすじ

ニューオーリンズの地方検事であるジム・ギャリソンは、昼食中に大統領暗殺の第一報を受けた。しかし、直後に逮捕されるリー・ハーヴェイ・オズワルドという人物に、彼は大多数のアメリカ人とは別のショックを受ける。ニューオーリンズの法曹関係者の間ではオズワルドという男は有名人であったからである。 オズワルドは不思議な過去を持ち、奇行を繰り返し、キューバ人の団体とトラブルを起こしていた人物だった。彼はすぐにこの人物の調査を始めるも、大統領暗殺事件の二日後にさらに事件が起こった。マスコミや大勢の警官がいるさなか、オズワルドが警察署の中でジャック・ルビーという男に射殺されたのだ。 それから約3年後、ギャリソンはウォーレン委員会の報告書を何度も読破し、調べれば調べるほど事件の矛盾点や疑問点という名の霧が彼を包む。そしてその霧が一気に雹となって彼の体を叩く。この瞬間、名誉も仕事も家族も捨て去ることになる、彼と合衆国との長い戦いが始まったのだった。

典拠

原案はジム・ギャリソン(Jim Garrison)の『On the Trail of the Assassins: My Investigation and Prosecution of the Murder of President Kennedy』(邦訳: ジム・ギャリソン『JFK ケネディ暗殺犯を追え』、岩瀬孝雄訳、ハヤカワ文庫NF:早川書房 1992年)及びジム・マース(Jim Marrs)の『Crossfire: The Plot That Killed Kennedy』。ジム・ギャリソンは実在の元検事、ジム・マースはケネディ暗殺事件の研究家(映画は事実に虚構を織り交ぜたフィクションである)。

参考書籍は、オリバー・ストーン、ザカリー・スクラー 『JFK ケネディ暗殺の真相を追って』(テンプリント 1993年)。映画を巡る論争、注釈付シナリオを収録している。

スタッフ

キャスト

メインキャスト

()内は日本語吹替完声版の追加録音時のキャスト

役名 俳優 日本語吹き替え
ソフト版[2] TV版
ジム・ギャリソン ケビン・コスナー 津嘉山正種
クレー・ショー トミー・リー・ジョーンズ 小川真司 小林清志
ウィリー・オキーフ ケヴィン・ベーコン 金尾哲夫 田原アルノ
スージー・コックス ローリー・メトカーフ 弘中くみ子 小山茉美
リー・ハーヴェイ・オズワルド ゲイリー・オールドマン 牛山茂 田中亮一
ビル・ブロザード マイケル・ルーカー 納谷六朗 辻親八
ルー・アイヴォン ジェイ・O・サンダース 大塚明夫 石塚運昇
リズ・ギャリソン シシー・スペイセク 神保共子 弥永和子
ジャック・マーティン ジャック・レモン 山野史人 阪脩
デイヴィッド・フェリー ジョー・ペシ 青野武 江原正士
アル・オーサー ゲイリー・グラッブス 田中正彦 小杉十郎太
ヌーマ・ベルテル ウェイン・ナイト 福田信昭 桜井敏治
ローズ・チェラミー サリー・カークランド
FBI広報官 ロン・ジャクソン 小島敏彦
リー・バウアーズ プルイット・テイラー・ヴィンス 土師孝也 福田信昭
ガイ・バニスター エドワード・アズナー 筈見純 加藤精三
ジャック・ルビー ブライアン・ドイル=マーレイ 円谷文彦 今西正男
上院議員ロング ウォルター・マッソー 藤本譲 村松康雄
ディーン・アンドリュース ジョン・キャンディ 笹岡繁蔵 増岡弘
ジャスパー・ギャリソン ショーン・ストーン 安達忍
ヴァージニア・ギャリソン エイミー・ロング 川田妙子
スナッパー・ギャリソン スコット・クルーガー
エリザベス・ギャリソン アリソン・プラット・ディヴィス
ビル・ニューマン ヴィンセント・ドノフリオ
X大佐 ドナルド・サザーランド 内田稔 家弓家正
マリナ・オズワルド ベアタ・ポズニアック 安永沙都子
フランク ウェイン・ティペット 仲野裕
ベーカー巡査 ビル・ピックル 荒川太朗
Mr.ゴールドバーグ ロン・リフキン
ジュリア・アン・マーサー ジョー・アンダーソン 土井美加
ビヴァリー・オリヴァー ロリータ・ダヴィドヴィッチ 安達忍 深見梨加
検視官 ハロルド・G・ハーサム 緒方賢一
アール・ウォーレン最高裁長官 ジム・ギャリソン 吉水慶 加藤精三
エドワード・ハガーティ判事 ジョン・フィネガン 峰恵研
陪審長 ロイズ・T・バーガーロン 城山堅
ジェリー・ジョンソン ジョン・ラロケット 手塚秀彰
偽オズワルド 落合弘治
冒頭のナレーション マーティン・シーン 内田稔 糸博

カメオ

原案者であり主人公のモデルであるジム・ギャリソン本人が、大統領暗殺事件調査委員会(ウォーレン委員会)委員長であるアール・ウォーレン最高裁長官役で出演している。

日本語吹き替え版

ソフト版

ワーナー・ホーム・ビデオより発売されたVHSには劇場公開版の日本語吹替音声として収録。 ワーナー・ホーム・ビデオ版のディレクターズ・カット版収録のDVDには日本語吹き替え未収録。

20世紀フォックスホームエンタテイメントより発売のBD・DVD版ではディレクターズカット版本編の追加シーンに吹替音声を追加収録した「ディレクターズ・カット/日本語吹替完声版」として収録。

翻訳:進藤光太(追加シーン分:平田百合子)、演出:福永莞爾、録音・調整:山下裕康(山本隆行)、VTR編集:松村卓朗、音響制作:相原正之、中西真澄、日本語版制作:ワーナー・ホーム・ビデオ、プロセンスタジオ(東北新社、20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン)

その他の声の出演:有本欽隆伊井篤史磯辺万沙子一城みゆ希、糸博、伊藤和晃小室正幸、小島敏彦、定岡小百合佐藤しのぶ鈴木勝美、辻親八、中多和宏西宏子藤生聖子水野龍司

追加録音分その他キャスト:根本泰彦茜部真弓坂井恭子町田政則岡田栄美西村太佑こねり翔

TV版

初回放送1994年10月9日(日)テレビ朝日日曜洋画劇場

翻訳:たかしまちせこ、演出:福永莞爾、調整:荒井孝、制作:東北新社、プロデューサー:圓井一夫

その他の声の出演:有本欽隆、岩田安生池水通洋、伊井篤史、叶木翔子瀬畑奈津子火野カチコ宝亀克寿堀越真己宮田光幹本雄之

受賞歴

  • 1991年アカデミー賞
    • 撮影賞:ロバート・リチャードソン
    • 編集賞:ジョー・ハッシング、ピエトロ・スカリア

モデル

ドナルド・サザーランド演ずる「X大佐」のモデルはフレッチャー・プラウティであるとされている。プラウティの著書『JFK: The Cia, Vietnam, and the Plot to Assassinate John F. Kennedy』(Citadel; Upd Sub edition, 2003)にはオリバー・ストーンが序文を寄せている。

反証

この映画は、いくつかの陰謀説の書籍をミックスして脚本を構成しているが、これに関しては、不確かな情報と、誇張・拡大解釈の為、反証も存在する。

映画では語られなかったいくつかの事実

  • グラシノールの丘に落ちていた歯型の付いた薬きょうの存在

劇中でも「グラシノールの丘から撃った人間がいる」という証言の描写があるが、「大統領は自分が撃ち、歯型の付いた薬きょうをグラシノールの丘に置いてきた」という証言をする男が後になって現れた。 映画の原作者であるJFK暗殺事件研究家のジム・マーズは歯型の付いた薬きょうの存在を早くから知っていたが、確証が無く映画制作時でもこの事は公にはしていなかった。 見つかった薬きょうは「レミントン・ファイヤーボール」という小型のライフル銃の物であり、火薬の量が少し多目の初期型の物であると断定されている。実行犯だと名乗り出た男も「グラシノールの丘からレミントン・ファイヤーボールで大統領を撃った」と証言している。 ケネディ大統領のパレードの護衛を担当していた白バイ警官の無線通話記録に入っていた合計4発に聞える銃声と思しき一発が、日本音響研究所の鑑定により内一発が「レミントン・ファイヤーボール」の銃声に極めて近いとの鑑定結果が出ていた。

  • 短すぎる2発目と3発目の銃声の間隔

白バイ警官の無線通信に記録された4発の銃声は一定の間隔で放たれているが、2発目と3発目の銃声の間だけ2秒以下という非常に短い間隔だった。3発目は2発目の銃声のこだまだとする意見もあるが、それならば1発目と3発目の銃声にもこだまが入っておらねばならず、この理論は成立しない。いかにオズワルドが射撃の名手であろうとも、作りの荒いカルカノで2秒以下の間隔で弾丸を連射するのはほぼ不可能である。

  • ケネディの喉と頭部を撃ちぬいた弾丸の方向

ウォーレン報告書では教科書倉庫ビルの6階からオズワルドがケネディを撃ったとされているが、ケネディの喉の銃創の射出口と射入口がほぼ水平に入っていたと検視で明らかになっている。 教科書ビル6階から撃ったとすると、弾の角度はやや上から下に入らねばならず、ケネディが少し前にかがみでもしない限り成立しない角度である。 ザプルーダフィルムを見る限りでも、ケネディは喉を撃ちぬかれる直前は前にかがんでおらず、上半身をほぼ垂直にして座っていた。 また、ケネディの頭部を撃ち抜いた弾はザプルーダフィルムを見る限りでは、「ケネディが後ろの方向に仰け反っているので前方からの射撃」と映画でも主張しているが、弾丸で撃ち抜かれた場合、射入口よりも射出口の傷が大きくなり、射出口の部分の向きとは反対方向に仰け反る場合もあると、実験結果により断定されている。 しかし使用された弾丸がダムダム弾と思われる場合、弾が硬いものに当たった瞬間に砕けるので、その場合は撃たれた方向とは反対に仰け反るとの実験結果も出ている。

  • コナリー知事の証言

コナリ-知事は「ケネディ大統領の方を振り向いた時には大統領はすでに喉を撃たれており、自分はその直後に撃たれた」と、早い段階から本人の証言があったが、ウォ-レン委員会の報告書ではこの証言はついに取り上げられなかった。この証言が事実だとするとケネディ大統領とコナリー知事は別々の弾丸で狙撃されたことになり、ウォ-レン報告書の内容とは矛盾している。

  • 大きく切開されたケネディの喉の傷

パークランド病院で遺体を検視をした関係者の証言によると、ケネディの遺体の喉の傷はそれほど大きくはなく小さい穴が開いていただけであったと証言している。このことから当初は喉の傷は弾丸の射入口だと判断していた。しかし、ベセスダ海軍病院で検視をした検視官の証言によると、ケネディの遺体の喉の傷は大きく切開された跡があると、複数の検視官が証言している。これはウォーレン報告書の通りに、後方からの射撃になるように遺体の傷を捏造したとの説がある。

  • ケネディの遺体の運送の空白

ダラスのパークランド病院でケネディ大統領の遺体を棺に納めた人物の証言によると、暗殺事件後のケネディの遺体はパークランド病院で検視を受けた後、シーツで包まれ飾り付きの棺に納められワシントンのベセスダ海軍病院へ直接運送されたとある。しかし、ベセスダ海軍病院に到着した棺には飾りが無く、ケネディの遺体はシーツではなく灰色の遺体袋に入れられていた。飛行機の中でケネディの遺体を別の棺と遺体袋に入れ替えたという記録は無く、また、ケネディの遺体の傷の記録がパークランド病院の物とベセスダ海軍病院の物とで食い違いがあることから、ケネディの遺体はダラスからワシントンに運ばれるまでに一度別の場所に運ばれ、遺体になんらかの処置を施した後、ベセスダ海軍病院まで運ばれたのではないかとの疑惑がある。

  • 教科書ビル6階に指紋を残した男

教科書ビル6階を捜査したときに、オズワルドやビルの従業員のものではない人間の指紋が検出されていた。その指紋はジョンソン大統領と親交のあった男のものと後に断定されている。

脚注

  1. メアリー・モーマン(Mary Moorman、ジーン・ヒル(Jean Hill)の隣に立っていた女性)が大統領のリムジンとグラシー・ノール付近を撮影した写真(モーマン写真)にはオズワルド以外の暗殺犯とその発砲の瞬間が写っているとする説。研究家ゲーリー・マック(Gary Mack)はモーマン写真を拡大するとバッジを付けた人物と、煙かマズルフラッシュ(発射炎)のような像が確認できることを発見した。この説は1988年に England's Central Independent Television が製作したドキュメンタリー『The Men Who Killed Kennedy』でも紹介された。
  2. ワーナー・ホーム・ビデオ発売のDVDを除くVHS・LD、20世紀フォックスホームエンタテイメント発売の「完声版」BD・DVD

外部リンク

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